「若葉、あなたは本当に玲奈の代わりにダンマ女神となることを望むか?ダンマ女神となれば、生涯再婚は叶わず、あなたと江藤白夜の婚姻も無効となるが」 金色の仏像が並ぶ寺院の中、住職は老いていながらも慈悲深い声で問いかけた。 早瀬若葉(はやせ わかば)は殿内に跪き、眉間に朱砂の点を湛え、両手を合わせて心から敬虔に答えた。 「はい、承知しております」 どうせ江藤白夜(えとう びゃくや)が愛しているのは、自分ではない。 彼が愛しているのは、玲奈(れいな)だ。 それならば、彼女が二人の仲を成就させるのが一番だろう。 「住職、もう一つお願いがございます」 若葉は目を伏せ、それから低い声で告げた。 「正式にダンマ女神となる前に、このことを誰にも、玲奈にも、そして白夜にも伝えないでいただきたいのです」 住職は了承し、若葉には至親や最愛の人に別れを告げるため、たった七日間しか時間がないことを告げた。 七日後、彼女はもはや若葉ではなく、寺のダンマ女神となるのだ。 若葉が大殿から出ると、ふと顔を上げた先には雪のような白い影があった。 白夜が純白の汐蔵族の僧衣を纏い、長い廊下から歩いてくる。彼の肌もまた雪のような冷たい白で、ただその瞳だけは真夜中のように深く底が見えず、かすかに幽冷な光を宿していた。 「なぜここに?」 若葉を見るなり、白夜はわずかに眉をひそめた。 彼はまるで彼女に会いたくないようだった。 彼女が婚約者であるにもかかわらず。 心臓に突き刺すような痛みが走ったが、若葉はそれを見ないふりをして、無理に明るく笑った。 「お参りに来たのよ」 白夜の視線はさらに冷たくなった。明らかに彼女の言葉を信じていない。 それも当然だ。何年もの間、彼女はまるで小さな影のように、ずっと彼について回っていた。経典には全く興味がなかったのに、彼と共通の話題を増やそうと、厚い仏典を無理に読み、汐蔵族の先生を雇って汐蔵語まで習った……。 汐蔵語は学ぶのがとても難しかった。朝早くから夜遅くまで必死に暗記し、ようやく少し成果が出たところで、彼女は喜び勇んで仏堂に彼を訪ね、顔を赤らめて汐蔵語で告白したのだ。 しかし、その満ち足りた喜びは、最終的に彼の冷たい一言に変わっただけだった。 「それは信仰を冒涜する行為だ」 そ
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