All Chapters of 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜: Chapter 201 - Chapter 210

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第1部 一章【財前姉妹】その14 第十六話 準々決勝へ

200. 第十六話 準々決勝へ  ミサトは新人王を獲ったのもあり、その実力と美貌で既にファンが沢山いてミサトの後ろにはギャラリーが必ず大勢いた。 現代麻雀の行った人気投票でも実はミサトは8位という上位者だったのである。ちなみにマナミは14位でカオリは25位だ。やはりタイトルホルダーの人気はすごい。 なのでミサトファンはある事に気付いていた。それは、井川ミサトは今大会で放銃による失点をここまで全くしていない。ということ。(差し込みを除く) リーチ後すら振込みにならない。そもそもリーチをあまりしないし、したとしても絶好の手でリーチしてる場合が多いため、ほとんどアガリをものにしている。  本戦一回戦でカオリに敗れた小林賢も井川ミサトの美しさに惚れて、二回戦以降は会場係を手伝いながらミサトの麻雀を会場係の河村弘プロと一緒に見てた。河村も新人王戦決勝でミサトに敗れてからというものミサトの大ファンだった。 「しかし本当にこの子は新人なのかね。なんて守備力だよ。茨城の新人女流が強すぎるってのは聞いてたけど。『財前姉妹』と『護りのミサト』か。しかも全員美人」「センスも抜群にいいっすよね。浮き牌の交換をその都度面倒くさがらず緻密に行うし。ビタ止めも、したらおしまいじゃなくてそれを止めて作り直してテンパイさせて、それでもリーチしないという慎重さ!」「頑張って作り直して止め切ったら調子乗ってリーチしたくなるもんだけどな。ミサトちゃんは冷静だ。全然調子に乗らない」  「ツモ!」 ミサト手牌①④④⑦⑦2255東東南南 ① ドラ東 「2000.4000」  上家が①-④-⑦待ち。対面が2-5待ちの2軒リーチを受けつつ①単騎でツモアガるミサト。 「決まったな」「ええ、これで井川ミサト
last updateLast Updated : 2025-08-23
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第1部 一章【財前姉妹】その14 第十七話 口は災いの元

201. 第十七話 口は災いの元  準々決勝の左田純子は圧倒的だった。 (ジュンコさん絶好調じゃない。強すぎるなぁ。これが決勝じゃなくて良かった)《今は二着でも良いわけですからね。なんとかして猿山プロを捲りましょう》  左田純子はプロ歴は長いがほんの数年前までノンタイトルだった。それがこの数年間で雀聖位を含めた数々のタイトル戦で好成績を残し、仕事の方では編集長になり、更に自分の趣味を目一杯詰め込んだ新しい雑誌『月刊マージャン部』まで作るという夢も叶えて、今まさに左田純子の人生は絶好調だった。(積み重ねてきた努力がやっと形になって返ってきた)と左田は最近そう思うことが多いと感じていた。 この半荘は『純全帯么九(じゅんちゃん)』を東場に2回もアガってあっという間に場を制圧。 左田は三色が得意である他にも純チャンが好きという傾向もある正真正銘の手役派雀士だった。『純子の純チャン』が決まる時、左田の勝ちを防げる者は居なかった。ましてそれが2発ともなれば。 二着争いは大接戦の数千点差の攻防を繰り広げる財前カオリと猿山和寿。一応、現状二着は猿山だ。カオリとの点差は1100点。  左田はもう準決勝進出確定の持ち点を持っているのでアガりに来なくてもいい。二着争いを眺めているだけでいいのだ。だがしかし、またしても左田の手が倒された。 「ロン」 左田手牌一一一一二四四六七八九九九 ドラ九 「16000」 「メ…… メンチンドラ3……」  放銃したのは橘浩樹だ。ついに橘は持ち点がマイナスに突入。しかし、残酷なようだがこの大会にハコ割れ終了ルールはない。ルールのおかげでカオリはまだ二着逆転のチャンスが残った
last updateLast Updated : 2025-08-24
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第1部 一章【財前姉妹】その14 第十八話 準決勝進出

