時は流れ。 暦は3月に変わっていた。 大地の様子は特に変わらず、一日のほとんどをベッドで過ごしていた。 そんな大地に海は寄り添い、笑顔を向けていた。 大地の頬にキスし、「今日も生きてくれてありがとう」そう囁いた。 * * * 大地はぼんやり天井を見つめ、物思いにふけることが多くなっていた。 思索している、という訳ではない。 その時その時、浮かんだことを巡らせていた。 薬が減ったおかげで、少しずつ思考回路が戻っていく気がしていた。 まだ本調子には程遠い。しかし確実に、今の状況を俯瞰出来るようになっていた。 そして気付いた。 今の自分にとって、なくてはならないもの。 海の笑顔。 それが嘘くさいということに。 自分を殺し、無理矢理作った虚飾。 どうしてこいつ、こんな顔をするんだ? 怒りたければ怒ればいい。泣きたければ泣けばいい。 不満があるなら言えばいいのに。 ずっと笑顔のままだった。 そしてある日。 大地は聞いてしまった。 いつもの彼ならば、絶対口にしない筈なのに。 思考が散漫な今、何も考えずに聞いてしまった。 * * *「どうしてそんな作り笑い、海はしてるんだ?」 その言葉を投げかけられて。 隣で雑誌を読んでいた海の顔が強張った。「……海?」 海の様子に困惑し、大地がそうつぶやく。 海は雑誌を閉じ、肩を震わせた。「海……どうかしたか……」 大地が肩に手をやる。その手を荒々しく払い、海は大地を睨みつけた。「え……」 海の目に、涙が溢れていた。 そして震える唇を噛み、大
Terakhir Diperbarui : 2025-05-28 Baca selengkapnya