All Chapters of 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜: Chapter 211 - Chapter 220

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第1部 一章【財前姉妹】その15 第八話 準決勝A卓決着!

210. 第八話 準決勝A卓決着! (や、や、やられた! やらかしたーー! トイトイ三暗刻!? ここに来てツモスーってあんた。伍萬切っとけば良かったかー。三色なくてもトップだもんね。……まあ、伍萬の方が安全なんてそんな根拠は場にひとっつも書いてないから無理なんだけどさ…… そもそもオーラスはアガリやめなしだから打点はあった方がいいし……)そう思うとシオリはある人の書いたブログ記事を思い出していた。  ◆◇◆◇ “麻雀にはすべき選択をしても負ける時があります。それでもいい。ミスして負けたのでなければ。私は勝利よりも正しい麻雀を追求していきたい。正しい選択正しい攻め正しい鳴き正しいオリ 正しいオリによるオリ打ちなら、それすら美しい行為に私は思う ライジン” ◆◇◆◇ (ライジンさん。私、間違ってないよね。私は正しいよね。私の麻雀は…… 美しかったでしょう?)  シオリは『ライジン』というブロガーの記事をいつも参考にしていた。いつのまにかシオリにとってライジンは心の師匠のような存在になっていたのだ。これに勝ったら決勝進出をダイレクトメールで報告したいと思っていたが、今負けた。(だが、美しく打てたんですよと。そう報告しよう――) シオリはカメラの前だったので悔し涙を堪えてなんとか微笑む。うまく笑えてない気がする。表情も作れないくらいショックだった。すると―― 「待ってください」  そう言ったのは豊田だった。「みなさん忘れてませんか
last updateLast Updated : 2025-09-02
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第1部 一章【財前姉妹】その15 第九話 カオリたちの青春

211. 第九話 カオリたちの青春 「「かんぱーい!!」」  カオリたち麻雀部はミサトの決勝戦進出を『グリーン』で祝っていた。今日は特別にいつもは頼まないコーヒーフロートだ。「やー、やっぱりフロートはソフトクリームよりバニラアイスに限るわ。このアイスと氷が接触してる部分にシャーベットが出来上がって、それがコーヒーとすごく合うのよ。わかる?」「あー分かる! そこ美味しいよね!」  タイトルホルダーだろうがプロ雀士だろうが女の子はアイスが好きなのだ。 ワイワイワイワイ  あーだこーだ騒がしいカオリたちだが今日はもうお客さんがカオリたちしか居なかったので容赦なく騒いだ。こんな時間がカオリたちの青春だった。楽しい。心から好きだと思える仲間たちと今のこと、未来のこと、思い出話。好きなことを好きなだけ話す時間。  こんな風にwomanともずっと話していられるものだと思っていたのに。 (大人になんてなりたくないな……)《なにを言ってるんですか。そんなの無理ですよ。生きている以上必ず大人にはなります》(そうだね。分かってるよ)《カオリ、幸せな大人になりなさい》 「カオリー。私、明日早いからもう帰るよー」「あっ、待ってよマナミ~。一緒に帰ろうよー」「あんた達姉妹は本当仲良しね。よし、私もそろそろ帰ろう」そう言ってミサトも精算を済ませた。「みんなもあまり遅くならないようにね。じゃお先に」「バイバーイ」「さよーならぁ」 ──────  駅までの帰り道、カオリたちはさっきの話の続きをしていた。 
last updateLast Updated : 2025-09-03
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第1部 一章【財前姉妹】その15 第十話 準決勝B卓開始!

