Lahat ng Kabanata ng 孤独な悪女は堅物王太子に溺愛される~犬猿の仲でしたがうっかり誘惑しちゃってたみたいで乙女ゲーム的な展開が待っていました~: Kabanata 21 - Kabanata 30

44 Kabanata

二十一話 新たな力

 殿下と仲直り出来て胸のつかえが一気に取れた感じがした私は、転生してようやくクラウディア先生と気持ちが1つになれたように感じた。 今までは肉体は彼女のものでもどこか他人事のように感じていたところもあったのだけど、今回クラウディア先生の色んな感情を受け入れた事で気持ちが1つに溶け合えたように感じたのだ。 これで良かったのよね、きっと。 ホッとしたところで、今日の出来事について殿下に聞いてみる事にした。 「殿下…………あの、今日の事ですけど」 私がそこまで口にしたところで、言葉を制止するように殿下の手がそっと私の唇に触れる。 「出来れば昔のように呼んでほしい……ジーク、と。それに話し方も普通でいい、ここには私と君しかいないのだから」 「ええ、分かったわ……えと、ジーク?」 私が殿下に向かってそう呼びかけると、片手で顔を覆った殿下は俯いてしまった。 どうしよう、これで良かったのかな……でもよく見てみると耳まで真っ赤だったので、間違ってはいないらしいと少しホッとしたのだった。 「すまない。続けてくれ、ディア」 そう言って照れくさそうに少し顔をこちらに向けたかと思うと、指の隙間から覗く瞳がひどく熱を帯びていて、ドキッとしてしまう。 私の髪をひとすくいして、髪で遊ぶかのようにいじりながら私の言葉を待っているジークの様子に、何故か心臓がうるさくなっていく。  突然距離が近くありませんか?こういう時はどうしたらいいんだろう――――私は誤魔化すように話を続けたのだった。 「あ、あの今日の事だけど、どうしてジークがあの場に来たのかなって」 「あれは、偶然理事長室の窓から君達が見えて……何だかカールの様子がおかしいし、君に対して魔法を使っているように見えたから急いで庭園に向かったんだ」 このドロテア国では、回復魔法系や補助系以外の魔法を人に向けて使う事を禁じられている。 授業など特殊な状況の場合は許可が必要で、そのため風魔法の実習授業の時に理事長であるジークが見に来ていたのだ。  カールが私に向けて魔法を使っているというのは禁忌を犯しているという事になるので、彼は急いであの場へ来てくれたのだろう。 「理事長室って庭園が見えるのね。ジークが来てくれて助かったわ、ありがとう」 「いや……私も色んな意味であの場に行けて良かった」 「え?」 「君
last updateHuling Na-update : 2025-06-08
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二十二話 ラクーは使い魔?

 「魔力が回復してきたみたいだから、少し練習をしてみようかな」 「そうだな。今は私もいるし何かあれば必ず助けるよ」 ジークが力強くそう言ってくれたので、不思議と怖い気持ちがなくなり、前向きな気持ちでこの新たな魔法と向き合おうと思えた。 意を決して学園で使った聖魔法を試してみる。 あの時は確か必死でカールを操っている魔法を解除するように祈っていたのよね。  今回は――――ジークがお疲れのように見えるから何か回復魔法を使ってみようかな。そんな気持ちを込めて祈りを捧げるように両手を組んで目を閉じた。  すると庭園の時のように胸の奥が熱くなってきて、私の体が光り輝き始める。 その状態を確かめる為に目を開いてみると、発光しているかのように私自身が白い光に包まれていた。 そしてあの時も感じた、妙に懐かしい気持ち。 この光に包まれていると、何だか家族に見守られているかのように感じてとても落ち着く。  ジークの方を見るととても驚きながら目を見開き、私を凝視していた。 でもその瞳に恐怖は感じられなかったので、内心ホッとしている自分がいる。 新たな自分を受け入れるのにまだ戸惑っているのに、ジークにまで怖がられたら今の自分を受け入れる事が出来なくなりそうで、その事の方が怖かったのだ。 彼が拒絶しないでくれている事が嬉しくて、自然と笑みがこぼれる。 「ふふっ、そんなに驚かなくても私は私よ」 全身発光している状態で言う言葉ではない気がしたけれど、驚き固まっているジークにこの状態で会話してみた。 「すまない……なんだか、女神様みたいで…………」 「……………………」 凄く恥ずかしい事を言われた気がする……顔に熱が集まってくるのが分かる。 そんな風に見えていたの? とにかくこのまま聖なる力を宿した状態でいても仕方ないので、何か魔法を使ってみよう。 そう考えた瞬間、私の目の前にラクーがぴょこんっと現れる。 「クゥゥ――」 「ラクー!」 そしてあの時のようにまたラクーと私は共鳴し合い、1つになるような感覚を覚えたかと思うと、胸の奥から1つの魔法が浮かび上がってきた。 「[治癒魔法]キュアプレアー」 その言葉を発した途端に光は1つに集まり、ジークの中に溶け込んでいった。 そして彼が一瞬だけ光った後、回復したジークのお肌はツヤツヤになっていた
last updateHuling Na-update : 2025-06-09
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二十三話 国王と王太子、父と子

