ゲームがどんどん進化している。多くのユーザーはもはや傍観者でいることに満足できない。よりリアルな体験を求め、正真正銘の参加者になることを望んでいる。ゲーム機やサーバーでしか存在しないコンテンツは仮想の世界から飛び出し、リアル世界で実体化する傾向が目で見らえる速さで強くなっている。その日々拡大の需要を見込んで、一人の男はオリジナルリアル脱出ゲームの開発に没頭している。パソコンのチャット窓で、その男は最新企画について、とある制作会社の人と交渉している。これまでいくつの会社に売り込みをしたが、いつも「発想は独特だが、オリジナルもののリスクが高すぎる。展開はヒットワードの裏をかくようなもので、ヒットワードを目当てに来たユーザーの反感を買いやすい。なにより、シナリオがドライすぎる、短時間でおもしろさを伝わらない」など理由でリジェクトを喰らうか、想定よりはるか低い値段にたたかれる。今交渉している会社の担当者・企画の小林くんが男の発想を認め、彼の作品を一所懸命推している。アイデアについてああのこうの言うことは一度もなかった。それでも、「シナリオ」ときたら、話は別だ。【RRR密室企画·小林】「さすが反町先生!今回も先生の発想と演出アイデアに驚きました!このテーマなら、今後2年以内にほかの誰も企画しないと思います!こんな奇想天外の物語を合理的につなげるのは先生だけですから!」いつものように、小林は男・反町大介を褒めたたえた。でも、大介は自慢しなかった。彼は知っている。肝心なのは続きだ。「今回こそ十分な予算を取るから、先生のほうでシナリオまわりを練り上げていだだけますでしょうか?先生の発想はどれも爆売れの可能性があるもの、前のようにシナリオでケチを付けられたら、本当に宝の持ち腐れです!」「前」と言ったのは2年前に大介が作ったとある「VR×ループ密室」の企画だ。当時、熱血新人小林のゴリ押しで、制作会社はその企画を買い取って作り上げたが、上層部がシナリオの展開に疑問を持つ故に、十分な予算を出さなかった。その結果、密室のできも、宣伝も、売上もしょぼいままで営業終了。大介も売れない新人デザインナーにタグ入り。しかし、今年となったら、VRやループテーマの密室が爆発的な人気を博して、どんな凡作も、それなりの売上を取れた。小林は泣きながら、「先生の予想は正しかっ
Last Updated : 2025-05-28 Read more