Semua Bab 隣の彼 じれったい近距離両片思いは最愛になる、はず。: Bab 71 - Bab 80

92 Bab

お仕事中です

 エレベーター左上の電光掲示板。 久我今日子、田辺五郎、藤野建のランプはグレーで消えている。彼らはこの議員控室には《いない》。7階一番奥、自主党の議員控室は鍵がかかり、蛍光灯も消されたまま。小鳥は物音を立てないよう、Facebookの更新と自主党金沢市議団のインスタグラム用の画像を選んでいた。(この写真もいいけど、ポスターが写り込んでるからダメ) 最近、田辺議員と藤野議員の政治活動が目に見えて増えた。毎朝の街頭演説、公民館での市政報告会を精力的にこなし、午後3時には議員控室にこもる。久我今日子が「9月定例議会の爆弾になる」と言い切る資料を、三議員で派閥を超えてまとめている。当然、近江隆之介も久我の第一秘書としてその作業に没頭している。(こうしてる時の近江さん、冷酷って言われるだけある。別人だ) トランクスを頭にかぶってふざけていた男や、同じ部屋に住むあの男と同一人物とは思えない。土曜の夜の激しいキスを思い出し、小鳥の手元が狂い、マウスを机の下に落とした。「うわ、わわわ!」「小鳥ちゃん、大丈夫?」「は、はい!」   昨夜は《何もなかった》。小鳥のセミダブルベッドで一緒に寝たが、近江隆之介のいびきと互いの体温に耐えきれず、小鳥は隣の無骨なベッドに移った。(この匂い)近江隆之介の匂いをタオルケット越しに感じながら、小鳥は頭からかぶって寝た。 そんな熱い夜を思い出し、慌てる小鳥をよそに、近江隆之介は淡々と仕事を進める。藤野議員が電卓を叩くと、近江隆之介はピンクの付箋を貼り替え、シャープペンシルで数字を書き込む。(やっぱり別人) 小鳥の様子をチラチラ見ていた久我今日子が、腕を組んだ。キーンコーンカーンコーン。 終業のチャイムが響く。近江隆之介は書類を茶封筒にまとめ、軽く封をした。「高梨さん、これ預かって下さい」「は、はい」   スチールラックに片付け、施錠してほしいと手渡された。聞き慣れない敬語と真顔の近江隆之介に戸惑い、小鳥は茶封筒を落とし、書類をフローリングにバラまいた。「あ、すみません!」   幸い、書類はクリップで留めてあり、散乱は最小限。小鳥は慌ててしゃがみ、必死に拾った。すると、近江隆之介も自然にしゃがみ、書類を集めるふりで小鳥の指先をキュッと握った。「・・・・・!」「どうしたの?」「え、何でもないです!」 あ 驚い
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-04
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嫉妬のち初めての喧嘩

近江隆之介の帰宅は遅かった。 リビングテーブルには、ラップをかけた白い皿に青椒肉絲。ピーマンと豚こま肉が色鮮やかだ。『どうぞ食べてください』 メモにボールペンを走らせたまではよかったが、近江隆之介が帰って明かりをつければ目が覚めるだろうと、小鳥は起きて待つことにした。すると、暇な時間がこんなときに限ってよからぬ考えを呼び込む。(ペアルックの女が、あのベッドで寝てたのか) インダストリアルなベッドを眺め、近江隆之介が見知らぬ女とそのマットレスで絡み合う姿を想像。胸のモヤモヤが一気に膨らんだ。(だって、35歳だもん。冷酷で女を取っ替え引っ替えしてたんでしょ) 庁舎で耳にした噂と今の近江隆之介があまりにも違いすぎて、ううむ、と唸る。(じゃあ、その女にもパンツかぶって見せたりしたの!?) 自分《だけ》が知る素の近江隆之介。そんなはずはない。35歳の男だ。恋人や結婚を考えた相手がいてもおかしくない。一夜限りの関係だってあるだろう。実際、自分だって近江隆之介に《お持ち帰り》された身だ。(そうだよ!健康な体には正常な性欲がある!これが普通!) そう言い聞かせても、胸のモヤモヤは募る一方。バタン。 外で車のドアが閉まる音。小鳥は飛び上がり、黒いクロックスを突っかけて玄関ドアを開け、外廊下の手すりからエントランスを覗いた。 いつの間にか雨が降っている。傘を忘れた近江隆之介がタクシーで帰ってきた。小鳥は姿見でルームウェアのシワを伸ばし、跳ねた髪を撫でつける。ガチャガチャと鍵が回る音。玄関に飛び出したい衝動を抑え、ベッドに澄ました顔で腰掛けた。「お、起きてたのか」「あ、うん。近江さんが帰ってきたら目が覚めるかと思って」「そか、すまん」   近江隆之介の手にはコンビニの白い袋。シルエットから弁当だとわかる。「あ」「お、何。なんか作ってくれた!?」「え、いや、これは…」   小鳥が慌てて白い皿を隠そうとするも、近江隆之介に腕を広げられ、ラップの青椒肉絲が「ヤァ」と顔を覗かせる。脇には『どうぞ食べてください』のメモ。「うお、マジか」 小鳥の頬に、近江隆之介がちゅっと軽いキス。「な、なななな!」「マジ感動したわ」「そ、そうですか」「弁当、明日の昼に食うわ。冷蔵庫入れといて、シャワー浴びるし」「は、はい」   近江隆之介は着替えを持って洗
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嫉妬のち初めての喧嘩②