  ――――ドロテア王国王宮―――― 公爵邸でディアと別れた私は、翌日、学園も休みの日なので父である国王陛下へ報告をする為に王宮を歩いていた。 コツコツと廊下に足音だけが響き渡る……父上に会うのは久しぶりだな。 この時間なら執務室にいるに違いない。 きっとディアのお父上であるロヴェーヌ公爵も一緒に待っているのだろう……昨日の出来事についてすぐに報告しなければならない。  庭園でカールに拘束されている彼女を窓から見た時は、全身の血の毛が引くような気持ちがした。 瞬間移動すると、触手に絡め取られていたディアは自身から発する力でなんとかカールの触手を解除し、事なきを得た。  その時に彼女から聖なる力が発動し、聖魔法を使ってカールにかけられていた魔法を解呪したのだ。  聖魔法を使える人間はそうそう生まれるものではない……父上の代より前にさかのぼっても一人いたかいないかくらいで、眉唾物の伝承だと思われていた。 実際に私も生きている間に出会えると思ってはいなかったのに、まさか彼女が…………想いを寄せる相手がそうだとは。  聖魔法を使える人間はこの世界の創りを変える事が出来るとも言われている。  魔物に怯える事のない世界――――我々が目指す世界に絶対に必要な力。 それにこの力が公になれば、教会も間違いなく欲しがるだろう。 父上は全力で彼女を渡すまいとするだろうな。  私は正直陰鬱な気持ちだった。 ディアがそこまで重要な人物である事が分かり、この世界の醜い争いに巻き込まれてしまう未来がすぐに予想されるし、身の危険も増す。 何より、重要な人物だから傍にいると思われてしまうかもしれないと思うと、嫌でも気持ちは落ち込んでいく。  誤解、されてしまうだろうな……それでも大切だから傍にいたい。  今日はその話を父上としなければ。 色々考えていると荘厳な扉の前に着き、扉を守っている護衛に目配せをする。 ――――コンコン―――― 「シグムントです」 私がノックとともに名前を言うと「入りなさい」と中から声が聞こえてきたので、護衛達が扉を開く。 中には案の定ロヴェーヌ公爵も父上のそばに控えていて、二人とも私が来るのを待っていたようだった。 私が中へ入るとゆっくりと扉が閉じられたので、二人の前へと進み出た。 「父上、お久しぶりです。
last updateHuling Na-update : 2025-06-10
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二十四話 自然体でいられる関係 ~ダンティエスSide~

