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第5話

Auteur: 涼風
「春乃……春乃……落ち着け、どうしたんだ?」

朦朧とした意識が引き戻され、ずっと待っていた痛みはまだ来なかった。私は大きな恐怖から解放されたような気がした。

鼻水と涙で顔はぐちゃぐちゃになり、体もベタベタだった。白いクリームに赤いイチゴの汁が混ざり、異様にみっともなかった。下半身はまだ跪いたままになっていた。

書斎の門前には奈々が立っていて、驚きと恐怖が混じった目で私を見つめていた。

暖かい灯りに照らされ、彼女はまるでキャッスルの姫みたいに美しかった。

未曾有の劣等感と恥ずかしさが胸に押し寄せ、私は抱きしめていた兄の腕を思い切り押しのけ、よろよろと逃げ出した。

後ろで兄の呼ぶ声が聞こえたが、私はもう振り向きたくなかった。

耳には、兄の幼い声が響くようだった。「僕の妹を、世界でいちばん美しくて幸せな姫に育てるって約束したんだ」

あのとき私を慰めるために言ったその言葉は、本当に叶えられていた。十五年を経て、奈々は見事に大きくなっていた。

私は部屋に逃げ込み、灯りをつけずに真っ暗闇に身を沈めた。以前よく閉じ込められた地下室みたいな、懐かしくて不気味な安心感があった。

噛み
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