212. 第十話 準決勝B卓開始!  今日は師団名人戦準決勝B卓開催日だ。 出場選手 財前香織プロ左田純子プロ久本一夫アマ薬袋光太郎(みないこうたろう)アマ  アマチュア枠から出ていた雀荘『富士』の元従業員である久本カズオがなんと準決勝まで残っていた。あの、勝てないのを理由に退店したカズオがである。 『小林プロの予想を聞いてもいいですか?』『え、そうですねー。……分かりません!』『そんな!』『いや、だって分かんないですよ。財前プロはまだ新人ですけど技術は充分にあります。左田プロはいま勢いがある人の1人。久本一夫さんはアマチュアの試練を勝ち抜いている猛者ですし、薬袋さんは芸人とは思えない緻密な麻雀の打ち手、こちらも芸能人枠で優勝してきた実力は本物です。どっち見ても強者で全員勝ちそうですよ』『まー確かに分からないですよね。実績ある大会決勝の常連プロたちが今回は全員準々決勝あたりで敗退しましたからね。本命の河野プロも34期師団名人の古川プロも準々決勝敗退してますし』『まあ、一番怖いのは結局、左田プロじゃないですかね昨年雀聖位についてからの勢いは凄いです。リーグ戦も好成績を叩いて昇級しましたからね』『じゃあ私は財前プロに1票』『ありえますね。彼女は強いです。っと、そろそろ時間になりますね。選手たちは揃っています』『それでは! 時間になりましたので対局開始して下さい』 「「よろしくお願いします!!」」   ゲームを開始するやいなや東1局からカオリに勝負手が来た。 南家カオリ手牌 5巡目一一二二二八八八11589 9ツモ ドラ②
last updateLast Updated : 2025-09-04
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第1部 一章【財前姉妹】その15 第十一話 威嚇ポン

213. 第十一話 威嚇ポン (んもう! やっかいな体質ね。冷静な私にしか使いこなせないわよこんなの)《……いま使いこなせてなかったですけど》(大会準決勝の役満テンパイで冷静になれは私でも無理でした)《フフッ! いや、笑い事ではないですね。申し訳ない。私のせいで》(そんな、気にしないで。こんなのは笑ってくれればいいの。それにまだ始まったばかり! 私なら大丈夫だから)《そうですね、がんばって!》   しかし、その後カオリにチャンスはしばらく訪れず、苦しい展開のまま耐えているのが精一杯だった。役満テンパイという大チャンスを逃しただけあり、そう簡単に回復の機会は来てくれない。 (くそぅ。このままじゃジリ貧だ。かと言ってアガる術はない。せめて、足を引っ張るような威嚇くらいしなければ…… 二回戦目で2位争いには参戦できるように) 「ポン!」打9 『おっと! 財前香織この形から上家が切ったドラを叩きました!』 カオリ手牌 ドラ⑧二四六②③⑥1188(⑧⑧⑧) 『どうするつもりなんでしょう? いくら頑張っても最速でタンヤオのサンシャンテンですが』『これは…… 威嚇ですね。足止めです。誰にもアガらせないぞと言うことでしょう。ドラ対子の手をアガリが遠いことから足止めとして利用するとは…… たいした娘だ』『上家の薬袋選手は緻密な打ち手ですからドラポンされては無視できないでしょう。1番整った手格好でしたが――』 薬袋手牌三三四伍①①③④45788 白ツモ 『白を引いてしまいまし
last updateLast Updated : 2025-09-05
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第1部 一章【財前姉妹】その15 第十二話 奇跡の一局

214. 第十二話 奇跡の一局 『さあ、財前香織の機転によって展開が変わりました』『ドラポンしたあとチーしないことによりトイトイ含みのハネマン級までイメージさせて結果全員がその威嚇にやられてノーテンになりましたね』『私ならそもそもあれ鳴けません。メンゼンでなんとか形になってくれないかなぁと思ってる段階ですね。楽観的でしょうか?』『いや、普通そんなもんでしょう。彼女のあの鳴きは見切りが凄いなと思いますよ。私もきっと鳴けません』  しかし、カオリはその後もアガれない。テンパイノーテンテンパイノーテンでじわじわと久本との点差はつめていたがテンパイ料の大切さをよく知る競技麻雀が趣味の薬袋とは点差をつけられたままだった。 そしてオーラス。3巡目―― 「ロン」 「へっ?」  その突然のロン発声をしたのはジュンコだった。放銃者は―― 久本カズオ。 ノーテン罰符でカオリと7600点差までつめられていた三着目のカズオの放銃だ。さあ、ジュンコのアガリは何点だ? 左田手牌二二三三四四六六八八255 2ロン ドラ六 「8000」「マジ?」 『タンヤオチートイドラドラ! たった3巡目にしてダマ満貫!』『不幸としか言いようがありませんね。満貫炸裂ということは……!』『これで財前香織は三着に浮上しました!』 一回戦終了  一時はどうなるかと思ったカオリだがこれで二回戦に薬袋を倒せば決勝戦だ。難しい条件ではない。(良かった…… オーラスでラッキー三着になれたから二回戦の条件が軽くなった。ジュンコさんに感謝だなぁ)
last updateLast Updated : 2025-09-06
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第1部 一章【財前姉妹】その15 第十三話 準決勝B卓決着!

