「黒い鳥……?」 わたしが淹れた薫り高い紅茶を一口含んで満足げに息を吐くアラン様。 ふふん。そうでしょうそうでしょう。今日のは特に美味しく淹れられたと思うんですよね!「うまくなったなぁ。……最初はどうなることかと思ったが……」 ……さすがアラン様、持ち上げてから落としてきますね。 もう一口紅茶を飲んだアラン様が、音を立てずソーサーへとカップを戻す。 流れるようなその美しい動きに見惚れていると、アラン様の紅い瞳がまっすぐわたしを射抜いた。「その……黒い鳥とやらはどこで見たんだ?」「この寮の裏庭ですよ。ちょっとした雑木林のある」 そういうとちょっとだけアラン様が訝し気な表情になった。「そんな場所に何用だ? お前を呼び出して文句をつけるような相手は粗方潰したと思ったんだが……」「物騒なことおっしゃらないでください。朝の鍛錬ですよ鍛錬」 お前の方が物騒じゃないかとおっしゃりますけどねぇ。日々の鍛錬は必要なんですよ。わたし貴女様の護衛ですし? ……そういえば、隣国の件が片付いてアン様が狙われることがなくなったからお役御免では? いやでもティボー公爵(ご依頼主)様から引き上げるような指示も来てないな? だったら指示が来るまでお役目を全うするのみ。「そこで……? 黒い鳥を見たというのか? だいたいなんでそんなその鳥が気になるんだ?」「うーん? なんでですかねぇ? 多分あの鳥普通の鳥じゃなかったからですかねぇ」 お皿の上に品よく盛った焼き菓子に手を伸ばす。 白と黒の二色を組み合わせたクッキーに歯を入れると、さくりとほどけ口の中にバターの芳醇な香りと小麦粉の香ばしい香りが広がった。 さすが公爵家のお菓子! 上品なお味ですね! このお味に慣れてしまって、もう普通のお菓子じゃ物足りなくなっちゃうのでは? ……アラン様と結婚したら、ティボー公爵家に住むことになるから毎日食べられるな? ……いやいやいやいや、お菓子の為に公爵家に嫁入りするのは田舎令嬢には荷が重いわ
Terakhir Diperbarui : 2025-04-28 Baca selengkapnya