チーン。 電子レンジで温めた青椒肉絲が湯気を上げる。小鳥は近江隆之介の前に黒い箸を置く。小鳥模様の短い箸じゃ食べにくいだろうと、百貨店で買ってきたものだ。「何、この箸、どした?」「か、買ってきました。ピーマンと豚肉の《ついで》に!」「ふぅん、ついで、ねぇ」「なんですか、その顔」「サンキュ」「いえ」 プシュ。 二人でハイボールのプルタブを開け、グビグビ飲む。だが、小鳥の胸のモヤモヤは消えない。このモヤモヤをどう晴らせばいいのか。「なんか言いたそうじゃね?」「そうですか?」「うん、そんな顔してる」 ダメだ。全身からモヤモヤが滲み出しそう。ここは直球で聞くべきか。でも、直球ってどの辺が直球なのか、微妙だ。「これ、うめぇ」「あ、味付け濃くないですか?」「んー、ちょい濃いめかな」「次は薄味にします」「すんません、正直で」「その方が助かります」 小鳥は缶を両手で持ち、チビチビ飲む。舌先にヒリヒリ。土曜の夜、激しいキスで傷がついたのかも。(は、激しすぎ)「何、もう酔った? 真っ赤だぞ」「つ、疲れたのかな」「無理すんなよ」「あ、はい」   ううむ。モヤモヤが止まらない。近江隆之介が「ごっつおさん」と手を合わせ、キッチンで皿を洗う。ハーバルミントの洗剤の香り、流れる水、背中。抱擁妖怪の気持ちが少しわかった。「うおっ、な、何!?」 気づけば、小鳥は近江隆之介の背中に顔を埋め、腕を腹に回していた。「な、何」「近江さん」「お、おう。洗い終わったから離れて」「やだ」「やだ、って。このままじゃ顔見えねぇし」   腕を振り解かれそうになり、小鳥は力を込めてぎゅっと抱きしめた。近江隆之介の手はビシャビシャ。シンクの縁に当たり、ルームウェアの裾が濡れる。ジワリと冷たい。「ちょ、冷てぇし」「近江さん」「何、500円徴収するぞ」 一呼吸。「近江さん、あのベッドで他の人としましたか」「は?」「セックス、したんですか」「あ、っと」   近江隆之介の体が強張るのが腕から伝わる。モヤモヤは少し晴れたが、今度はムカムカが顔を覗かせる。彼の喉仏がごくりと動いた。「やっぱり、してますよね」  小鳥は腕を解き、ペタペタと歩いてリビングの床にペタンと座る。フローリングを見つめる瞼。表情は見えない。「こ、小鳥」 近
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微妙な朝 隆之介

