しかし、これまで深雪はこのような場に出席したことがなかったため、誰一人として彼女のことを知っている者はいなかった。深雪はむしろ堂々としたもので、名前を書いた後はその場にいる顔なじみに向かって挨拶を始めた。「直美さん、秀子さん、私、深雪ですよ」深雪はにこやかに歩み寄り、直美に軽く微笑んだ。「この前、お誕生日のとき、私がスイーツを手作りしたんですよ。どうでしたか?」もちろん直美は彼女を覚えていた。ただ、目の前のこの輝くような女性が深雪だとは本当に気づかなかったのだ。三か月前、直美の誕生日会で、深雪は喜び勇んで出席したものの、丸一日厨房に押し込められ、スイーツを作らされ食事の席につくことすら許されなかった。その間芽衣はまるで花のように静雄の傍らに寄り添い、注目を一身に集めていた。宴が終わってからようやく直美は知ったのだ。厨房にいたのが松原家の奥様で、静雄の隣にいたのは愛人だった。この件について、直美はずっと申し訳なく思っていた。ただ、なかなか埋め合わせの機会がなかったのだが、今日は絶好の機会だった。彼女はすぐに深雪の手を取って、笑顔で言った。「松原家の奥様だったね。知らないはずないじゃない。さあさあ、皆さんに紹介するわ。この方は松原商事社長の奥様、深雪さんよ。皆さん、よろしくね」直美は深雪の手を取り、まるで実の姉妹のように親しげだった。深雪は事前に調べており、今回の宴会が直美の主催であることを知っていた。だからこそ、彼女の助けがあれば、自分が気まずい立場に追い込まれることはないと確信していた。「ところで、ご主人は?」直美がそう言って深雪の背後を覗くと、次の瞬間その笑顔がぴたりと固まった。まさか、このような場で静雄が空気を読まずに愛人を連れてくるとは思ってもみなかったのだ。直美は名門の娘であり、静雄を恐れる必要はない。今日の宴会は彼女が精魂込めて準備したものであり、そんな場に汚れた存在を入れるわけにはいかなかった。彼女は深雪の手を引き、大股で静雄のもとへ行き、眉をひそめて問い詰めた。「松原さん、これはどういうこと?こんな正式な場に、愛人を連れてきてどうするつもり?」「直美さん、何をおっしゃるんですか?」芽衣の目から、ぽろぽろと涙がこぼれた。「私愛人なんかじゃありません」「ご主人に奥さんも
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