私はそっと携帯を置き、通話を終えた。十五歳の頃、初めて恋という感情を知った。それからというもの、気持ちは抑えきれなくなっていった。私は意地になって、彼のことを「お兄ちゃん」と呼ばなくなった。それから、あっという間に何年も過ぎ――彼は結局、最初の位置へと戻っていった。私は、彼を恨んでもいないし、責める気持ちもなかった。長年にわたる日々の積み重ねは、私に、心から彼の幸せを願わせるに至っていた。私は基成の父親の電話番号を押し、発信した。基成の母親の近況をたずね、挨拶を済ませた後――ようやくあの指輪の話題を、慎重に切り出した。「おじさん、ずっとご連絡できず申し訳ありません。最近は色々と考えることがあり、ようやく色んなことが分かるようになりました。基成お兄さんには、すでにご自身の選んだ相手がいます。だから、過去のことは……もう手放そうと思います」受話器の向こうは、長い沈黙に包まれた。「清枝……君のことは、おばさんも私も、ずっと実の娘のように思ってきたんだよ。基成は頑固な子でね。ちゃんと導いてやれなかったのは私たちの責任だ。辛い思いをさせてしまったな」懐かしいその声に、私は堪えていた涙が止まらなくなった。けれどそれは、彼らの真心と温かさに対する惜別の涙だった。「おじさん、おばさんのお気持ちはよく分かっています。でも……感情は、無理にどうこうできるものじゃありません。私はもう気持ちの整理がつきました。だから、おじさんも悲しまないでください。」「分かった。その指輪は、基成に返すよう言っておくよ。数日後に、私たちも結婚式で江松へ行く予定だから、そのとき直接渡そう」私は静かに礼を言い、電話を切った。宅配業者がちょうど到着した。梱包しておいた贈り物の数々が、次々とトラックに積まれていく。まもなく、それらは彼の手元へ戻ることになる。数日後には、墨谷おじさんたちも江松へ来る。そのとき、あの指輪も返ってくるだろう。私の長い片想い――そのすべてが、ようやく終わるのだ。そしてこれからは、それぞれ別々の人生を歩んでいく。……ある夜、基成はビジネスのパーティーで酔いつぶれていた。ふらつきながら洗面所を出ると、瑠奈が電話をしている声が聞こえた。「やっ
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