朝、目を覚ますと、隣のベッドに小鳥の姿はない。シンと静まり返った部屋。301号室と同じ間取りなのに、妙に広く、物足りない。「チェっ」 ボサボサの頭を掻きながら洗面所へ。小鳥の歯ブラシに水滴が光り、ついさっきまでここにいた痕跡。青い歯ブラシに歯磨き粉をニュルリと絞り、ガシガシ磨きながらリビングに戻る。 小鳥のベッドに触れると、まだ温かい。(うおっと)口の端から涎が垂れそうになり、慌てて洗面所に駆け戻る。 もし小鳥がいたら、「濡れちゃいます! 変なことしないでください!」なんて小言を食らっただろう。その賑やかさが、今はない。 ガランとした空虚を背に、顔を洗い、ブルブルと振る。顎に手をやる。(ひでぇ顔してんな)目の下が黒ずんで見える。姉ちゃんに見られたら、「不摂生」「自己管理できてない」と嫌味を浴びせられそう。「マジ、俺アホか」 10歳年下の恋人の言葉にムキになって、不貞腐れて寝ちまった。自分の阿呆さに気分は急降下。「余裕、なさすぎだろ」 壁の時計は6:30。 コーヒーでも淹れるかと、ヤカンで湯を沸かす。シュンシュンと湯気が上がる。振り向けば、食器棚の二段目。グリーンとオレンジのマグカップが並んでる。白い丸いフォルムに、黒いくちばしと羽根。「俺がシマエナガとか、マジありえねぇし」 苦笑いで口の端が歪む。青椒肉絲の具材を買った《ついで》に、小鳥がこの黒い箸とマグカップを選んだんだろう。店頭で悩む小鳥の姿が目に浮かぶ。(それにしても、こんな朝早くどこ行ったんだよ) マグカップを持つ手が止まった。(まさか市役所?) 近江隆之介はガスコンロの火を止め、グレーのルームウェアを脱いでドラム式洗濯機に放り込んだ。
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微妙な朝 小鳥

 カポカポと焦茶のローファーの踵を鳴らし、小鳥は沈んだ面持ちで金沢市役所の職員玄関のインターフォンを押した。眠そうな警備員の声。ガチャと鍵が開く。ネームタグを提示し、バインダーに氏名と入庁時間を記入。エレベーターはまだ動いていない。 7階までの階段を、一歩ずつゆっくり上る。 昨夜、近江隆之介が無言でベッドに滑り込んだ冷ややかな背中が頭から離れず、熟睡できなかった。今朝は隣の303号室の玄関ドアが閉まる音で目が覚めた。(顔、合わせづらいな) 物音を立てないよう身支度し、いつもより2時間早く出勤。ドアノブをそっと下ろし、ディンプルキーを静かに閉める。外廊下のザリザリした感触が、靴底越しに今の気持ちを映す。「なんであんなこと、言っちゃったんだろ」 木の質感とリネンのファブリックで統一された小鳥の部屋。壁際のアイアン調ベッドは異質だ。近江隆之介の暮らしが自己主張している気がする。過去の女性の存在がちらつき、どんな女性にどんな言葉をかけたのか、意味のない嫉妬が湧く。 あのベッドで誰かとセックスしたのかと尋ねた瞬間、近江隆之介の体が強張った。普通のことだとわかっていても、ショックだった。責めるような口調に返ってきた言葉。「お前、処女じゃねぇだろ」お互いさま。でも、そう口に出されると、心臓を鷲掴みにされ、頭を振られたような衝撃。 いっそ近江隆之介が初めてだったらよかったのに。今さら言っても仕方ない。「ふぅ」 廊下でゴミ回収のスタッフとすれ違い、軽く会釈。議員控室のドアノブに手をかけると、施錠されていない扉がギイと重く開く。やるせなさから逃れるにはちょうどいい。 給湯室の鏡には、やつれた目元が映る。(眼鏡に変えようかな)このまま開庁時間までボーッとするのももったいない。機械的にポットの蓋を開け、水道のハンドルを上げる。水が後悔のようになだれ込み、ポットから溢れ出す。「お前、溢れてんじゃん」キュッ。 背後から伸びた手がハンドルを下げ、グリーンウッドの香りが小鳥を包む。深い紺色のスーツから、白にグレーのストライプのシャツの袖口が覗く。「近江さん」「お前、起きたらいねぇし」「だって・・・」   振り返ろうとしても、近江隆之介の腕は力を緩めない。耳元で荒い息遣い。きっと自転車で桜坂を下り、鱗町の交差点を全速力で駆け抜けてきたんだろう。近い。何度こうやっ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-04
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2度目の金曜日

