そんな日々の中。アリアが修復した魔導具の一つが、領地で実際に大きな成果を上げた。 それは古代の文献にあった天候予測の記述を元に、アリアが改良を加えた「天候観測儀」だった。数週間先までの詳細な天候を高確率で予測できるこの観測儀は、特に農業地域で絶大な効果を発揮した。農民たちは事前に嵐や干ばつに備えることができ、作物の被害を最小限に抑えられるようになったのである。「公爵様! 今年は観測儀のおかげで、例年の倍以上の収穫が見込めそうです。これも全て、公爵様が連れてきてくださった天才魔導具師様のおかげです!」 領地の代官が、興奮した面持ちでフリードに報告してくる。その噂はすぐに広まり、領民たちはまだ見ぬ「天才魔導具師」への感謝と称賛の声を口にするようになった。 アリアはその報告をフリードから聞いた。自分の技術が実際に人々の生活を豊かにし、笑顔を生み出していることを知った。それは、どんな称賛の言葉よりも彼女の心を温かく満たして、大きな自信を与えてくれた。(私の力が……誰かの役に立っている……) その実感はアリアの表情を以前とは比べ物にならないほど明るく、生き生きとしたものに変えていった。彼女はもう、俯いてばかりいたかつての地味な令嬢ではなかった。 そんなある日、フリードが執務室で他国からの報告書に目を通している時のことである。書類を読み進める彼の眉間に深いしわが刻まれた。「……これは、またか」 側近の老臣、ゲルハルトが心配そうに声をかける。「閣下、何か良くない知らせでございますか?」「ああ。アリア嬢の故国アストレア王国で、また大規模な魔導インフラの不調があったらしい。今回は王都の水道管理システムが半日以上麻痺したとか。原因は不明、復旧にもかなりの時間を要したようだ」 フリードはため息をついた。 アストレア王国ではここ数ヶ月、原因不明の魔導具トラブルが頻発している。生活に密着したものから国の防衛に関わるものまで多岐にわたって、国内に混乱と不安をもたらし始めていた。(アリア嬢が国を追われ
Huling Na-update : 2025-06-07 Magbasa pa