日に日に衰弱していく大地を見かねて。 浩正〈ひろまさ〉に相談し、家に医者を呼ぶことにした。「かなり衰弱してますね。食事は摂れてますか」「いえ……口にする時もあるんですが、すぐに吐いてしまって……」「とりあえず点滴をしておきましょう。しばらくそれで様子をみます」 そう言われ、それから数日、点滴の処置が施された。 その効果あってか、顔色も少しよくなってきたように思った。 トイレにも自力で行けるようになっていた。 そんな大地の様子に安堵し、元に戻る日は近いのかも、そんな希望を抱くようになっていった。「元気、戻ってきたみたいね」 相変わらず、話しかけても返事はない。ただ最近、笑みを浮かべうなずくようになった。それが嬉しくてたまらなかった。 まだ道のりは遠い。でも確実に、大地は快方に向かっている。 そう思い、嬉しそうに浩正に報告するのだった。 しかし浩正は話を聞きながら、複雑な表情を浮かべていた。 海はそれに気付かなかった。 * * * ある日の昼下がり。 買い物から戻った海が立ちすくみ、荷物を床に落とした。 大地の姿がどこにもなかった。 ジャケット、そして靴も見当たらない。 散歩にでも行ったんだろうか。そんな甘い考えは浮かんでこなかった。 浮かんだのはひとつ。最悪の事態だ。 そう確信した海は、迷わずとまりぎに向かった。「浩正さん!」 海の様子に浩正が事態を察し、息を吐く。「大地が、大地がどこにもいなくて」「海さん、少し落ち着きましょう」「でも、でも!」「心当たりがいくつかあります。分担して探しましょう」 幸い客はいなかった。浩正は店を閉め、一枚のメモを海に渡した。「大地くんが行きそうな場所、リストアップしておきました。僕はこちらに向かい
Last Updated : 2025-05-18 Read more