私たちが結婚して3周年を迎えた、その日のことだった。夫への3年間の片思いを公言してはばからない桑島優子(クワシマ ユウコ)が、SNSに一枚の写真を投稿した。【世界がこれほどまでに私を喜ばせてくれるなんて、あなたが現れるまで知らなかった】添えられたライブフォト。その中で彼女は一人の男性の胸に寄りかかり、男の手が彼女の手に重ねられ、その心臓の上に置かれていた。男の顔は映っていない。けれど、再生された音声は、紛れもなく真田俊(サナダ シュン)のものだった。【ずっと、そばにいてくれたらいいのに】 【ああ。ずっとそばにいるよ】私は、たった一言だけコメントした。【どうぞ、お幸せに】と。間もなく、優子から電話が入り、猫なで声が言い訳を紡ぎ始めた。「雨宮先輩、俊先輩が記念日をすっぽかしたのは、決してわざとじゃないんです。だから、どうか怒らないでください。ええ、すべて私が悪いんです。罵るなら、この私を罵ってください」私が一言も返せずにいると、俊がスマホをひったくり、私を怒鳴りつけた。「雨宮美桜(アマミヤ ミオウ)!なぜそんなに冷血で横暴なんだ。優子がどれだけ物分かりのいい子か、分からないのか。ここで無茶を言うな!」以前の私なら、すぐにその場へ乗り込んで、彼が誰の所有物であるかを満天下に知らしめただろう。だが、今の私は、心の底からこの二人の幸せを祈っていた。さっさと結ばれて、永遠に離れないでほしい。なにせ私はもう、この場所から逃げ出すのだったから。……俊が帰宅したとき、私は庭でパーティーの片付けをしていた。3周年の記念日に、彼の教え子たちが早く家に来て、私たちのためにパーティーを開いてくれていたのだ。それなのに、主役であるはずの彼は、深夜3時になってようやく姿を現した。私は、傍らで罪悪感を滲ませ、気まずそうに佇む俊を意にも介さず、黙々と後片付けを続けた。だが、その沈黙の態度が、どういうわけか彼を苛立たせたらしい。「俺にそんなツンケンした態度を取るな。たかが記念日と人の命、どっちが重要なんだ。お前は昔から苦労知らずで、もう30にもなって、まだそんなに度量が小さいのか」「俊、私……」か細い声が漏れた。自分でも気づかぬほどの震えが、声に混じった。もう疲れた。体だけじゃなく、心もだ。その時、手の中に
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