大嫌いな公爵閣下との婚約を解消するつもりだったのですが、何故かペットにされています

大嫌いな公爵閣下との婚約を解消するつもりだったのですが、何故かペットにされています

last update최신 업데이트 : 2025-06-10
에:  灰猫さんきち연재 중
언어: Japanese
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伯爵令嬢クレアに縁談が持ち上がった。お相手はルクス・ミレトス公爵、恋人を取っ替え引っ替え、女を泣かせてばかりと噂の貴公子。政略結婚の覚悟はあれどせめて誠実な相手と結ばれたい。クレアは婚約解消を目指して公爵家に潜入する。相手の弱みを握って脅してでも解消してやるつもりだった。彼女の武器はリスに変身する秘密の魔法である。ところがリスの姿で見た公爵の素顔は、噂とは全く違うもので――?

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1화

01話 冷たい春

「俺が今後、きみを愛することはない」

 初夜の寝室で、私の夫となったルクス・ミレトス公爵は言った。

 明かりの少ない室内で、彼の綺麗な金の髪と深緑の瞳が鈍く光っている。

「この結婚は、政治バランスを重んじただけの政略結婚。必要なのは利害と縁故。愛や情ではない」

 本来であればとても冷酷な宣言だと思う。

 けれど私は答える。微笑みさえ浮かべて。

「ええ、分かっております。どうぞ、貴方のお心のままに」

 どうしてこんなことになったのか。

 夫が去った寝室で一人、私は数ヶ月前、まだ冬だった頃の出来事を思い出していた――

 ミレトス公爵との婚約が決まった。

 そう告げられたときの私の気持ちは「冗談じゃない!」だった。

 私は伯爵家の次女クレア。十七歳。両親から冷遇されている……というほどではないが、あまり手もお金もかけられずに育った。

 だから私はどこの家に嫁いでも生きていけるように、領地経営の勉強をがんばってきた。華やかな社交の場は誰もがやりたがるが、地味で苦労の多い領地の運営は嫌う奥様や令嬢が多い。

 その点に目をつけて、自分の価値を高めるために努力してきたつもりだ。

「ミレトス公爵のどこが不満なんだい。王家との血縁も濃い高貴なお方で、公爵位にふさわしい財産の持ち主でもある。年齢も十九歳と、お前と近い。伯爵家の我が家にとってこの上ない良縁だろう」

 私の表情を見て父が言う。私は言い返した。

「不満ですとも。公爵といえば、女たらしで有名な人ではないですか。いつも違うご婦人を侍らせて、泣かせた人数は山ほどです。そりゃあ私は、どこに嫁いでもやっていけるように覚悟していました。でもそれは、夫となる人と信頼を築けての話です! 誠実さのかけらもない人とパートナーになるなんて、考えられない!」

 私はいとこのレナの話を思い出した。彼女も公爵に遊ばれて捨てられた女性の一人。

『甘い言葉をささやくばかりで、何も責任は取ってくださらないのよ!』と泣いていたっけ。

 レナと私はそんなに仲がいいわけじゃないが、その話を聞いたときは心から同情したものだ。

 まだある。

 私が夜会に出たとき、ミレトス公爵の姿を何度か見かけた。するとそのたびに違う女性を連れていたのだ。

 表面上は丁重に扱っているように見えたが、実際はどうだ。アクセサリーのように女性を取っ替え引っ替えなんて、とんでもない。

 その後、私と両親は実に不毛な言い争いをして、決着がつかないまま終わってしまった。

 このままでは間違いなく婚約が進んでしまうだろう。いち令嬢にすぎない私の意見なんて、政治も絡む政略結婚の前に無力なんだ。

「絶対に、嫌だ。私は私を大事にしてくれる人と結婚するんだ」

 自室に戻って決意を新たにする。

 そうだ、勉強してきたのはなんのため? 私が幸せになるため。パートナーとなる人と力を合わせて暮らしていくためだ。

 貴族令嬢の立場で恋愛結婚は無理だと分かっている。

 政略結婚で構わない。信頼も愛情も時間をかけて育てればいいのだから。

 でもミレトス公爵はいくらなんでも条件が悪すぎる!

 結婚すれば態度が改まると信じるには、私は少々疑い深かった。

 お金とか地位とかそんなものより、私は暖かい幸せがほしいんだ。

 その願いが叶えられないなら、結婚になんの意味があるのか。

 私は鏡台の引き出しを開けて、小さな石のペンダントを取り出した。私の瞳の色と同じ、紫の宝石の飾り。

 これは魔法の触媒。我が伯爵家秘伝の魔法。

 ペンダントを握りしめて、私はこっそり屋敷を出た。平民が着るような目立たない服に着替えるのも忘れない。

 そうして向かうのは、ミレトス公爵の屋敷。

 何としてでもこの婚約を止めてやる。……そう、相手の秘密を握って脅してでも!

