警備員に腕をつかまれたまま、美月は必死で叫んだ。「早くこの人を止めて!手を離して!」晴佳はため息混じりに首を振った。「ねえ、あなた耳悪いの?止められないって言ったよね」「……あんた!」「ほら、どう?まだ言いたいことある?」「……ない……」「え?聞こえないな、もっと大きな声で」「言わないってば!もう言わない!だから早く離させてよ!」晴佳は、満足そうに笑った。「最初からそうすればよかったのに」そう言って警備員に顎で合図する。警備員はすぐさま手を離し、背筋を正して後ろへ下がった。美月は痛みと怒りで涙をぽろぽろ流しながら、父の胸に飛び込んだ。「お父さん……姉さんが私たちを殺す気よ!あれ絶対わざとよ、私たちに恥かかせようとしてるの!」忠弘は成す術もなく、美月をなだめるしかなかった。「美月……まあ、お前もお姉さんの鼻先を指さして怒鳴ったのは、たしかにちょっと失礼だったよな。お姉さんだってお姉さんなんだから、人として大事なことを教えてくれるのも、結局はお前のためだよ」いけしゃあしゃあと、よくもまあ嘘が出るもんだ。美月はさすがに耐えられなくなった。「お父さんっ!!」忠弘は咳払いしてごまかすように顔をそらし、今度は媚びるような顔で晴佳を見た。「ねえ、晴佳……さっきはどこまで話したっけ?」晴佳は一瞬も笑わず、冷たく返した。「お父さんと話してたっけ?」忠弘はご機嫌取りの笑みを浮かべる。「いやいや、そうだよね、全部俺が一人でしゃべってただけだよな。……で、俺が言いたかったのはさ、お前の母さんが残した金額、あんなに多いのに、お前一人で使い切れるわけないだろ?それに、こんな広い家に一人じゃ寂しいだろうし、俺たち家族が一緒にいてやった方が……」晴佳はあまりの図々しさに思わず笑ってしまった。「心配性にもほどがあるでしょ。余計な心配なんかしなくていいの。金が自分で支配するから、余るなら寄付するだけ。私の自由でしょ?それと、来月から……あ、違う、今月からだよ、お父さんの口座には一円も振り込まれないから」その一言で、忠弘は完全に固まった。彼はちょうど先月、六千万円のギャンブル借金を作り、今月の振込をあてにしていた。それなのに、振り込まれないって。これから一切、金
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