舞野先生は俺が学校に入学した頃から、既に司書室にいた。前からこっちの世界の人であることは間違いない。しかし今の舞野先生はマイラットが中にいるせいで、世界からちょっとズレてしまったらしい。だって初夏なのに茶色のロングコート着てるから。 暑くないのか……? 汗まったくかいてないし、涼しげな顔してるし、どうなってるんだ?口に出してツッコミを入れたかったけれど、マイラットの真面目な空気に気圧され、俺は唇を固く結んでこの衝動をやり過ごす。ふと、硬かったマイラットの顔が安堵に緩んだ。「君から接触を望んでくれて非常にありがたい。私の主がぜひ会いたいと望んでいたんだ」「主……?」「今ここにいらっしゃる。少し待って欲しい」言うなりマイラットはコートのポケットから何かを取り出す。 乳白色に赤い糸の縫い目――俺にとってものすごく見慣れたものだった。「や、野球のボール!?」「この中に隠れて頂いていたんだよ。この世界のものは、私の世界の力を受けにくいからね」ボールを上下に掴んでマイラットが捻れば、真っ二つに割れる。 次の瞬間、把握し切れない数の色のきらめきが現れて、思わず俺と悠は目を腕で庇っていた。目を細めてどうにかその正体を確かめると、ピンポン玉ほどの丸い石が延々と輝きを放っていた。「うわっ、まぶし……っ……宝、石か?」『会いたかったぞ、坂宮太智……我は百彩の輝石と呼ばれるもの。遥か昔に精霊王様の力を受け、数多の精霊を濃縮して作られたのだ』「石がしゃべった!」 『我は石の形をしておるだけで実は生きておる。ほら、手を出してみろ』言われるままに手を差し出せば、マイラットが百彩の輝石を載せてきた。「うわっ、なんか温かいし脈打ってる! なんだこれ!? 悠、触ってみろよ」「え……う、うん……ホントだ、不思議……」ものすごく困惑しながら悠が輝石を指でつつきながら、チラチラとマイラットをうかがう。 なんでそんなに戸惑ってんだ? と心の中で首を傾
Last Updated : 2025-05-03 Read more