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01話 冷たい春
「俺が今後、きみを愛することはない」 初夜の寝室で、私の夫となったルクス・ミレトス公爵は言った。 明かりの少ない室内で、彼の綺麗な金の髪と深緑の瞳が鈍く光っている。「この結婚は、政治バランスを重んじただけの政略結婚。必要なのは利害と縁故。愛や情ではない」 本来であればとても冷酷な宣言だと思う。 けれど私は答える。微笑みさえ浮かべて。「ええ、分かっております。どうぞ、貴方のお心のままに」 どうしてこんなことになったのか。 夫が去った寝室で一人、私は数ヶ月前、まだ冬だった頃の出来事を思い出していた―― ミレトス公爵との婚約が決まった。 そう告げられたときの私の気持ちは「冗談じゃない!」だった。 私は伯爵家の次女クレア。十七歳。両親から冷遇されている……というほどではないが、あまり手もお金もかけられずに育った。 だから私はどこの家に嫁いでも生きていけるように、領地経営の勉強をがんばってきた。華やかな社交の場は誰もがやりたがるが、地味で苦労の多い領地の運営は嫌う奥様や令嬢が多い。 その点に目をつけて、自分の価値を高めるために努力してきたつもりだ。「ミレトス公爵のどこが不満なんだい。王家との血縁も濃い高貴なお方で、公爵位にふさわしい財産の持ち主でもある。年齢も十九歳と、お前と近い。伯爵家の我が家にとってこの上ない良縁だろう」 私の表情を見て父が言う。私は言い返した。「不満ですとも。公爵といえば、女たらしで有名な人ではないですか。いつも違うご婦人を侍らせて、泣かせた人数は山ほどです。そりゃあ私は、どこに嫁いでもやっていけるように覚悟していました。でもそれは、夫となる人と信頼を築けての話です! 誠実さのかけらもない人とパートナーになるなんて、考えられない!」 私はいとこのレナの話を思い出した。彼女も公爵に遊ばれて捨てられた女性の一人。『甘い言葉をささやくばかりで、何も責任は取ってくださらないのよ!』と泣いていたっけ。 レナと私はそんなに仲がいいわけじゃないが、その話を聞いたときは心から同情したものだ。 まだある。 私が夜会に出たとき、ミレトス公爵の姿を何度か見かけた。するとそのたびに違う女性を連れていたのだ。 表面上は丁重に扱っているように見えたが、実際はどうだ。アクセサリーのように女性を取っ替え引っ替えなんて、とんでもない。 その
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02話 初潜入
 公爵家の広い敷地を前にして、私は横合いの路地に入った。ペンダントを首にかけ、誰もいないのを確認してから魔法を発動させる。 自分の体が一瞬だけ発光して、次に視点がぐんと変わる。 私は小さなリスに変身していた。 これこそが秘伝の魔法だ。貴族家はたいてい一つは特別な魔法を持っている。 我が伯爵家のそれは動物、特に小動物への変身を得意とする。 古い時代はスパイとして活躍したらしい。今となってはあまり使い道がなくて、家族の中でも真面目に練習していたのは私くらいだ。 魔法を使えば服は消えて、元の人間の姿に戻るときちんと服を着ている。いちいち裸になったりしないのである。「キュゥ」 リスになった私は塀を見上げた。人間の目で見るよりもずっと高い塀は、だが、小さいでこぼこがあってリスならば登れる。 私は爪を引っ掛けて壁をするすると登った。ふさふさの尻尾はバランスを取るのに便利である。 冬の木枯らしが吹いたが、リスの毛皮は立派なのだ。寒くても平気。 すぐに塀の上に出る。 さすがに公爵家の敷地は広く、お屋敷はずいぶん向こうに見えた。 ただ冬枯れしているとはいえ、庭がやや荒れているようにも思う。公爵は草花に興味のない人なのだろうか。……まあ、それは今気にするところじゃない。「ピャー!」 気合の声ひとつ。私は塀から飛び降りて、屋敷に向かって走り出した。 開いている窓を見つけて、私は公爵家の屋敷に潜り込んだ。 窓の先は厨房である。今は昼食が終わった後で、夕食の準備にはまだ早い。誰もいなかったので先に進んだ。 廊下では侍女たちがホウキや雑巾で掃除をしていた。 柱の陰に隠れて様子をうかがう。「公爵閣下はいつ頃お戻りになるかしら」 その中の一人、比較的若い侍女が言った。年配の侍女が答える。「夕方には戻られるはずですよ。それまでにしっかり掃除を終わらせるように」「はい。……無事に戻られますよね?」「当たり前でしょう」「でも、あの。閣下は、その……複雑な立場でいらっしゃるから」 うん? どういう意味だろう。私は耳をそばだてた。「いつも『あのお方』が邪魔ばかりして。本当はみなで若い閣下を支えるはずなのに」「……あなた。めったなことを言うものではありません」 不満そうな若い侍女に、年配の侍女が釘を刺す口調で言った。「我々使用人が公爵家の方々に口を
