それから、私は元気な男の子を出産した。名前は、よく晴れた日に生まれたことから「晴翔(はると)」と名づけた。「本当にかわいいな」「またそれ?」壊れそうなものに触れるような手つきで晴翔を抱く彼に、私はクスクスと笑い声をあげた。「もっと力入れても大丈夫だよ」そう言いながら、晴翔の手をキュッと握ると、少し表情をゆがめた。「いや、ほら、もっと優しいほうがいいって顔してる」そんなわけはない……そう思うけれど、仕事をこなしながら、こうして育児にも協力してくれる。健太郎さんは、まさによきパパだ。「違うよ、パパ。おむつ」「え?」「マジか」晴翔をそっとベビーベッドにおろすと、おむつを確認して健太郎さんは顔をしかめた。「やっぱりママにはかなわないな、晴翔」そう言いながら、手早くおむつを替えてくれる彼を、私はじっと見つめていた。「なに?」何か不手際があったと思ったのか、健太郎さんはもう一度おしり拭きに手を伸ばそうとする。「大好きだなって思っただけ」「え?」完全に油断していたのか、自分が私を甘やかすことは全然平気なのに、私からの言葉にはいちいち反応してくれる。今も、耳が赤くなっているのがわかった。今晩、覚悟してろよ」いきなり低くなった声に、私は「え?!」っと声を上げる。「もう、ドクターからも“いい”って言われたの、知ってるんだからな」そう、出産後、私たちはまだ体を重ねていない。育児に専念してきて、ようやく最近、少し余裕ができてきたところだ。私としても、ほんの少しだけ寂しさを感じていた。だから、彼の言葉がうれしくないわけじゃない。嘘ではないし、支障もないのだけれど……一気に形勢逆転した立場に、今度は私の顔が赤くなっていると思う。「あの、でも……久しぶりだしね」健太郎さんが「覚悟しろ」と言うときは、本当に手加減してくれないのだ。「晴翔、今日の夜はぐっすり眠ってくれていいからな」おむつを替え終え、晴翔を抱き上げると、健太郎さんが私のほうへと歩いてくる。「これは先払い」そう言って、私にリップ音を立ててキスをする。「もう、子どもの前だから!」少し怒ったように言った私だったが──もう一度、今度は私からキスをした。「さあ、今日はどこに行こうか。動物園もいいし、水族館もいいな」晴翔が生まれた日のような、真っ青な空を見上げなが
Last Updated : 2025-09-30 Read more