病室で、瑛司はアシスタントから送られてきた数枚の写真をスマホで見つめていた。その表情は陰りきっている。写真はいずれも物陰から撮られたもので、道端に停められた一台の車が写っていた。鮮明とは言えないが、フロントガラス越しに運転席と助手席に座る人物が何をしているのかは、はっきりと分かる。そこに写っていたのは、蒼空と遥樹が親しげに言葉を交わし、抱き合い、キスをしている姿だった。瑛司はぎゅっと目を閉じ、スマホを握り締める。指の腹は白くなり、手の甲には青筋が浮き上がっていて、今の苛立ちを如実に物語っていた。病室の温度が、なぜか数度下がったように感じられる。ベッド脇に立つアシスタントは視線を落とし、思わず肩をすくめた。思い切って瑛司の表情を窺い、スマホを叩きつける可能性を心の中で計算する。しばらく様子を探っていたが、瑛司がスマホを持つ手をわずかに動かしたのを見て、腹を括って口を開いた。「松木社長、森本社長のほうから、少しご相談がありまして......」この一言は、瑛司のスマホの中には重要な業務データが入っている、どうか壊さないでほしい、という必死のメッセージでもあった。壊されたら復旧に手間がかかるのは自分なのだ。幸いにも瑛司にはまだ理性が残っていた。その言葉を聞き、哀れで無実なスマホは破壊を免れる。アシスタントはほっと息をつき、前に出て書類を差し出した。瑛司は視線を落として書類をめくり、アシスタントは脇で待機する。すると不意に、瑛司の低い声が響いた。「引き続き、見張らせておけ」誰を見張るのかは、言うまでもない。アシスタントの胸中は複雑で、どこか歪んだ感情が渦巻いた。これ以上見続けて何になるのか。今日と同じことを繰り返すだけだ。蒼空とその恋人の親密な写真を送り続け、上司が自らを痛めつけるのを見続けるだけだ。もし上司が蒼空に向けている感情を自分の目で見ていなければ、何か人知れぬ特殊な嗜好でもあるのではないかと疑ってしまうところだった。とはいえ、給料をくれる上司である。アシスタントは心の中でぶつぶつ言いながらも、素直に頷いた。瑛司は書類を読み終え、修正点をいくつか指示する。アシスタントは一つひとつ書き留め、室内の空気はようやく彼にとっての安全圏へと戻った。やっと一息つけると思
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