202. 第十八話 準決勝進出 「財前プロありがとうございました。優勝して下さいね。おれ、最後まで応援してますから」そう言い残して橘浩樹は去っていった。 《橘さん、最後見逃してくれてましたね》(うん、ちょっと複雑だけどおかげで準決勝進出だし。素直に喜ぼうと思う)《カオリは橘さんと話して少し親しくなったのに対して猿山プロは橘さんを少しバカにしてましたから。橘さんのこの選択は当然でしょうね》(一回戦の時は私が見逃したから。プロとして、それの借りを返すつもりもあったんだと思う。なんにせよ、助かったわ)  ◆◇◆◇  カオリが準決勝進出を決めてホッとしていた頃。井川ミサトも準決勝進出を決めていた。    「ロン!」 ミサト手牌伍七②③④⑤⑥⑦34566 六ロン  この局が天王山だった。  二着までになるにはなんとしても南場の親で稼ぐしかないミサトの親番。厳しい配牌を受け取るもツモが効いてなんとか役ありテンパイをした。が、待ちは悪いし打点もない。(ダマでとりあえず連荘狙いかな) そう考えていたが、対面のトップ目が牌を少しだけ横にしようとした。ほんの一瞬の小さな動きだが、それを見逃すミサトではない。(あの動きは張ってる! でも、ダマを選択したってことは私の親を流して確実に1人潰そうって魂胆ね。……そうはさせない!) 「リーチ!」  ミサトは嵌六萬待ちのままリーチを敢行。そうすることで何が起きるか? そう、追いかけリーチが入るのだ。 「リー
last updateLast Updated : 2025-08-25
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第1部 一章【財前姉妹】その15 第一話 最先端で最高峰

203. ここまでのあらすじ  師団名人戦に出場した麻雀少女たち。財前カオリと井川ミサトは見事に勝ち抜いて準決勝まで生き残っていた。 付喪神は大人になると消える。そんな話をマナミから聞いたカオリはなんとしても勝利してwomanに強くなった自分を見せてから二十歳になりたいと思っていた。カオリの切なる願いは叶うのか!?   【登場人物紹介】 財前香織ざいぜんかおり通称カオリ主人公。最近おしゃれに目覚めはじめた女子大生プロ雀士。所属リーグはC2。女流リーグはA所属。読書家で書くのも好き。クールな雰囲気とは裏腹に内面は熱く燃える。柔軟な思考を持ち不思議なことにも動じない器の大きな少女。神の力を宿す。日本プロ麻雀師団順位戦C3リーグ繰り上げ1位 財前真実ざいぜんまなみ通称マナミ主人公の義理の姉。麻雀部部長。攻撃主体の麻雀をする感覚派。ラーメンが大好き。妹と一緒に女子大生プロ雀士となる。神に見守られている。C2リーグ所属。女流リーグA所属。第36期新人王戦3位第5期女流Bリーグ優勝第30回雀聖位戦優勝 佐藤優さとうゆう通称ユウ兄の影響で麻雀にハマったお兄ちゃんっ子。誘導するような罠作りに長けている。麻雀教室の講師をしつつ大学に通う、アンたちの頼れるリーダー。第1回UUCコーヒー杯優勝第30回雀聖位戦準優勝 竹田杏奈たけだあんな通称アンテーブルゲーム研究部に所属していた香織の学校の後輩。佐藤優の相棒で、一緒に麻
last updateLast Updated : 2025-08-26
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第1部 一章【財前姉妹】その15 第二話 女王のライバル

204. 第二話 女王のライバル 「準決勝進出か。相変わらずね、白山プロ」そう白山シオリに話しかけたのは女流Aリーグの杜若アカネだった。今日は本部道場の店員兼事務作業員として白山シオリと杜若アカネが召喚されていた。たまにそういう仕事をしなければならない時もある(都内在住の新人などは特に呼ばれやすい)「三回戦シードもらってましたから。たいしたことないですよ」「その三回戦シード貰ってるって時点ですごいんだってば」「あ、そっか」「でもね、アンタでも今回の準決勝は簡単にいかないかもしんないわよ。アンタが次当たる『井川美沙都』って女はタダモンじゃないからね。それだけは忠告しといたげる」「へー…… でも、とりあえずは2位までになればいいんだし様子見ながら2| 着確保すりゃいいんでしょ」「アンタに様子見とかできんの? いつでも勝ちをもぎ取りたいもんだと思ってたけど」「あれ、バレてましたか。おっかしいなぁ、世間では冷静沈着。期待値計算の申し子。で通っていると思ってたけど」「先輩プロを馬鹿にするでないよ。私にはアンタそっくりな麻雀する弟子がいるんだよ。2人はライバルだと思ってたけどね」「成田プロか…… ふふ、あの人。いいよね熱くって。うん、好敵手か……」  シオリのその不敵な笑みにはどんな意味があるのかは分からなかった。たしかにノンタイトルの成田メグミと出れば出ただけ決勝に残りバンバン優勝するような白山シオリとでは格が違うが。それでも驚異となるだけの実力を持っている白山シオリ同世代女流と言えば成田メグミか白山と同期の水崎真琴プロだけだと思われた。 この白山シオリという女性はプロ試験では首位合格をして、そこからほぼずっと勝ち続けているような天才である。ちなみに、職場の給料アップと社員旅行(沖縄)に連れてってもらいたいという動機でプロになった変わり者。 なので混合リーグには最初の1期だけ参加して、それ以
last updateLast Updated : 2025-08-27
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第1部 一章【財前姉妹】その15 第三話 寝ても覚めても麻雀士

