大介は至急に車を出した。穂香がかなり混乱しているようで、電話で詳しい事情を伝えきれなかったが、大介は事情の異常さを悟った。「……私が両親のことで悠治さんに迫ったら、悠治さんはすべてを持って、両親のところにいくって言い出して…そのまま飛び出したのです……こうなるなんて思わなかったのです、悠治さんは、危険なことをしないですね!?」「オレは探しにいく。小日向さんはそこで待ってて、しばらく置いたら、電話を掛けてみてくれ」とにかく、穂香を落ち着かせて、大介は出発した。 この前、病院で小日向さんを助けて云々と言われた。あの時から妙だと思った。雪枝とそっくりの顔を持つ穂香が応募しに来たのは偶然なのか?図書館で悠治の両親の件に触れたのは偶然なのか?新聞記者から聞いた悠治の両親のことを考えると、穂香の身分はかなり怪しい。この間まで、悠治の自滅傾向がもうなくなったと思ったが、やつは穂香に悪質な冗談をしないだろう。穂香から聞いた時間を見ると、あの小説が投稿されたのは、悠治が飛び出した後のことだ。いきなり変わった小説の流れ、投げっぱなしのあとがき……人の将に死なんとする其の言や善し、ということわざを思い出させる。どうも不吉な予感がする。 そう思うと、大介はもう一足エンジンをかけた。 「調べれば調べるほど、ドロドロだったぜ」新聞記者の言葉は大介の脳内で響いた。 「男は結婚前にいろいろやらかしたから、言いなりになる女がほしくて結婚したって思ったら、女のほうも負けないくらい気持ち悪いことをしてきた……二人とも相手を利用するつもりで結婚したから、あんな結末になったんじゃない?まあ、確かに子供たちは可哀そう。だから、俺は追い詰めるのをやめたんだ。あんな真実、暴いてもしょうがないじゃない……」「……」「お前さんみたいなクリエイターにとっちゃ、いいネタになるかも知れないが」過去の暗
Last Updated : 2025-07-04 Read more