 「あれほど感情を表に出したシグムントはなかなかお目にかかれないな」 「陛下、お戯れが過ぎますぞ。あのように煽らなくともシグムント殿下なら娘の為に動いてくれるでしょうに」 「必死な息子を見るのも楽しいものだ。ダンティエス、そなたはどうするつもりだ?」 親同士の話をしていたかと思えば突如話をふられて驚いたが、俺になど微塵も期待していないくせに、という気持ちが頭をもたげる。 子供じゃあるまいし、いつまでも反抗期を拗らせたような態度はするべきではないと思いつつ、素直な態度が出来ずにいた。 「私も精一杯頑張らせていただきますよ、兄上には負けたくありませんし」 「負けたくない、か。私はそなたにも幸せになってもらいたいと思っているのだ」 父上の言葉に私は目を丸くする。 私の幸せ?そんなものがどこにある――――常に二番だった私が自分という生き物を認め、好きになれる日がくるとは思えない。 それともクラウディア先生を手に入れたら分かるのだろうか。 聖なる乙女だったクラウディア先生。 彼女の力が発動するところを私も見てしまったのだった。 いつものようにクラウディア先生が庭園に行くかもしれないと思い、自然と足が向いた。 しかしいざ向かってみたら兄上が先に来ていて、庭園の木に磔にされたクラウディア先生が眩い光を放っているのを目撃してしまう。 あの光は兄上の光魔法とは全然違う、もっと清らかで神に近い光だった。 そして全てを包み込んでくれそうな……クラウディア先生の危機に駆けつけたかったのにまたしても兄上に先を越されてしまうとは。 保健室の時もそうだ、あそこにクラウディア先生がいるのは分かっていた。 本当ならあの時、彼女を見つけても良かったけれど、困らせる事は本意ではないし一旦引いたのに、近頃はことごとく兄上に敵わない。  それにさっきの兄上を見て、ああ、本気なんだなと分かった。 私にそんな兄上に勝てるのか?誰かに本気になった事もないのに―――― 「父上、私の幸せは私が決めますからご心配なく。では、失礼いたします」 今はまだ暗闇の中を手探りで歩いているような気がするが、いつか俺だけの光を手に入れる。 そう決意し、父である国王陛下に背を向け、執務室を後にしたのだった。  ~・~・~・~・~  何となく何もする気になれないし、時間を持て余して
last updateHuling Na-update : 2025-06-11
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二十五話 マデリン・トンプソン伯爵令嬢

 庭園での事件があった翌日は学園がお休みだったのでゆっくり体を休め、休み明けから学園祭の準備が始まった。  カールはあの事件の記憶が全くなく、あの場にいたのも私とジークとカールしかいなかったので、特に何事もなく仕事にはげんでくれている。  良かった……あれはカールに罪はないし、操られていたとは言え少しでも記憶が残っていたらカールは心を痛めるだろうと思っていたので、彼に記憶がなくてホッと胸をなでおろす。 今日もきっと張り切って庭園の手入れをしてくれているはずだわ。 学園祭の頃には庭園の花たちも綺麗に咲き誇っているでしょうね……想像しただけで顔が笑ってしまう。 学園祭は二ヶ月ほど先の話だけれど、ドロテア魔法学園の学園祭はとても手が込んでいて、王都中の貴族が見に来るし、一般の民にも開放されるとあって皆気合が入っている。  危険な事がないように細心の注意を払いながら、魔法と手作りを駆使した催し物を皆で考えて披露する。 私の受け持つ4年生の風クラスは、乗り物に乗って画面に映る映像を駆け抜けるバーチャルジェットコースターのようなものに決まった。 乗り物は自分たちの手で作り、前方から風を出してあげて、映像も流せば本当に乗っているかのような演出が出来る。  いいな……私も乗りたい。見た目はクラウディア先生なので普段はクールな対応の私だけど、中身は普通の女子大学生なのでこういったものを楽しみたいお年ごろなのだ。  学園祭の時にこっそり乗ってみようかな。 すぐバレるだろうけど……滅多に経験出来ることじゃないし。 今はその為の乗り物を皆で一生懸命作っていた。 雲に乗っている感覚になれるように、硬い椅子にクッションを敷き詰め、周りをやわらかい布で包み込み、ふわふわの椅子を設置する。  それを幾つか作って繋げ、ジェットコースターのように動かしてあげれば臨場感も出る。  学園祭で使用する魔法については使用の許可が必要で、それについては申請中だけれど、おおよそ許可は下りるのであまり心配はしていない。 きっと楽しいアトラクションが出来上がるはず……作業自体も楽しいし、生徒たちと一緒に何かを作り上げるのはやりがいもある。 先日色々とあったマデリンもこういう時は学生らしく、皆と準備を楽しんでいた。 ふふっ、やっぱり学生なのね。 自分にもこういう時代
last updateHuling Na-update : 2025-06-12
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二十六話 カリプソ先生の調教