小鳥はランチA定食を前に、いつもの奥まった角の席に座る。地下の職員食堂は相変わらずの混雑。両手をスッと合わせて、鯖の味噌煮をほぐす。ほろほろとした身に砂糖の甘みが染み、白米を頬張った。「相席、いいですか?」「あ、はい。どうぞ」「失礼」  赤い椅子の背もたれに手が添えられ、男性が目の前に座る。(懐かしい) この席で近江隆之介と急接近した日を思い出し、小鳥はしみじみと箸を動かす。退勤時間まで一分一秒を指折り数えるなんて、想像もしていなかった。(近江さん、夕飯何食べたいかな)冷蔵庫の中を思い浮かべる。コンビニ弁当はチャーハンだったか。野菜室に玉ねぎ、ピーマン、ニンジン。冷凍庫にムキエビ。急げば米も炊ける。その間にシャワー・・・・・・・「シャワー」「はい?」「あ、いえ、何でもないです」  「シャワー」と口走り、頬が赤らむ。耳たぶが熱い。とうとう《この夜》が来る。桜の頃、泥酔して近江隆之介のベッドで始まった恋。「好きだ、一目惚れなんだよ」 あの夜、301号室のベッドで囁かれた言葉が蘇る。胸の奥がジンジン熱くなり、ドキドキ高鳴る。(最初から両思いだったんだ) 思わず口元が綻ぶ。「何か?」「あ、いえ、何でもないです」   赤面して独り言をつぶやき、ニヤニヤ。相席の相手に気まずい思いをさせたかと、味噌汁をズズッと啜り、トレーを持って立ち上がる。「お先に失礼します」「あ、はい」  今夜はあの夜のようにウイスキーで乾杯しよう。チャーハンより軽いおつまみがいいかと、足取り軽く本館エレベーターのボタンを押す。チーン。 マンションのエレベーターの扉が3階で開く。外廊下をカッポカッポとローファーで歩き、エコバッグにはチーズ、餃子の皮、生ハム、カットメロン。少し奮発した。カナカナカナ。 ひぐらしとコオロギの鳴き声。21世紀美術館の屋根の向こうに陽が沈む。(近江さん、外回りだけど何時頃かな) 金曜は議員の会合が多く、久我議員を送迎し、市役所に戻って帰宅。20時前後か。(時間は余裕、余裕)荷物を下ろし、冷蔵庫に仕舞う。チャーハンの具材を確認し、ブラウスの袖を捲って米を研ぐ。炊飯器のスイッチを入れ、炊き上がるまでにおつまみを作り、シャワー。完璧なスケジュール。 スカートを脱いでハンガーにかけていると、視界の端で何かが動く。「虫!?」 振り
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-04
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2度目の金曜日②

 炊飯器で米がぐつぐつ。蓋を開け、硬さを確認。アチアチとつまむ。少し硬め、チャーハンに最適。隣から手が伸び、米をつまむ。「なんか硬くね?」「チャーハンだからこのくらいでいいかな、って」「お、チャーハン。味濃いめで頼む」「かしこまりました」   卵を溶き、シーフードミックスをレンジで解凍。ヴイーンと庫内を覗き、餃子の皮にスティック状のチーズを乗せ、水で濡らしてクルクル巻く。「お、面白そうじゃん」「してみます?」「するする」   狭いキッチンで肩を寄せ合い、近江隆之介は器用にチーズ巻きを山盛りに。「そんなに食べるんですか」「そりゃ食うだろ」「にしても手早いですね」「当たり前だろ、久我今日子の第一秘書だぜ」「はぁ」「チンタラしてたら怒鳴られるわ。うるせぇ、うるせぇ」「お疲れ様です」   楽しい。触れる肩の熱に胸が高鳴る。でも、こうして夕飯を作る機会もなくなるのかと思うとしんみり。チャーハンを炒める手が止まる。「おい」「はい?」「はいじゃねぇ、焦げるぞ」「あ、すみません」  近江隆之介が小鳥の顔を覗き込み、眉がぴくりと動く。「お前、またいらねぇこと考えてんだろ」「え」「隠し事ねぇから、そんな顔すんな」「変な顔してます?」「してるしてる、とんでもねぇこと言い出しそうな顔」「そんなこと…」「おい、これグリルで焼けばいい?」「はい」  一人暮らしが長いのか、近江隆之介はチーズ巻きを魚焼きグリルに並べ、中腰で火加減を調整。「小鳥」「はい」「俺、小鳥だけだから」「はい?」「小鳥しか目に入らねぇ」「は、はぁ」「小鳥だけでいい」「はぁ」   真剣な声に、小鳥の手が止まる。「おい、醤油どんだけ入れてんだ!」「あ、え、あ!」   結果、チャーハンは追い飯で4人分。チーズ巻きは焦げ目が付き、メロンと生ハムを盛り付ける。熱々の金曜日の宴が始まる。ハフハフとチャーハンを頬張る近江隆之介。口角に米粒。小鳥は手を伸ばし、そっとつまむ。パクリ。「こんなこともありましたね」「あぁ、食堂でな」「不思議ですね」「そう? 俺、こうなる気はしてたけど」「そうですか」「おう」「でも、余裕なさそうでしたよ。マカロンとか、顔隠して帰宅とか」 ブホッ。 黒歴史に吹き出す。「そ、それ言ったらダメだろ」「可笑し
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-04
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2度目の金曜日③