215. 第十三話 準決勝B卓決着! 『ところで左田純子プロはファンの人気投票でシード獲得をしたという今大人気の女性プロ雀士ですが、さすがというかなんというか、佇まいひとつとっても美しいですね。私も模範としたいと思います。小林プロは人気投票誰に入れましたか? 師団の団員は投票が義務でしたもんね』『え? 私の投票なんて誰でもいいじゃないですか』『なんだ~? 内緒にしたって意味ないでしょう。誰に3ポイント入れたんです? あっ、わかった。井川ミサトでしょう? 美しいから。違う?』『違います』『じゃあ誰なの? 財前真実ちゃんかな? かわいいもんね』『違う』『じゃあ――』『成田』『……へっ?』『成田プロに3ポイント入れた』『あっ、アタシぃ?? ななななななんで私に?!』 まさかの答えに不意を突かれメグミは耳まで真っ赤になってうろたえた。『勘違いするな。オレは成田の麻雀が好きなんだ。勇敢な、オレにはできないトップの取りかたをする』『そ、そそそその方が余計に照れるよおおぉ!』『……だぁから言いたくなかったんだよ。たく、しつこいんだよ』『うぅ…… ゴメンなさい』  放送席の2人がイチャイチャしてる間にカオリにテンパイが入る。 『あっ、財前。テンパイしました! しばらくテンパイしないだろうと思っていた配牌をノーミスで七対子テンパイにしました財前香織!』 「リーチ」 親番4巡目カオリ手牌一一二二四四②③③⑤⑤白白 ドラ② 『ドラ単騎で強行しました!』『親ですからね、プレッシャーをかける意味で先制リーチはした方が
last updateLast Updated : 2025-09-07
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第1部 一章【財前姉妹】その15 第十四話 女神の天秤

216. 第十四話 女神の天秤 「カオリちゃん! 決勝戦進出おめでとう!」  出勤したらお客さんみんなにそう言われた。師団名人戦は準決勝から映像対局をライブで観ることができるので麻雀ファンはみんな先日行われたカオリの対局を観ていたのだ。「あの4人テンパイしてた局、凄かったねー。カオリちゃんがいつか②降り打ちしちゃうんじゃないかとハラハラしながら見たけど全部押したね」「あー、たまたま危険度高い牌引かなかったから。大切な最後の親番でしたし。……みなさんが応援してくださったから祈りが通じたのかな?」「祈って勝てるならいくらでも祈るから。だからきっと優勝してきてよ」 「もちろん、そのつもりです!」「かーーーっこイイー!!」 《カオリは本当にステキですね》(でへへへへ。照れるなあ)  その日、カオリは仕事中に鬼神の如く勝ちまくった。ただでさえ実力があるのに有名な大会の決勝に残ったことからお客さんも本格的に一目置いたしカオリも珍しく自信に満ちていた。 「ツモ!」 カオリ手牌一二三四六七八九23334 伍ツモ 「でたぁー! カオリちゃん得意の伍萬一発ツモ」と小宮山が言った。 《ギクッ!》(ギクギクッ! バレてるとは思いもしなかったな~。すごい記憶力)《小宮山さんは『ひよこ』の常連客の中でもトップクラスに強いですからね。記憶力もすごいんですね》 「えっ、そんな特技ありませんよォ」ととりあえず言ってみたものの、けっこうびっくりしてしまったので顔には出ていたかもしれない。自分では分からない。 「いやー、伍萬をツモってアガるイメージが
last updateLast Updated : 2025-09-08
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第1部 一章【財前姉妹】その15 第十伍話 竹田杏奈の初タイトル

