「そういえば、パーシヴァル殿下とのことは本当なのか?」 ちょうどティーセットが運ばれてきたタイミングでライナスが質問を投げかける。ベルティアが「本当なのかと申しますと……?」と首を捻ると、ライナスはお茶を一口飲んで苦い顔をした。もちろん紅茶が苦かったわけではなく、分かっていないベルティアに対してそんな顔をしたのだ。「あー…言い方は良くないけど、ベルティアが兄上から乗り換えた、みたいな話が」「ライナス殿下は信じている、ということですね」「違う違う、違うって! 兄上を散々振ってるベルティアが隣国の王太子とって、あり得ないと思ってる。大方、兄上を諦めさせるための恋人のフリとかだろ?」「殿下とはまともに会話ができるので嬉しいです、本当に」「はは……」 ベルティアも紅茶を一口こくりと嚥下する。果実とバニラの甘さが際立つフレーバーティーで、すっきりと飲みやすい紅茶だった。紅茶と一緒に出されたパウンドケーキもしっとりとした味わいで文句なしに美味しい。さすが王族御用達の店と言ったところだろうか。「それで、その成果は出てるのか? 出てないように思えるけど」「……婚約の書状が届いたんですから、成果は出ていないと言っていいかと」「ははっ、そうだよな。兄上は本当にしつこいから」「俺には何も魅力はないのに、どうしてこうも……いっそのこと俺が婚約でもしたら諦めがつきますかね」「いやぁ、どうだろう。兄上は多分、相手を殺すかもな」「……意外と想像できるのでやめてください」 前世のベルティアがゲームをプレイしているときはエンディングを見るまで、ノアや他の攻略対象者たちが闇落ちする片鱗は見えなかった。でも今の時点で思うのは、全員何かしらの事情があってベルティアに惹かれ、近づいているということに間違いはない。 今のところライナスだけはその片鱗を見せていないが、彼もどうせベルティアと結ばれたら狂うムーングレイ王家の一人。
Last Updated : 2025-07-08 Read more