205. 第三話 寝ても覚めても麻雀士  ある日のカオリの雀ソウル中のこと。 カオリ手牌 切り番三四伍六七②③④⑤4467 8ツモ ドラ4  タンピンドラドラ3面待ち、絶好の勝負手が来た。東3局7巡目で西家26000点持ち。リーチで何も問題ないがカオリが少しだけ止まって考えた。《なにを考えてるんですか? ②切ってリーチしとけばいいだけの話のような……》(いや、ここはコレがいい気がする!) 『リーチ』 打⑤ 《⑤?》(woman、全員の捨て牌をよく見て何か感じない?)《いえ、なにも。私には普通のタンピン系狙いの基本的捨て牌にしか……》(そうよ! タンピン系狙いの基本的捨て牌なの)《それが⑤とどう関係する…… あっ!》(気付いた?)《②が現物の場合は端寄りの②やその後①などを勝負して愚形を払った上での反撃になる時があるけど⑤が現物となれば柔軟な⑤を手放してしまうと枚数的に強い形での反撃は難しくなるので現物とは言え捨てる時は反撃を諦める時になる。そしてこの場面は全員がタンピンの普通な捨て牌。⑤の価値が高い手を作っている可能性は高い。⑤を現物にすることにより『捨てて構わない現物』を作らせない方針にしたのですね》(ご名答、切れる現物を作らせない選択ってこと。ま、そううまくいくか分かんないけど。でも面白い選択じゃない? 今思いついたの)  カオリの選択はこの場面にピタリとハマり、親は①②⑤から⑤を切って保留としたがツモ④となりアタマをほぐして迂回。そのままノーテン。カオリが②を捨てていたら②①と落として③-⑥待ちで勝負していたはずだ。 北家は⑤を少し引っ張ったがまだ勝負手でもない所から②
last updateLast Updated : 2025-08-28
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第1部 一章【財前姉妹】その15 第四話 準決勝A卓

206. 第四話 準決勝A卓  今日は師団名人戦準決勝1日目。  季節はもう秋に突入していた。なので井川ミサトは堂々と(?)肌の露出の少ない服装をして行った。すると、白山プロはまだしっかり露出の多い服装で来ているではないか! ミサトは(これが、プロ麻雀界なのか……?)と思った。 「白山プロ、おはようございます。あの、寒くないんですかそんなに出して」「あー、私は暑がりなの。それに、私が露出したところでみんな興味ないでしょ、こんな絶壁女の胸元。あいてようと閉まってようと同じよ。アナタが井川さん?」「はい。井川美沙都です。はじめまして」「噂は聞いてるわ。天才だって。ふーん、スタイルも抜群ね~。しかもアスリートみたいに締まってる。井川さんは胸大きいから薄着だとジロジロ見られちゃうかもしんないけど、私はほら、この通りだから」  確かに白山プロはよく言えばスレンダー。悪く言えば絶壁だった。だが、それが知的な顔立ちに似合っているとも言えた。正直言って胸元を開けている服装は似合ってない。もっとビシッとボタンを閉めているような服の方が顔に似合うと思ったが余計なことなので言わなかった。すると。 「正直、似合ってないと思うんだけどねー。けど、テレビ対局だからね。ま、たまにはドレスっぽいのも着とくかーって。それだけよ。涼しくて気持ちいいし。でもね、私には似合わないのは分かってる」 「そんな事…… いや、そうですね」「ふふ、そうでしょ? もっと制服みたいなピシッとしたのが似合うってよく友達に言われるわ」「ワンピースとかも似合いそうです」  2人は時間になるまでしばらくおしゃべりした。「おはようございます」「おはよーっす」 開始10分前に豊田と新田もスタジオに到
last updateLast Updated : 2025-08-29
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第1部 一章【財前姉妹】その15 第伍話 ダブリーでも読めること

