一臣は、再び希和のもとへ向かった。今回は両親にも何も言わず、ただ黙って一人で旅立った。その前に、一臣は祖父の家に立ち寄り、誕生日パーティーの日に設置されていた庭の防犯カメラ映像を確認していた。映像に映っていたのは、ひよりに一切手を出していない希和の姿だった。一方のひよりは、希和に執拗に絡み、挑発し、自分が泣き崩れるタイミングを計ったかのように演技していた。予想はしていたが、映像という証拠を目の当たりにしたとき、一臣の胸には言葉にできない衝撃が走った。希和に会って、ちゃんと謝ろう。許してもらえるなら、なんでもしよう。あれほど長い年月を共に過ごしてきたんだ。それが、そう簡単に壊れてしまうとは思いたくなかった。飛行機が空港に着くや否や、一臣はすぐに希和の家へ向かった。けれど、彼女に近づくほどに、胸の奥から湧き上がるのは、不安と恐怖だった。前回来たときに、彼女の住所はすでに調べていた。朝から夜まで、冷たい風に吹かれながら立ち尽くし、ようやく家の前に現れた希和の姿を見つけたとき、彼女の隣には、秀子だけでなく、見覚えのある男が立っていた。その男の正体を思い出す前に、秀子の鋭い視線が一臣に突き刺さった。「また来たの?希和はあなたに会いたくないって、はっきり言ったはずよ。帰って」「おばさん、お願いです。希和に話したいことがあるんです」その場にいた男、湊は、一目見ただけで一臣が誰かを察した。突然この街に現れた希和、そして彼女の家族。その背後に何かがあったことは、湊にもすでにわかっていた。さらに、他の人から聞かされた断片的な情報から、事情もだいたい把握していた。だからこそ、湊の目には、明確な敵意が宿っていた。「希和ちゃん、手伝おうか?」そう言う湊に、希和は静かに首を振った。「ありがとう、湊さん。でも大丈夫。今日は送ってくれてありがとう」湊は彼女の家が近いこともあって、それ以上は何も言わず、静かにその場を去った。その背中をじっと見つめていた一臣の顔が、徐々に強張っていく。「あいつ、湊だな?希和、なんであんな時間にあいつと一緒にいたんだ?」その問いに返ってきたのは、氷のように冷たい声だった。「そんなの、あなたに関係ないでしょ?一臣……はっきり言うけど、余計なお世話よ。話があるなら早く
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