クリスマスが過ぎ、街は一気に年末の空気に変わっていった。 客の入りもかなり減り、大地たちはこれ幸いと、とまりぎの大掃除に勤しんでいた。 ここは来年の秋を目途に、浩正〈ひろまさ〉と青空〈そら〉が夢見ていた有料老人ホームへと姿を変える。かなりの改装が必要だが、それまで客が気持ちよく利用出来るよう、大地も例年以上に気持ちを込めて動いていた。 そして何より、年が明けるとここで、青空〈そら〉と浩正が結婚式を挙げる。 招待状も既に配り終えていた。常連客は勿論、ここを利用している老人ホームの利用者たちにも配っていた。 * * * しかしそんな中、辛い出来事があった。 クリスマス当日。いつものように利用者たちを迎えた大地たちだったが、そこに中山の姿がなかったのだ。「あれ? すいません、中山さんは」 海の問いに、スタッフが目を伏せた。「中山さんは……二日前に逝去されました」「え……」 海が目を見開く。「嘘、なんで……中山さん、また来るって言ってたのに……この前会った時、あんなに元気だったのに……」 呆然とする海を大地が支える。「大丈夫か」「なんで、どうして……中山さん、あんなに楽しそうに笑ってたのに……突然すぎるじゃない……」「そうだな、そう思う。だけどな、海。これが現実なんだ。別れはいつも突然なんだ」「酷い、酷いよ……中山さん、きっともっと生きていたいって思ってた……それなのに、こんな急に旅立って……早く死にたいって思ってた私が生きてるのに、どうして中山さんが……」「そうだな。でも中山さんにとって海と出会えたこ
Last Updated : 2025-05-08 Read more