  「こんにちは、クラウディア先生。お久しぶりですね」 カリプソ先生が柔らかい笑みをたたえながら、優雅に声をかけてくる。  「あ、ええ、そうですわね。確かプリントを拾っていただいた時以来かしら……その節はありがとうございます!助かりましたわ」 「そんなお礼を言われるほどの事ではありませんわ。マデリンもこんにちは」 「……………………」 マデリンはカリプソ先生をチラッと見た後視線を手元に戻し、作業に集中する。 完全に嫌いモードなのね……私に対してより酷いかもしれない。 「聞いたわよ、魔力が暴走したのですって?理事長先生が巻き込まれて大変だったとか……クラウディア先生にしっかりと風魔法を学んだ方がいいわね。いつか怪我をしてしまうわ」 カリプソ先生がジークの話題を振ると、マデリン反応して立ち上がり、腕を組んだままカリプソ先生とのにらみ合いが始まる。 「あなたに言われる筋合いはありませんわ。先生と違って私は魔力量も多いし優秀なの。それに理事長先生はクラウディア先生をかばったのであって、相手がカリプソ先生ならかばったかどうかは怪しいですわね」 「優秀な人は人に向けて魔法を使ったりはしないのよ」 2人のやり取りを見ていると火花が散っているのが見える気がする……お互いににらみ合い、威嚇しているけどカリプソ先生の方がやはり大人なのかマデリンから視線を外し、余裕の笑みを浮かべて私の方へ向き直った。 「クラウディア先生、このクラスには気性の荒い猫が紛れ込んでいるようなのでお気をつけくださいね。何かあればいつでも保健室にいらしてくださいませ」 「ありがとうございます……心配してくださって嬉しいですわ。でもその猫はとても優秀で可愛らしいのですよ。素直な面もありますし、カリプソ先生のお手を煩わせるような事にはならないと思うので、ご心配にはおよびません。きっと理事長先生もそう思ってますわ」 私はマデリンの方を見て軽くウィンクする。 カリプソ先生の圧が凄くて半分引き気味になってしまったけれど、自分のクラスの生徒を危険人物扱いされて黙っているわけにはいかない。 「そう……それなら良いのですけど。では私はそろそろこれで」 カリプソ先生は私の言葉にあまり納得していない様子だったのに、食い下がるわけでもなくあっさりと立ち去ってしまったのだった。 嵐が去ったかのよ
last updateHuling Na-update : 2025-06-13
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二十七話 突然の来訪者

 カリプソ先生とお話をした日の放課後、私は庭園には寄らずに邸に戻って聖魔法の練習をする事にした。 カールとの事があって、ジークには少し庭園に行くのは控えた方がいいと言われてしまう。 階段から突き落とされた事といい、何者かに狙われているのは明らかなので心配してくれてるんだろうな、と思うと彼の言い分も無下には出来ない。  それに何となく胸騒ぎというか、もしカールの時みたいに私の聖魔法が必要になる日が来たらという焦燥感に駆られていたのだった。  練習しておくに越した事はないと思うので、出来る限り聖魔法に慣れておきたい気持ちが強い。 外でこの魔法を使って見られてしまうのは危険だから、邸で練習するしかないわね。 帰りの馬車の中でもマデリンとカリプソ先生とのやり取りや、生徒達の様子などを思い出し、カリプソ先生に若干の違和感を感じていた。 今度ジークに聞いてみようかな……彼ならカリプソ先生が来た経緯なども知っているだろうし。  ゲームには恐らく登場していないキャラクター。 それに加えて美人、人気者、色気もあって、大人な雰囲気――――ジークが連れてきたわけじゃないわよね? 色々と考えていると胸がモヤッとしてくる。 「?」 自分の胸に手を当ててみるけど体調が悪いわけではない。 カリプソ先生の事を考えると妙にモヤモヤしてくるのが嫌な予感なのか、自分の中の気持ちなのかはっきりしないまま馬車は公爵邸に着き、セリーヌや邸の人達が出迎えてくれる。 「お嬢様、お帰りなさいませ!お仕事お疲れ様です!」 「セリーヌ、皆、ありがとう。着替えたら庭に行くわ。集中したいから誰からの連絡も入れないでね」 「承知致しました!」 聖魔法を使っているところを誰にも見られたくないので、一応皆に誰も取り次がないように伝えておいた。 お父様は私の力について知っているのかしら……最近は忙しいようで一緒に食事もとれていない状況なので、まだ確認出来ずにいるのよね。 お父様になら話しても大丈夫、よね? 自室に着いて仕事用のローブを脱ぎ、動きやすいシュミーズドレスに着替えたらすぐに庭へと移動する。  庭園は思わず感嘆の声が漏れてしまうくらいとても美しく、庭師の人がとても素晴らしい仕事をしている事は一目見たら分かるほどだった。  こんなに見事な庭は学園と我が家くらいではと思う
last updateHuling Na-update : 2025-06-14
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二十八話 聖魔法の練習と甘い時間