207. 第伍話 ダブリーでも読めること 「では私たちは放送席につきましょうか」「そうですね、小林プロ」 ──── 『さあ、準決勝A卓一回戦が始まりました。さっそく選手たちの配牌を見てみましょう!』(放送席からの声はスタジオの卓に着いてる選手たちには届かない)『おっ!? 成田さん、北家スタートの新田選手を見てください!』 新田手牌二二三三④④⑥77東東南西 ドラ西 『配牌イーシャンテン!』『さあ、第一ツモでテンパイするか!?』  ググッと心なしか力強くツモりに行く新田。そして引いたのは―― ツモ西 『ドラ引いて張ったーーーー!!』『いえ、でもこれ難しいですよ』『えっ?』 見てみると親が第1打で南を捨てていた。そしてドラ表示牌も南。つまり南はすでに残り1枚しかない。『地獄の南か⑥筒か。ダブリーなのかダマなのか』 「……リーチ」 打南  新田は悩んだ末に⑥筒単騎のダブリーとした。それを鋭く読んだのが女王位の白山シオリだった。  (この男、手つきや雰囲気からして素人ではない。それが長考してダブリー……。アマチュア予選から準決勝まで残ったんだからテンパイに気付くのが遅れましたとかいうレベルの打ち手ではないだろうし、ダブリーなんだからダマにするかとかで悩んだってケースもあまりない。そうなると『待ち』の選択で悩んだと考えていいだろう。そして打南。2枚切れてる南にするかどうかで悩んだんだから単騎だ。ノベタンなら地獄待
last updateLast Updated : 2025-08-30
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第1部 一章【財前姉妹】その15 第六話 手牌占い

208. 第六話 手牌占い  一回戦でシオリに突き抜けられたのでこれをどうするかミサトは考えていた。(総合二着までになれば通過するわけだけど、どんな作戦で行こうかしら…… とりあえず現状私は二着ではある。攻めるしかない三着四着を叩くか? いや、二着目に放銃ならよしとするトップ目を狙う手もあるな。まあ、なんにせよ。弱気じゃダメだ。白山詩織を捲るつもりで行こう)   シオリはゲーム回しに長けている展開勝ちするタイプの打ち手である。展開コントロールを得意とする打ち手にとって総合二着までが勝ち抜きの二回戦方式ゲームで一回戦にリードしているなんてのは完全なる勝ちパターン。それはミサトも理解していたし豊田プロも女王シオリを研究していないはずはなく、豊田はどうやって二着に選んでもらおうかと考えていた。シオリは一回戦でダントツになったし、捲る必要のないゲームならそこは二着でいいはずだ。 しかし、だからこそこのゲームでミサトはトップ通過を目指した。その読み違いがシオリの足元を掬って強烈な右ストレートが一発決まるのではないかと考えた、イメージとしてはそういう作戦だ。  そして、もう1人トップ通過を目指した奴がいた。 新田忍だ。 なんでとか、1位通過狙いは無意味とか、どうでもいい。新田はただ勝ちたかった。歴史あるこの師団名人戦の準決勝に来たこと。それが新田の魂を燃え上がらせていた。まして一回戦はラスだ。もうどうせトップを取るしかない。どうせなら強烈なトップで1位通過してやる。そのくらいの気概でいた。細かいことは考えない。勝つ! ただそれだけ。  この2人のトップ狙いが計算女王と言われる白山シオリの読みを大きく狂わせることになるのだった。そう、勝負とは相手の注文に乗らないのが一番の必勝法。その事をシオリはこのゲームで学ぶことになる。  準決勝A卓二回戦、間もなく開始。 ────
last updateLast Updated : 2025-08-31
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第1部 一章【財前姉妹】その15 第七話 新田の実力

209. 第七話 新田の実力  新田は自分の実力を分かっていた。そんなには強くないと。普通の人より少しは勝てるがプロフェッショナルの連中には勝てない。そんな事は知っていた。今だって、若手の注目株な豊田プロや女王シオリ。そして新人王ミサト。どちらを見ても真のプロ選手であり自分にとって格上の打ち手であることは分かってた。 (このような舞台に立てる機会はきっとこの先、生涯無い。おれの実力じゃあ準決勝に居るだけでも僥倖なんだ。もうこうなったら勝ち負けじゃない。たった一筋でいいからコイツらに生涯記憶に残るような深い爪痕を。新田忍という雀士の底力を…… 一撃だけでも、見せつけたい……!) 新田の願いは届いて次局、親番の新田に手が入る。タンヤオドラ3を3巡目にメンゼンテンパイ。 (落ち着けー。まず落ち着けー。今なら直撃で取れる可能性まであるんだ。リーチはやめとこう)  そっと牌を縦に置く新田。  すると。思惑通りシオリから直取りが決まる。 「ロン。12000」「はい(まだ4巡目よ!?)」  次局はミサトが2000.4000は2100.4100をツモり、激しい戦いとなる。 「ロン!」「ロン!」「ツモ」「ツモ」「ツモ!」「ロン」 ──────  荒れに荒れた準決勝二回戦オーラス。ついに白山シオリは総合点数微差トップまで落とされていた。何か失点すれば二着落ち、新田には満貫放銃で三着落ちとなる所まで落ちてきてしまった。(何でこうなったんだろう。私はしっかりと守っていたはずなのに……)シオリは頭が痛くなって
last updateLast Updated : 2025-09-01
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