一臣は、確かにどうかしていた。希和がいなくなったと知ってからというもの、彼女のことを思い出さない日は一日たりともなかった。「会いたい」――その想いは、消えるどころか日に日に強まっていった。だが、誰に聞いても、希和の居場所は教えてもらえなかった。希和は一臣の連絡先をすべてブロックしていたので、仕方なく、一臣は友人のスマホを借りてメッセージを送るしかなかった。それでも、送った瞬間に彼からだと見抜かれているかのように、返信はいつも決まっていた。【もう二度と私に関わらないで】「……クソッ!」一臣は暴れ出し、テーブルの上にあった酒瓶を次々に床へ叩き落とした。ガラスの割れる音が部屋に響く。怒っている最中の一臣に、誰一人として近づこうとする者はいなかった。ただひよりだけが悲しげな表情で彼を見つめ、そっと彼の手からグラスを奪い取る。「一臣、お願い、もう飲まないで……」だが、一臣の目は血のように赤く染まり、ひよりを激しく突き飛ばした。「触るな!」ひよりは勢いよく倒れ、運悪く床に散ったガラスの破片に手をついてしまった。「っ……一臣、痛いよ」その声に少しだけ酔いが覚めたのか、一臣は額を押さえながら、ゆっくりと彼女に視線を落とした。だが、その足は一歩も動かなかった。一臣は苛立ったように口をひらく。「真司、俺の女――じゃなくて、そいつを家まで送ってやってくれ」その言葉を聞いた瞬間、ひよりの血の気がすっと引いた。これ以上残ったら、一臣の機嫌が悪くなるだけだ。そう悟ったひよりは、黙って立ち上がると、何度も振り返りながら部屋を後にした。再び一人になった一臣は、手当たり次第に酒をあおった。胃が焼けつくように痛んでも、止める気にはなれなかった。――ふと、記憶が蘇る。あの夜、ひよりと希和を初めて引き合わせたとき、ひよりが熱湯をこぼし、希和が火傷を負った。あのとき、彼女はどれほど痛かっただろうか。けれど自分は、その傷に気づきもせず、責めるような言葉だけをぶつけていた。病院で見たあの火傷は酷かった、痕になってしまったのかなと、彼は考えていた。そして彼が考えていることが無意識に漏れてしまい、近くにいた友人の一人が意外そうな顔をしながら、正直に答えた。「たぶん、痕は残ると思うよ。結構熱かったし……」そ
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