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第3話

作者: 白団子
 この時、白夜はすでに僧衣を脱ぎ捨て、黒いスーツを身につけて玲奈の隣に立っていた。その目元には溺愛の笑みが浮かんでいる。

 まさに、「彼女がはしゃぎ、彼が笑う」という言葉通りの光景だ。

 他ならぬ若葉でさえ、彼ら二人が今にも結婚式を挙げるカップルだと感じた。

 そして若葉は……。彼女は全く重要ではなかった。

「若葉お姉さん、来てくれたの?」玲奈は若葉に気づくと、少し照れたように舌を出した。「ごめんなさい、若葉お姉さん。二人のウェディングドレスを見たことがなくて、初めて見てすごく綺麗だと思ったら、思わず試着しちゃったの」

 うるうるした大きな瞳を瞬かせ、目元には不安が滲んでいた。「……怒ってない?」

 若葉は笑った。「もちろん怒ってないわ。もし気に入ったなら、このウェディングドレスはあなたにあげる」

 「また馬鹿なことを言うな」白夜は彼女を睨んだ。「これも冗談で済む話か?」

 若葉は目を上げて白夜を見た。冗談なんかじゃないと、彼に伝えたかった。彼と玲奈が望むなら、ウェディングドレスだけじゃない。六日後の結婚式だって、彼らに譲ることができる、と。

 しかし白夜の顔色はひどく、若葉は彼を怒らせたくなかったので、何も言わずに堪え忍んだ。

 「全部私のせいだわ。ウェディングドレスを勝手に試着するべきじゃなかった」玲奈は申し訳なさそうに言った。「若葉お姉さん、怒らないで。今すぐ脱いで返すから」

 そう言うと、裾を上げて試着室に入っていった。

 「そこまで高圧的になる必要があるのか?」白夜の冷たい視線が突き刺さる。彼女を見るその目は、まるで無慈悲な仏が苦海にいる人間を裁いているようだった。

 若葉は疲れ果てて目を閉じた。本来なら身を引こうとしたのに、高圧的だと受け取られてしまった。

 愛されない者は、何をしても間違いなのだ。

 どうでもいい。若葉はもう何も説明したくなかった。どうせ六日後には、仏門に入るのだから。

 仏門に入った者にとって、喜びも悲しみも、もはやない。全ては空である。何を説明する必要があるだろうか。

 すぐに玲奈がウェディングドレスを着替えて出てきた。「高圧的」に見えないよう、若葉はもう何も言わず、直接試着室に入り、玲奈が脱いだばかりのウェディングドレスを試着しに行った。

 だが、ウェディングドレスはワンサイズ大きかった。

 彼女は玲奈より背が高く、しかし玲奈よりずっと痩せていた。ウェディングドレスは玲奈にはぴったりだったが、彼女が着ると上半身の丈が足りず、両脇も広すぎる……。どう着てもしっくりこなかった。

 若葉は微笑み続けた。サイズが合わないのが普通だ。何しろ白夜が娶りたい相手は、元々彼女ではなかったのだから。

 だから、彼がサイズを間違え、図らずもデザイナーに玲奈のサイズで作らせてしまったのも、全くもっともな話だ、そうではないか?

 若葉はウェディングドレスを脱ぎ、自分の服に着替えて出てきた。

 「若葉お姉さん、どうしてウェディングドレスを着ないで出てきたの?」玲奈は眉をひそめ、恐る恐る尋ねた。「……まだ私に怒ってる?」

 「いいえ」若葉は微笑んだ。「ウェディングドレスは試着したわ。とてもよく似合っていた」

 「それじゃあ、どうして……」

 玲奈が話し終えるのを待たず、若葉は彼女の言葉を遮った。「結婚前に新郎が新婦のウェディングドレス姿を見ると、縁起が悪いという言い伝えがあるからよ」

 「だから、サイズが合ってればそれでいいの。あえて着て見せることはしないわ」

 玲奈はそれを信じ、はっとしたように頷いた。「なるほどね」

 一方、白夜は冷たい視線で若葉を深く見た。彼は無表情で、若葉も彼の喜怒哀楽を読み取ることができなかった。

 訳もそうか。誰が仏の心を読み解けるだろうか?

 ウェディングドレスの試着を終えて帰宅した後、若葉は住職から贈られた経典を取り出し、書斎に座って真剣に研読し始めた。

 彼女の書斎には経文が所狭しと並べられており、そのほとんどが各地の言語で書かれ、中には値千金のきこうぼんさえあった。

 当初、彼女がこれらを集めたのは、ただ白夜の機嫌を取るためだった。彼の内面を理解し、彼との共通の話題を見つけ、さらには魂の共鳴を抱くことを望んだのだ。

 だが白夜はいつも彼女が不誠実だと言い、彼女の行動は自分の信仰を冒涜していると叱りつけた。

 若葉は納得いかなかった。そして、それまで以上に恐ろしいほどの粘り強さで仏法を深く研究し始めた。徐々に、彼女は本当に仏法を愛するようになり、経文を読み解くたびに、傷だらけになった心が平穏と救済を得るのを感じた。

 住職にダンマ女神になることを承諾したのは、完全に白夜を忘れるためだけではなかった。それ以上に、仏法の中に彼女の魂の安住の地があると信じていたからだ。

 経典を研読しているうち、無我の境地に達していたのかもしれない。若葉は、白夜が自分の書斎に入ってきたことに全く気づかなかった。

 彼女が無我夢中で見つめていると、手元の経文が突然誰かに引き抜かれた。

 「こんなものを見て、何をしている?」白夜は彼女を見下ろすように視線を向け、その目は相変わらず冷たかった。「忠告したはずだ。六根清浄ならず、七情を捨てきれぬ者は、仏門に入るべからず、と」

 「お前はそもそもこの俗世を捨て去ることができないくせに、一体なぜ私に見せかけをする必要がある?」

 若葉は下唇を噛み締めた。彼と衝突したくはなかったが、意地になって顔を上げた。「じゃあ、あなたはどうなの?あなたはこの俗世を捨てられるの?」

 玲奈を捨てられるの?もし捨てられるなら、還俗なんてしなかったはずよ!
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