静かに座ったつもりが、ギシッと大きな音。心臓が飛び出しそう。(初めてじゃないのに、緊張する)「なんちゅー顔してんだよ」「え、変ですか」「そんな顔できねぇくらい上書きしてやるから」「ば、な、なに」「バナナ?」「く、くだらない!」「俺のバナナは…ブホッ!」   小鳥が投げたクッションが見事に後頭部を直撃。皿やフライパンは多いが、近江隆之介は手慣れた様子で水切りカゴに並べる。背中を眺める小鳥の足元はムズムズ。尿意を感じてトイレへ。なんとなく気になり、シャワーで下半身を洗う。水音に気づいたのか、ドアの外から声。「おい」「な、なんですか」「えらい気合い入ってんじゃん」「違います!」「へっへっへっ」「その気持ち悪い作り笑いやめてください」「へっへっへっ」「もう!」 気配が遠ざかり、そっとドアを開けると、蝶番の隙間からニヤついた視線。動きが止まる。「騙されてやんの」「ず、ずる!」   近江隆之介は上半身裸、グレーのボクサーパンツ一枚。厚い胸板、緩やかな脇のライン、太ももと脹脛の筋肉が生々しい。「近江さんだって気合い入ってるじゃないですか!」「当たり前よ」「ちょ」  腕を引かれ、リビングはシーリングライトが柔らかく調整され、生成りのカーテンが閉まる。  小鳥モチーフのモビールがクーラーの風にゆらゆら。「え、電気消さないんですか」「なんで」「なんでって」「見えねぇじゃん」「見なくていいです!」「勿体ねぇだろ、こんな綺麗な身体」「だ、からだ」「ほれ、脱げ脱げ」   近江隆之介は小鳥の腕を万歳させ、トップスをバッと脱がす。ポロリとこぼれる乳房。淡いベージュの乳輪。小鳥はあんぐり。「何、変な顔してんだよ」「い、いきなり」  薄い唇が乳首をペロリと舐める。「ひ、ひゃっ!」「もう勃ってるじゃねぇか」「ちょ」「ほれ、脱げ脱げ」   ショートパンツのゴムに手をかけ、ズルっと下ろす。天然記念物並みの素早さ。「もう!」「牛かよ」「雰囲気とかないんですか!?」「ねぇよ。待ちに待った。もう待てねぇ」   両脇を抱え、猫の額のフローリングを一歩、二歩。アイアンベッドに倒れ込む。「い、痛っ!」「あ、悪ぃ」  膝をフレームにぶつけ、小鳥はガサツな近江隆之介を睨む。右膝に赤い痣。謝りながら、近江隆之介は
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-04
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で、いつだい?

