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第7話

Author: 白団子
 何千何万もの細い針が、少しずつ、鈍い刃で肉を削るように心臓に突き刺さるような痛みだった。若葉は信紙に書かれたその恋文を、笑いながらも涙を流しながら見つめていた。

 この恋文は、四大古典恋愛物語の一つから引用されたもので、弟子が出家する前に、橋の下で偶然出会った少女に恋をして、それ以来、食事も喉を通らず、日に日に痩せ衰えていったという話である。

 そこで仏陀は彼に尋ねた。「その少女をどれほど愛しているのか?」

 弟子は答えた。「私は石橋に生まれ変わり、五百年の風に吹かれ、五百年の雨に打たれ、五百年の日差しにさらされても構わない。ただ来世で、彼女がその橋を渡るためだけに」

 若葉は、初めてこの物語を読んだ時、感動して涙ぐんだことを覚えている。彼女は経書を抱えて白夜の元へ行き、これが自分の求める愛だと語ったのだった。

 あれから何年も経ったが、白夜もこの恋文を覚えていたのだ。

 だが、残念ながら、この恋文は彼女のために書かれたものではなかった。

 彼女は全力を尽くしても、求める愛を得ることはできなかったのだ。

 若葉は恋文を置き、そして静かに立ち去った。

 白夜、あなたは知っていたのだろうか。かつての私も、石橋に生まれ変わり、五百年の風に吹かれ、五百年の雨に打たれ、五百年の日差しにさらされても構わない。ただ来世で、あなたがその橋を渡るためだけに。

 一睡もできぬ夜を過ごし、翌朝早く、若葉はウェディングドレスショップから送られてきたドレスではなく、ダンマ女神の僧衣に着替え、頭には僧侶の赤い頭巾を被り、数珠を手に教会へと向かった。

 彼女はこんな形で姿を消し、白夜に後始末を押し付けるつもりはなかった。だから、自ら結婚式場へ出向き、ゲストたちに説明し、公衆の面前で白夜との婚約を解消してから去るつもりだった。

 しかし、教会の扉を開けた途端、彼女は呆然とした。

 なぜなら教会には、既に別の花嫁がいたからだ。

 玲奈は純白のウェディングドレスを身につけ、楽しそうにブライズメイドたちと談笑している。ゲストたちも皆、興奮しており、誰も異変に気づいていなかった。

 若葉の瞳孔は震えた。「……これ……これは一体どういうことなの?」

 本来ならウェディングドレスを着るはずの彼女が、今、ダンマ女神の僧衣をまとっている。そして、本来ならダンマ女神となるはずの玲奈が、彼女のウェディングドレスを着ているのだ。

 位置が入れ替わり、身分が互い違いになっているのに、誰も異変に気づかない。

 若葉は震えながら一歩後ずさった。彼女はもう何日も白夜と話していなかった。まさか彼は一方的に、自分との婚約を解消し、今日玲奈を娶るつもりだったのだろうか?

 空は晴れていたが、冷たい液体が若葉の目尻から滑り落ちた。もう白夜のために涙を流すことはないと思っていたのに、目は言うことを聞かず、勝手に涙が溢れ出した。

 彼は、自分たちの結婚式が中止になったことすら、彼女にメッセージを送って知らせる手間すら惜しんだのだ!

 何の断りもなく、勝手に花嫁を入れ替えた。

 もし、私が玲奈の代わりにダンマ女神になることを承諾していなければ、もし今日、私がウェディングドレスを着て、喜び勇んでここに来ていたら……。

 白夜、想像したことがあるだろうか。もし私が満心でやって来て、花嫁の席が既に別の人に取って代わられ、満堂の親戚友人全員が私を笑いものにしているのを知ったら……その時、私がどれほど絶望するかを!

 人は極度の悲しみに陥ると、泣くのではなく、誇張して大笑いすると言うが、若葉は、それはきっと正しいのだろうと思った。彼女は抑えきれずに大笑いした。

 大笑いした後、若葉は目尻の涙を拭い、そして背を向け、きっぱりと立ち去った。

 仏陀は、出家者は慈悲を以て心とし、世間の一切の罪を許すべきだと説いた。

 しかし白夜、私はあなたを許さない。

 空港に着くと、若葉の携帯電話が突然激しく振動し始めた。取り出してみると、白夜からの電話だった。

 若葉は、それがひどく滑稽に思えた。「今頃、彼が何の電話をかけてくるの? 彼と玲奈の結婚式に私を招待するため?」

 もし彼が一日でも早く、玲奈を娶るつもりだと教えてくれていたなら、私は冷静に受け入れ、笑顔で彼らに祝福を贈ることができただろうに。

 しかし今──

 彼女は受け入れず、祝福もしない。

 何の躊躇もなく、若葉は白夜からの電話を直接切った。だが、切った途端、白夜はまたかけてきた。再び切り、またかかってくる……若葉は立て続けに七回も切ったが、白夜は執拗に電話をかけ続けてきた。

 若葉はうんざりし、搭乗直前に携帯電話をゴミ箱に投げ捨てた。

 だから彼女は、白夜が送ってきた無数の「どこにいる?」というショートメッセージを目にすることもなかった……。

 飛行機は離陸し、四千キロ以上を越え、彼女の心のよりどころへと辿り着いた。

 青い山の上には、赤壁の寺院が荘厳にそびえ立っており、住職と多くの高僧たちが寺院の入り口で久しく待っていた。

 若葉は両手を合わせ、聖僧たちに一人ずつ丁寧に礼をし、そして聖僧たちに見守られながら寺院へと入っていった。

 住職は若葉の眉間に朱の印を点し、「世間の万物、縁起滅尽、すべては因果によるもの、法爾然たり。執着を捨てれば、心は明鏡止水のごとく澄む」と語った。

 「あなたは本当に過去を、そして煩悩に満ちた俗世を捨て、我が門に入り、輪廻を永遠に断ち切ることを望むのか?」

 若葉は両手を合わせ、そして目を閉じた。「はい、望みます」

 「礼成」住職は言った。「今、あなたに法号ローサンダンジュを賜り、十二ダンマ女神に拝せしめる」

 言葉が落ちると同時に、読経の声が響き渡り、ゆらゆらと立ち上る白檀の香の中で、若葉は数珠を手に跪き、叩頭した。

 さようなら、白夜。

 儀式は終わった。これより世に若葉はもういない。

 ただローサンダンジュがいるのみ。
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