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03話 やっかいな身内
「それに『あのお方』がな……」 片方の侍従の苦々しい声に、もう一人が同調して言った。「若様の叔父上か」「ああ。あのお方は、若様の父上と――先代様と仲が悪かった。先代様が公爵位を継ぐ際もひと悶着あったそうだ」「じゃあ、立場の弱い若様の代になって、また欲をかきはじめたんだな」「そうだろうよ。まったく|虫酸《むしず》が走る」 ふむ……。ミレトス公爵家は身内で争いが起きているのか。 彼らの言い方を聞くに、叔父上とやらは若い公爵にいろいろと嫌がらせをしているようだ。 こういった話は貴族の中ではそんなに珍しいことじゃない。ひどいとは思うけど、事実なのだ。 私は少しだけ公爵に同情した。 父である先代公爵は病気で急逝してしまったと聞いている。まだ亡くなる年齢ではなかった。急なことだったので、引き継ぎの準備もあまり進んでいなかったのだろう。 父親の死を悼む暇もなく、お家騒動になってしまったとは。 侍従たちはそろってため息をついた後、黙って書類整理を再開した。 しばらく様子を見ていたが、これ以上は話が聞けそうにない。 私はまたこっそりと移動を始めた。あちらこちらと屋敷の中を動き回ってみる。 けれど今まで以上の収穫はなかった。 時間もそれなりにかかってしまったし、そろそろ戻る頃合いだろう。 リスの姿で廊下を駆け抜けながら、私は仕入れた情報を整理する。 公爵家の実情は、表に知られているよりもだいぶ悪い。むしろ上手に隠したものだと思う。 使用人たちの態度で、彼らは公爵家に忠誠が厚いと感じられた。みな、叔父とやらを嫌って若い公爵を案じていた。 今の若公爵は女たらしの遊び人だが、きっと先代公爵が優れた人だったのだろう。そんなふうに考える。(それにしても、我が伯爵家の情報収集能力の低さはどうなの) 私は内心でため息をついた。 両親はミレトス公爵を優良物件と信じ切っている。遊び人の件はともかく、身内のいざこざにまったく気づいていない。 使用人たちが一丸となって情報を守っているのかもしれない。 だとしても、王国の建国期に諜報活動で名を馳せた伯爵家の名が泣いているよ。 もっとも、現役バリバリのスパイの家系だったら、それはそれで嫌だけど。(実家が属する派閥の長――侯爵家令嬢じゃなくて、私に縁談が来た理由。分かった気がする) 我が伯爵家は派閥の中では
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04話 リス危機一髪
 小さなリスの私に、空から黒い影が襲いかかる。「カァー!」 窓から飛び出した私に向かって、カラスが飛んできた。カラスはリスよりずっと大きい。捕まったら大変だ。 私は必死に走った。カラスの羽音が迫ってくる。 くちばしで後足を突っつかれた。痛い! それでも走る。 庭木の根本に逃げ込んだが、カラスは諦めなかった。近くを旋回して飛んで、鋭い目を向けてくる。 カラスは大きく羽ばたくと、急降下してきた。 まずい、逃げ切れない。人間の姿に戻るしかない。こんな庭の真ん中で人間に戻ったら不審者として捕まるだろう。それでもカラスに食べられるよりはマシだ! そう覚悟したとき。 バサバサと羽音が乱れた。 冬枯れの庭木の枝がにゅっと伸びてきて、私を守るように広がっていく。 なにこれ! 黒い羽が何枚も目の前に舞う。カラスが慌てたように逃げていく。 見上げれば、鞘におさめたままの剣を持った人。金の髪に深緑の目の、とてもきれいな顔立ちの青年だった。 両耳につけた耳飾りは、彼の瞳と同じ緑の石。小さいけれど不思議な煌めきを放つ宝石。「リス? カラスに追われていたのか? ……怪我をしているな」 私は逃げようとしたけれど、後足が痛くて動けなかった。 大きな手が私をすくい上げる。そんな彼に近づいてくる人がいた。服装からしてこの屋敷の使用人、執事だろう。「閣下、どうしました」「リスがカラスに追われていた。怪我をしている。手当してやらないと」「ではわたくしが」「いや、いい。俺がやろう。治癒魔法をたまに使わないと、腕が鈍ってしまう」 彼らはそんな話をしながら歩いていく。 振り返ると、不自然に伸びた庭木の枝がするすると戻っていくところだった。何かの魔法だろうか……。 私を抱えた男たちは、屋敷の中へと入った。 ――閣下、ということはこの人がミレトス公爵か。 出くわすのは予想外だったが、いい機会だ。この目でよく見ておこう。 公爵は執事を連れて執務室に入った。 大きな執務机の上にそっと置かれた私は、油断なく周囲を見回す。この部屋にはまだ入ったことがなかった。よく調べてやらないと。「大人しくしていて」 存外に優しい声音で言われてトキッとした。 怪我した後足に触れた指先が、少しの熱を帯びる。みるみるうちに痛みが引いて、傷口がふさがった。小さい怪我とはいえ、見事な
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