 カツカツと黒い革靴がビニールの床を叩き、かっぽかっぽと左右サイズ違いの焦茶のローファーがその後を追う。始業前の市役所庁舎は、蛍光灯がまばらに点灯する薄暗い空間だ。市民課のカウンター前を足早に通り過ぎる二人の影。冷たい空気が漂う中、小鳥の頬はほんのり色づいている。朝の静けさの中、彼女の心は熱く揺れ動いていた。「お、近江さん! 待ってください・・・ちょっ!」 小鳥の声が、庁舎の廊下に小さく響く。彼女の声は少し上ずり、焦りが滲む。 「何だよ、急げよ! 遅刻すっぞ!」 近江隆之介は振り返り、ニヤリと笑いながら歩調を緩めない。彼の声は低く、からかうような響きがある。 「待って、ちょ! 痛っ・・・ちょ!」 小鳥が小さな悲鳴を上げると、近江隆之介はさらに歩みを速める。 「遅ぇなぁ、さっさと歩けよ!」 「だっ、だって近江さんが!」  小鳥の声が思わず大きくなると、市民課の職員たちの視線が一瞬こちらに集まった気がした。彼女は慌ててぺこりと頭を下げ、気まずそうに肩をすくめる。近江隆之介はそんな小鳥の背中をバン!と軽く叩き、笑い声を抑える。  「デケェ声出すなよ。」「だって近江さんが、あんなに・・・!」「悪ぃ悪ぃ、明日の朝はやめとくわ。」「そうしてください!」   蛍光灯の白い光が映るビニールの床を、二人はエレベーターホールへと急ぐ。 ほんの数十分前、小鳥はパイン材のベッドの上で、近江隆之介に組み敷かれていた。 朝の秘密、金曜の夜から始まった二人の関係は、まるで嵐のようだった。キスが止まらず、今朝は特に激しかった。小鳥がスカートを履き終えた瞬間、近江隆之介がまるで「抱擁妖怪」のように現れ、彼女をベッドに押し倒した。 「ちょ、近江さん! 出勤ですよ!」小鳥の声は抗議するように震えたが、どこか甘い響きがあった。 「すぐ終わるから。」 近江隆之介の声は落ち着いているが、目はいたずらっぽく光る。 「すぐって、あっ・・・!」「小鳥、足上げて。」   彼は小鳥のスカートを捲り上げ、下着を下ろすと、ブラウスのボタンを外し、ブラジャーをたくし上げた。豊かな胸に顔を埋め、突起をそっと舐め上げる。 「あ、ちょ・・!」 パイン材のベッドがギシッと軋む。 「あ、ん。ダメ、です・・あ・・!」 ギシッツ、ギシッツ。 ベッドの音が部屋
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-05
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で、いつだい?②

 議会の舞台裏臙脂色のバッジをつけた9名の国主党議員が、自主党議員控室に集まっていた。田辺が書類をまとめ、藤野に渡し、藤野が青いバインダーを閉じて久我今日子に手渡す。田辺が老眼鏡をくいっと上げ、満足げに息をつく。 「皆さん、お疲れ様。これで《証拠》は揃いました。」 全員が胸を撫で下ろし、一人が田辺に手を差し出す。 「田辺先生、政党の壁を越えられたのは先生のおかげです。」「あらぁ、私は?」「もちろん、久我さんの活躍も。突拍子もない話だったけど、藤野先生の熱意に心動かされました。」「いやぁ、それほどでも。」 田辺が小鳥と近江に向き直る。 「近江くん、ありがとう。」「はい。」「小鳥くん、新人なのに助かった。ご苦労様。」「あ、いえ、そんな・・・・。」 キーンコーンカーンコーン。 昼休憩のチャイムが鳴る。 田辺、藤野、久我を残し、議員たちは辺りを窺いながら控室を後にする。 「はぁ、やれやれ。久我くん、後は頼んだよ。」「はい。」「自主党も議席が多ければね。」「藤野くん、言っても詮無いよ。」「そうですね。」  近江隆之介がコピー用紙やバインダーをまとめていると、田辺がポンポンと肩を叩く。涼しげに手を止める近江だが、次の言葉に狼狽する。 「近江くん、で、いつだい?」「何が、でしょうか。」「小鳥くんのご両親に、いつ挨拶に行くんだい?」「え、え。」  近江隆之介の表情が一変。不意打ちの言葉に動きが止まる。 「仲人は田中さんが適任だと思うけどなぁ。」  藤野が腕を組んでニヤニヤ。久我も腕組みで口角を上げる。 「隆之介、田辺さんが仲人、いいんじゃない? お願いしなさいよ。」「え、どういう・・・・。」「僕たちが気づかないとでも? 心外だなぁ。」「君たち、付き合ってるんでしょ?」「え。」  久我に背中を押され、小鳥は真っ赤になって近江の隣に並ぶ。議員の勘は鋭い。選挙を勝ち抜き、何期も務めるにはそれが必要だ。 「い、いつから・・・。」「6月定例議会の前かな。君、僕に壁ドンしたでしょ。」「も、申し訳ありません。」   当時の頭に血が上っていた自分を思い出し、近江は顔を赤らめる。 「おかしいなぁって思ってたんだよ。」「そんな、前から・・・。」「ここで資料作ってた時、近江くん、小鳥ちゃんの手
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