言いにくそうにしているルクス様を見つめて、しばらく待つ。彼はやっと目を上げた。「きみのことを言われたせいで、カッとなってしまった。……何が再婚しろだ! 勝手なことばかり言う。クレアは俺の妻だというのに……」「――ルクス様?」 改めて見ると、ルクス様の顔は真っ赤だった。「ごめん、突き放したのは俺だというのに。結婚してこの数ヶ月、きみの努力をずっと見てきた。殺風景だった屋敷が明るくなって、寂しかった食事も一人ではなくなった。少しずつ心が温かくなっていくのを自覚していたよ。けど、なかなか認められなかった……」 食事に毒を混ぜた叔母と侍女。それに無遠慮に言い寄ってきた令嬢たち。 彼女らのせいで女性不信になってしまったのは、リスのときに話を聞いてよく理解していた。 だから私は、彼が心を開いてくれるのを気長に待つつもりだったんだ。「けれどさきほど、叔父たちがきみのことまで言い出したとき。とても許せなかった。今はまだ万全な状態じゃないと分かっていても、自分を抑えられなかった。おかげでクレアに心配させてしまったね……」「いいんですよ」 私は立ち上がって、真っ赤なままうつむいている彼の横に立つ。 少し悩んだ後、そっと肩に手を置いてみた。 すると彼は振り向いて――私の手を取ってくれた。「ありがとう、クレア。きみのおかげで勇気が出たよ。叔父の不正を暴いて公爵家の安定を取り戻す。……力を貸してくれるだろうか?」「はい、もちろん!」 ルクス様も席を立って、私に正面から向き合う。「夫としてパートナーとして、きみに隠し事はしたくない。今までのこと、それに当家を取り巻く状況の全てを話そう」 隠し事。リスの姿がちらりと頭をよぎって、罪悪感の痛みを感じた。「執務室まで来てくれ。資料を見せたい」 執務室に行って、たくさんの資料を見ながら話し合いを進める。 ルクス様の言葉に嘘は
Last Updated : 2025-07-06 Read more