十八歳のとき、ついに兄が迎えに来てくれると聞いて、私はわくわくして一晩中眠れなかった。翌朝、私は何度も鏡の前で自分を見つめて、身なりに乱れがないか確認した。身にまとった服は新品で美しかった。穴も接ぎも、嫌な匂いもなかった。孤児院に来てから一度も得なかった服だった。助平な院長はニヤニヤしながら近づいてきて、私の肩に手を置いた。「うちの春乃はほんとにかわいいなあ」私は体が反射的に震え、瞳孔がぎゅっと縮んだ。思わず丸まって頭を抱えようとしたそのとき、動きが止められ、手首に刺すような痛みが走って。「何を言っていいか、言っちゃいけないか、春乃ならわかってるだろ?わかってないなら……その結果わかってるよな?」私は恐ろしくて頷いた。すると院長は満足そうに手を放し、鼻歌を歌いながら去っていった。私は唇を噛みしめて、新しい服の嬉しさを完全に失った。私は院長が準備した朝食を食べず、まだ七時前に孤児院の門前に立って兄を待った。兄は「八時に来る」と言っていたけど、時計は九時を過ぎても兄の姿は見えなかった。院長はひそかに喜んだ。「ほらね、春乃がずっと恋しがってる兄さん、あんまり来る気ないみたいじゃない?」私は院長が怖かったが、このときだけは意地が勝った。「違う。兄さんは絶対に来る」太陽がじりじり照りつけ、時計の針が十一時近くを指した頃、門前に何台の立派な車が停まった。二番目の車のドアが開き、後部座席から人が降りてきた。その男は眉目が鋭く、冷たい表情をたたえた。彼の口元には、小さな赤いホクロがあった。馴染みがないのに、どこか見覚えがあるその直感で、彼は十年ぶりに再会した兄で、私の世界でたった一人の家族だと、私がわかった。私は足が止まらず、最初は早歩き、やがて小走りになった。「お兄さん……」私が口元に笑みを浮かべようとした瞬間、その冷たい表情の男は屈んで甘く微笑んだ。そして後部座席からもう一人の少女を手を引いて連れ出した。少女はすねたように口をとんがらせると、兄は困ったように彼女の頭を撫でた。その雰囲気はとても温かかった。「……お兄さん?」私はその温かい光景をぼんやり見つめて口元の笑みを消し、足を踏み出すべきか後退するべきか、そのまま立ちすくんでいた。
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