217. 第十伍話 竹田杏奈の初タイトル  師団名人戦の決勝の前にタイトル戦がもう一つあった。 第2回UUCコーヒー杯。そう、第1回を佐藤ユウが獲ったタイトル戦である。こちらのタイトル戦はまだ知名度が低くて参加者も他のG1タイトルに比べると比較的少ないため一日で終わるタイトル戦ではあるが前回同様実力派のプロが何人も参加しており決勝に残るのは至難の業である。    だが、決勝には今度はアンが残っていた。麻雀部で参加可能な年齢の者は全員参加したがアン以外は全滅。決勝卓行きなど到底無理な成績だった。それはそうだ。麻雀というのはそもそもがそう簡単に毎回勝てるゲームではない。そしてアンも決勝戦では1人沈みの状態だった。そんな南3局親番。 親番アン手牌二四⑦⑦⑦33345556 ドラ4  8巡目にこのテンパイをした。まだ高打点の手へと変化することを期待してダマにしておきたいが…… 2巡後 ツモ三 (とりあえず2600オールか)と見ていた全員が思った。だが! 「リーチ!!」 打6 (なっ!?) 「ツモ!(一発)」 アン手牌二三四⑦⑦⑦3334555 4ツモ 裏ドラは⑦ 「12000オール」 「……トッ……トリプル」  あっという間のことだった。1人沈みだった所から全員追い抜いて一撃トップ。それも、一度アガっている手を10巡目に2600
last updateLast Updated : 2025-09-09
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第1部 一章【財前姉妹】その16 第一話 伝説の決勝卓

218. ここまでのあらすじ  師団名人戦はついに決勝戦。カオリはその実力を発揮して決勝卓に残る。 そして決勝は親友でライバルな井川ミサト。麻雀部を支援してくれた左田ジュンコ。今最も強い女流雀士と言われる白山シオリ。この3名の女流雀士がカオリの前に立ちはだかる最後の敵となった。歴史上初の女流雀士だけの決勝卓。カオリはこの本物の打ち手たち相手に果たしてどこまでやれるのか?! いま、女流雀士の時代が到来した。  【登場人物紹介】 財前香織ざいぜんかおり通称カオリ主人公。最近おしゃれに目覚めはじめた女子大生プロ雀士。所属リーグはC2。女流リーグはA所属。読書家で書くのも好き。クールな雰囲気とは裏腹に内面は熱く燃える。柔軟な思考を持ち不思議なことにも動じない器の大きな少女。その指には神の力を宿す。日本プロ麻雀師団順位戦C3リーグ繰り上げ1位 財前真実ざいぜんまなみ通称マナミ主人公の義理の姉。麻雀部部長。攻撃主体の麻雀をする感覚派。ラーメンが大好き。妹と一緒に女子大生プロ雀士となる。神に見守られている。C2リーグ所属。女流リーグA。第36期新人王戦3位第5期女流Bリーグ優勝第30回雀聖位戦優勝 佐藤優さとうゆう通称ユウ兄の影響で麻雀にハマったお兄ちゃんっ子。誘導するような罠作りに長けている。麻雀教室の講師をしつつ大学に通う、アンたちの頼れるリーダー。第1回UUCコーヒー杯優勝第30回雀聖位戦準優勝 竹田杏奈たけだあんな通称アン
last updateLast Updated : 2025-09-10
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第1部 一章【財前姉妹】その16 第二話 理牌トラップ

219. 第二話 理牌トラップ 『さあ始まりました決勝一回戦東1局。まずは親番の左田ジュンコがイッツーの見えるまずまずの好配牌だ』 東1局 親番左田手牌一二三四四六七九②⑥39中中 ドラ③ 打9  スパッと第1打を済ませたらカチャカチャッと理牌をする左田。萬子が多いので上下を整えるのにも少し手間がかかるが映像対局なのでそこは気をつかってキチンと整える。  するとそれを北家の白山シオリが鋭く観察していた。 (ふうん、ジュンコさんは多分萬子が多いのね)  それを見たシオリも牌の上下を整える動作をした。こちらも上下を整える動作が多い。すると…… 「チー」 二三のターツを晒して四をチー。 打1 白山手牌四⑥⑥⑧245688(二三四チー) 『な…… 何をやっているのでしょうか白山シオリは。いやタンヤオなのは分かりますけど、そこまでする意図がわかりません、すみませんこれ、私には説明できません』『なんだろう…… 見ているのに分からないなんて事あるのか…… いや! そうか! 分かったぞ。白山プロは左田プロの理牌を見て萬子が多いと予想し、自分の手にも萬子が多いぞとウソの情報を親に流したんだ! これは、こっちも同じ色を厚く持ってるから染めは出来ないぞという偽りのメッセージなわけですよ』『あ、だからさっきあんなにクルクルしてたんだ。2456の索子まで上下クルクルしてるからおかしいなと思った。普通そのあたりの牌は上下気
last updateLast Updated : 2025-09-11
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