王様、目の鋭さはケイロに似ているけど眼差しが柔らかで、それでいて顔つきは威厳に溢れて凛々しい。短い銀髪に、きれいに生え揃えた顎髭。背や体格は俺と大差ないのに、なんだか大きく見える。ふと王様が俺に目を合わせてくる。困惑しているのが伝わったのか、目尻が緩んで緊張が和らいだ気がした。「さて……ケイロよ。本来は時間をかけて彼を精査する予定であったが、状況が状況だ。お前は面倒がって今まで避けていたが、しばらく会議に参加してもらう」「……父上。何を言っても分かろうとしない人間と言葉を重ねても、時間の無駄です」ひしひしとケイロから不満の気配が漂ってくる。横目で見やると、心底嫌そうに顔をしかめ、本音が声からも表情からもダダ漏れ状態だ。ケイロはこっちの世界では不満を溜め込んでいたし、城の人たちは厄介で面倒でしかないのだろう。親とはいえ王様に向かったこんなこと言ったら、普通は大激怒されると思う。でも王様は落ち着いた声でケイロを諭す。「言葉を重ねてもいないのに、なぜ無駄と決めつける? お前の悪い癖だ。前例のないことを通すのであれば、根気強く向き合うことだ」「……分かりました」おおっ、ケイロが折れた!そして周りがザワッてなった。それだけ折れるケイロって珍しいんだな……。ちょっとはケイロも成長したってことなんだろうなーと思っていたら、「でしたら、大智を正妃に迎えることを認めてもらうまで言葉をぶつけ続けましょう」あー……これは成長じゃなくて、軽くブチ切れ気味で苛立ち全部ぶつけて後悔させてやろうって魂胆だ。それに、絶対俺を認めさせたいっていう本気さも伝わってくる。俺は当事者だけれど、認めてもらえていないからまだ部外者で、この件で何か手伝えることはない。今できることと言えば――。「ケイロ、大人気なくケンカするなよ。無闇に敵作っても苦しいだけだから……みんな俺のことを知らないんだし、腹立てずにちょっとずつ前に進んでいこう。俺が必要なら、できる限りなんでもやるし。な?」俺はケイロの背中をポンポンと叩きながら宥めてやる。野球でピッチャーの投球が乱れていたら、タイム取ってキャッチャーがこうしてフォローするものだ。女房役はちゃんと手綱を握らないとな。……あれ? ケイロが真顔で俺を見つめてきたぞ?凝視され過ぎて、ちょっと怖いんだけど。やけに目がギラついてるし……
Last Updated : 2025-07-05 Read more