ジークを庭園に案内すると、公爵邸の庭園を見回しながら「相変わらず見事な庭園だな」と褒めてくれた。 「ありがとう、王宮ほどじゃないけどお気に入りの庭園なの。さっきまで聖魔法の練習をしていたわ。使い方を練習しないとと思って」 「ああ、やっぱり……そうだったのか。学園の庭園に姿が見えなかったからね。君が私の言葉を大人しく聞いて帰っているとは思わなかったけど」 「もう、自分で言ったんじゃない!でも確かに一理あるなと思ったから帰る事にしたの」 「君がもし練習しているなら私も付き合いたいと思って、瞬間移動してきた。突然来てすまない」  ジークは笑いながらサラッと言ってくれたけれど、そこまで考えてすぐにここに来てくれたって事? 彼の言葉に自分が何を気にしていたのかとバカバカしくなり、胸が温かくなったのだった。 「ううん、来てくれて嬉しい」 「ディア」 「さっそくだけどジークに練習を見てほしいの」 「あ、ああ、分かった」 なんだかジークがガッカリしているような気がしたけど、気のせい? それよりも魔法に集中しなければ。まだ使い慣れない魔法の練習だもの、何が起こるか分からないのだから。 私はジークに見てもらう為に自分の魔力に集中し始める。 聖魔法を使う時は主に使う目的と、それに対しての祈りが大事になる事がだんだんと分かってきた。心の底からの祈りを捧げる事によって体の奥から湧き起こってくる聖なる力を具現化する―――― 私は自分の守りたい者の事を考え、集中して祈りを捧げた。すると祈りは光となって私を包み、やがて光は私の目の前で具現化されていく。 「聖なる大盾――――ヘブンズガード」 この庭園一帯をすっぽりと被ってしまえるくらいの大盾が出来上がったのだった。 「これが聖なる大盾…………美しいな」 「ありがと、でもまだ成功かは分からないかな」 「そうなのか?大きさも十分だし、綺麗に作られているが」 「まだ力が安定しなくて、次に同じのを作れる感じがしないの。やり始めたばかりだから仕方ないのかもしれないけど」 私がそう言うと、少しの間ジークが考え、私の両手を握ってきた。 「ジーク?」 「私が君の力を安定させるべく補助してみようと思う。私の光魔法は聖魔法から派生したと言われるくらい、相性がいいんだ。力の使い方なども教えてあげられるかもしれない」 
last updateHuling Na-update : 2025-06-15
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二十九話 違和感

