「堀内さん、本当に自分に火葬の予約をするんですか?」桃色の唇を軽くぎゅっとして、堀内瑞雪(ほりうち みゆき)は平然たる顔で頷いた。「はい、予約したいんです。二倍の値段で支払ってもいいので、どうかこの2つの条件を満たしていただければと。まず、最高級の火葬炉が必要です。死体を残さず燃やせるために。そして、火葬した遺骨はすぐに海にばら撒いてください。プロセスは予め計画してくれるようお願いします」支払って、予約の手続きを済ませて、半ヶ月後のスケジュールを確認した後、瑞雪は車で葬儀場を出た。篠崎グループの本社を通りすがった瞬間、大型ビジョンに映るライブ配信の画面が目に入った。誰もが羨む篠崎グループの会長、篠崎乃安(しのざき のあ)は、記者からのインタビューを受けていた。「一棟のビルくらい、全然寄付しますよ。海大は妻と知り合った母校なんです。母校が必要であれば、何でも差し上げますので。東区のあの土地はまだ開発する予定はないんですね。残しておいて、自分で妻に夢のような家に設計してあげたいんです。いきなり遊園地業界に手を出したことも大した原因はなく、妻は観覧車に乗るのが趣味で、全世界で唯一無二の観覧車をプレゼントしてあげたいからです。ゲーム開発チームを買収したのも妻と少し関係がありまして、妻の好みに合って、女性向けのゲームを作ってあげたいんです。ゲームの世界でも、妻が変な人に影響されてしまったら困りますから」最初から最後まで、妻のことばかりだった。それほど深い愛情の込めた発言で、老若男女の関係なく、大勢の人が惹かれていた。「篠崎会長、なんて愛妻家でしょう。毎晩こんな最高な夫と枕を交わして、その奥さん、どれほど幸せなのか、想像もできないわ」「臆病者、妄想くらいいいでしょ。毎晩枕を交わすだけじゃ物足りないわ。毎日篠崎会長とショッピングしたり食事したり、愛の囁きで溺れたり、どこにだって連れてってもらったりして」わいわいする喋り声が続いていた。ビジョンに映るインタビューを聞いて、例え昭和初期生まれの老人でも、まだ漢字も読めない純真な児童でも、その溢れんばかりのロマンチックな情熱に感心し、篠崎会長の愛情の深さを感じ取っていた。「篠崎会長は愛妻家だな」と。瑞雪は皮肉めいた笑みを浮かべ、目を逸らした。彼女は十年前、事故で亡くなりそう
Read more