「やっぱり夢遊病の線が強い……か」 廊下でシュリンさんから聞いたことをメモ帳にまとめる。まだ無実を証明する証拠としては弱いが、それでも真っさらな状態からはかなりマシにはなった。(次はミラモから話を聞いてみるか……) 衛兵によればミラモは被害者からシュリンさんこそ辻斬りなのだという話をされたそうだ。そのことが妙に引っかかる。僕は従者に彼が居る部屋を問い、そこに向かう。「ロンドです」「入っていいぞ」「すみません少し聞きたいことがありまして……」「何でも答えるよ……結果は変わらないと思うけど」 ミラモは昨日とは違いどこか人を拒絶するような態度で揶揄うような素振りも見せない。心に余裕がなく、まるで前回のあのパン屋の旦那さんみたいだ。「じゃあまずは被害者の証言について……殺される直前に彼女はシュリンさんこそが辻斬りであると示したのですよね?」「そうだよ……」 ミラモは深く沈んだ声で返す。それだけシュリンさんのことを友人として気に入っており、裏切られたと思い反動で精神的にダメージを受けている。「被害者は何と言っていたのですか? できるだけ正確にお願いします」 どんな些細なことが証拠やそれを裏付けるものになるか分からない。可能な限り情報は欲しい。「えっと確か……アイツが言うには前に勤めていた家で惨殺事件が起きて、その犯人も辻斬りに違いないって話だった」「それがどうシュリンさんが辻斬りだという事実に繋がってくるのですか?」「その事件の直前にシュリンの父親が"お前が辻斬りだなんてなんてことしてくれたんだ!!"みたいな話をしていたって言ってた」「じゃあシュリンさんの顔を見て驚いていたのも……?」「多分そうだと思う。すごい動揺してて……置き手紙でも殺されるかもしれないからここを出て逃げるって……でも……」「逃げ出そうとしたタイミングで殺された……」 事件の輪郭が見えてきた。辻斬りは理由は不明だが、おおよそ逃げる姿を見られたから等の理由で被害者を襲ったのだろう。そして運悪くその際にシュリンさんとの一悶着があり、被害者自身も彼女こそが辻斬りだと勘違いしていた。 シュリンさんを辻斬りでないと仮定すると大体このような筋書きとなる。希望的な考えと一蹴されるかもしれないが不可能ではないし矛盾もない。その点に賭けるしかない。「あっ、そういえばシュリンさん
Last Updated : 2025-08-19 Read more