夕食前、征司は静江に電話をかけ、空港へ人を迎えに行くため夕食には戻らないと伝えた。千尋がカレンダーを確認すると、今夜は佳乃が南央市から臨海市へ来る日だった。おそらく、今夜、征司は帰らないだろう。一人でだだっ広い家にいると、かえって気楽だった。実家の家族はまだ千尋と健太が離婚したことを知らない。知らせるつもりもなかった。遠く離れていては、心配させるだけで何もできない。状況がもう少し落ち着いてから話すつもりだ。千尋は征司に海星航空ショーの件をまとめると約束した。時間を見ると、ちょうど夕食が終わった頃だろう。哲也の番号にかけると、すぐに出られたが、少し騒がしいのが聞こえた。「こんばんは、哲也君。邪魔してごめんね」哲也は笑って言った。「そんな言い方するなよ、水臭いじゃないか。同級生だろう?邪魔も何もないさ。何か用か?」千尋は探るように尋ねた。「本当に申し訳ないけど、こんな時間に仕事の話で……都合は大丈夫かしら?」哲也は実にさっぱりしていた。「問題ないよ。ちょっと待っててくれ」向こうの騒音が次第に遠ざかり、ドアが閉まる音がして、完全に静かになった。「どうぞ、話してくれ」この点からも、哲也の仕事に対する真摯な態度がうかがえ、千尋は哲也に好感を持った。「この前電話で話してくれた海星航空ショーの件だけど、今日、上司から私が展示会場の連絡調整を担当することになったの。それで相談なんだけど、今、会場でどんな広さや場所のブースが空いているか教えてもらえる?うちの会社、知っての通り出展機体の種類が多いから、広めのスペースが必要なの。より多くの来場者を引き付けるために、もし立地の良いブースが空いているなら、ぜひ確保したいと思っているの」哲也は言った。「分かった。じゃあ、うちの展示会場の関係者向けの資料を送るよ。内部資料だが、機密情報じゃないから安心してくれ。ブースの広さと場所が載っていて、赤でマークされているのが契約済みのスペースだ。それ以外で、いいと思うところがあれば、話を通してあげるよ」内部資料――これは、頼んでも手に入らず、お金でも買えないものだ。千尋は感謝した。「本当にありがとう、哲也君」哲也は言った。「どういたしまして。他のことは力になれないかもし
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