尚吾は続けて言った。「六十億円というのは最低ラインで、それだけで済むってわけじゃない」和則は真依を困り果てたように見て言った。「私、せいぜい十億しかないよ。家財を全部はたいてもこれだけなんだ」真依は尚吾のそんな大袈裟な物言いが気に食わず、彼を睨みつけた。「人を脅かすのやめてくれない?」「脅かしてなんかいないさ。フラワーフェアリーは十年の老舗ブランドで、かつては輝いていたんだ。この金額がなければ、手に入れるのは難しいだろうね」尚吾は言い終えると、一口ワインを飲んだ。真依は眉をひそめて答えなかった。「フラワーフェアリー、どうしても手に入れないといけないのか?」和則は心が痛むように尋ねた。
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