翌日、学園へ出勤し、クラスへ行く途中でマデリンの後ろ姿を見かけたので挨拶をした。 「マデリン、おはよう。今日もいい天気ね」 「…………おはよう……」 どうしたのかしら……瞳は暗く陰っているように見えるし、声をかけてもボーっとしている。 いつもシャキッとしているマデリンらしくないわ。 私が顔を覗き込んでも「ちょっと恥ずかしいじゃない!」という感じもない……熱でもあるのかしら。 「大丈夫?一緒に保健室に行きましょうか?」 あまりにもいつもと違い過ぎるから具合でも悪いのかと思って保健室に行こうと声をかけると、突然ビクッと反応したマデリンは恍惚とした表情に変わっていた。 「保健室!カリプソ先生がいらっしゃいますよね!あのお方は素晴らしい方です……私、会いに行ってきます!」 マデリンはそう言って走って行ってしまったのだった。 何事? 何が引き金になったのか分からないけれど、人が変わったかのようにカリプソ先生を崇拝しているマデリンに驚きを隠せず、何も言葉を返す事が出来なかった。 前日までカリプソ先生を嫌悪していたのに、この変わりようは凄いわ。 昨日帰るまでは普通だったはず……何かあったの? 表情も虚ろだったり突然熱を帯びたり、明らかにいつものマデリンとは違う。 でもあんな状態で授業を受ける事は出来ないだろうし、ひとまず私も仕事をしなければとクラスへ向かったのだった。 その日のクラスの授業では奇妙な事が続いた。 今朝のマデリン同様に明らかにボーっとしている生徒が何人かいて、私が心配して保健室の話をすると一目散に保健室に行ってしまうのだ。 どうやら私のクラスだけではないらしいけど、カリプソ先生がいくらいい先生だとしてもこれはおかしいわよ。 皆一様に正気には見えない目をしていて、私の声もまるで届いていないかのようだった。 胸がザワザワする――――生徒達の様子がおかしいのはもちろんなのだけど、皆が同じような症状である、という事が一番引っかかる。 この話をすぐにジークに相談したいと思っていると、この日も仕事終わりに公爵邸に来てくれたので、今日の出来事を相談してみる事にした。 「…………皆が同じ症状……虚ろ……恍惚とした表情…………魅了か?でも魅了は魔法ではない」 ジークが色々と考えながら、独り言のようにブツブツと考えを述べている。 「確か
last updateHuling Na-update : 2025-06-16
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三十話 胸の痛みと真剣な想い

昨日ジークに色々と相談した事で気持ちが軽くなった私は、張り切って学園に出勤し、授業にも力を入れて取り組んでいた。 そしてその日からカリプソ先生のところに生徒が駆けつける事はめっきり減っていた。 ジークのおかげ?と思っていたところに一つの噂が舞い込んでくる。 クラスの女子生徒たちがヒソヒソと噂話しているのを通りすがりで聞こえてしまったのだ。 「理事長先生とカリプソ先生が?」 「うそ~~理事長先生は真面目だし、しっかりしている人が好きだと思ってたのにショック……」 「ああいう感じが好みだったのね。知らなかったぁ」 ジークの好み?どういう事?あまりにも気になり過ぎてその話をしている生徒に声をかけてしまう。 「なぁに?何の話をしているの?先生も交ぜてほしいな~」 「あ、クラウディア先生!え……っと…………」 「理事長先生がどうとか聞こえちゃった」 「あ……これは私が見てしまったんですけど、理事長先生がカリプソ先生と…………キ、キ……」 「キ?」  グリーンの髪を一つに三つ編みにしている女の子は顔を真っ赤にしながら、なかなか言い出せずにいた。そして勢いよく発した言葉に私は絶句してしまう。 「キスしてたんですっ!」 「え……キス?!」  私はあまりに唐突な話に驚いて聞き返してしまったのだった。ジークがカリプソ先生とキスを?あのジークが?  「ほ、本当なんです!カリプソ先生と理事長先生が一緒にいるところを見るのも珍しいなと思って2人を陰から見ていたら、理事長の美しい顔がカリプソ先生の顔に近づいていって……」 生徒たちは「キャーッ」と黄色い声をあげながら皆興奮している。 私はその話を聞いてもまだ信じられずにいた。カリプソ先生の話を相談した翌日にそんな事をするとは思えないんだけど……嫌な噂を振り払いたいと思いながら過ごしていた私の目に入ってきたのは、カリプソ先生と仲良く話すジークの姿だった。  注視しておくって、そういう事?  私が2人を凝視していると、視線に気付いたのかジークがこちらをチラリと見て目が合い、コッソリ親指を立ててグッドのポーズをしてきたのだった。 ……これって完全に「自分がカリプソ先生を見張っておくから君は心配するな」って事よね? 女生徒たちが見たキスの現場はともかく、まさか彼の注視するという言葉がそばで見張る
last updateHuling Na-update : 2025-06-17
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