朝倉隼人(あさくら はやと)と再び顔を合わせたのは、あれからちょうど七年後の同窓会だった。手術を何件もこなして、クタクタだった私は、身なりを整える気力もなくて、そのまま宴会場に入った。彼は、いつの間にか人だかりの中心に立っていた。隣には水無瀬遙香(みなせ はるか)――彼の腕にしなだれかかり、まるで誇らしげに賞賛の声を受けていた。「隼人、さすがだよなぁ!ニューヨークのウォール街に行ってまだ数年だろ?それで今じゃトップトレーダーとか、A市市立第一高校の誇りだよ!」「そうそう、聞いたよ。現地の大物投資家たちが、隼人のために食事まで用意してくれるって!アドバイス料が何百万?俺たちの年収以上じゃん!」「俺も最近株やっててさ〜。なあ、昔のよしみで、ちょっとだけインサイダー情報、教えてくれよ?」そんな中で、誰かがふと訊いた。「てか、隼人と遙香って、もう婚約するの?」彼は腕の中の彼女に目を向け、優しい声で答えた。「ああ。12月20日に婚約する予定だよ」周囲からは一斉に「おめでとう!」の声が飛び交った。それでも誰かが続けた。「そういえば隼人、詩羽とはもう連絡取ってないの?あの頃、すごく熱烈だったよね。お前の初めての曲、詩羽のために作ったって話だったし」私の名前が出た瞬間、彼の表情がわずかに固まったのがわかった。視線の奥が、ほんの少しだけ陰った。そんな隼人の様子に気づかないふりをして、水無瀬さんが品よく笑って口を開く。「やだ、何言ってるのよ。私たち、もうすぐ結婚するのよ?ああいう若い頃の恋って、長続きしないものよ。それに、詩羽のことなんて、隼人はとっくに忘れてるんだから」その場が再び笑いに包まれた。でも、私だけは知っている。あの曲は、隼人が私に告白するために、自分で書いたものだったってことを。前の人生、私たちは高校で出会って、一目惚れだった。あのとき、彼は真剣な瞳でこう言った。「詩羽、俺の目を見て。俺、お前のことが好きだ。目は、嘘をつけないから」私は、あの言葉を信じていた。けれど、前の人生の彼は、やっぱり嘘をついた。静かに目元の表情を整えて、私は会場に足を踏み入れた。目ざとい同級生が、すぐに声をかけてくる。「詩羽!来るの遅いじゃん!」「その格好で来たの?せめて着替えてきなよ〜」「まさ
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