どうやって話を聞き出そうかと考えていると、母さんがニコニコしながら教えてくれた。「夏休み入ってからね、たまたま買い物帰りに圭次郎くんとばったり会ってさ、なんと重そうだからって持ってくれたのよ! イケメンなのに優しいって、サイコーでしょ!」お、おう……いつの間にそんなことが起きてたとは。ケイロも相手によっては猫被れたのかーって驚きよりも、母さんのハイテンションっぷりのほうに圧倒されてしまう。たまたまばったり?ただの親切心でケイロが手伝うなんて考えられない。何か狙いがあるはず――。ケイロの意図を読もうとする俺だったけれど、「しかも仕事お疲れ様って労ってくれるし、夕食の準備も手伝ってくれてさ、もう母さん幸せ過ぎて心の栄養満タンよー! イケメン成分で夏バテ知らずのお肌ピッチピチよー!」ちょっ、落ち着いて母さん! ケイロがイケメンなのは認めるけど、コイツ本当は超俺様天上天下唯我独尊王子だから! 騙されるなよ……っ。母さんがイケメン好きなのは知ってたけど、こんなにテンションがおかしくなるとは思わなかった。あまりのはっちゃけぶりにケイロも呆れ返っているだろうと思ったら、案外と悪い気はしていないようで、なぜか俺に勝ち誇った笑みを浮かべていた。お前……母さんの反応に喜ぶなよ。褒め称えられて嬉しいなんて、まだまだガキだな。大きな溜め息をつきながら、俺は冷蔵庫に近づいた。「はいはい、タダで健康と若返りの術を手に入れて良かったなー」「棒読みはやめてよ。心が籠もってないじゃない」「ごめんな百谷。こんな落ち着きのない大人の面倒見てもらって……」母さんの文句を軽くスルーしつつ肩をすくめる俺に、ケイロはフッと得意げに口端を引き上げた。「気にするな。目上の女性を敬うことは当然だ。それに俺にも利があるからな」「利? 何があるんだよ?」「料理を分けてもらえる……アイツら……いや、兄たちの料理は食べられるだけで、美味しいとは言い難い」ほんの一瞬、ケイロが遠い目をする。なるほどなー。アシュナムさんもソーヤさんも、家事をし慣れていなさそうだもんな。こっちとあっちで調味料も食材も、調理法も違うだろうし。でもそれだけじゃないだろ?俺が目を合わせて視線だけで尋ねると、ケイロは短く頷いた。「それに長期の休みだというのに学校へ行かざるを得ない大智を、労ってやれるからな。
Last Updated : 2025-05-23 Read more