次の瞬間、電話は心にいきなり奪われ、蓮は冷たい視線を向けた。「蓮さん、今日は私たちの結婚式よ。夕子のために私と子供を置いていくのか?」心は目を赤くし、蓮の携帯を掲げた。「返せ」蓮の声は低く渋かった。心は首を振り、一歩下がって携帯を背後に隠した。「夕子はお婆さんを傷つけて、男と駆け落ちしたのよ?それでも探すの?あなたが愛してるのは私でしょ?ちゃんと名分をくれるって約束したじゃないのか。もう結婚したから、夕子を探しに行かせない。絶対に許さない」「うるさい、いい加減にしろ!」蓮は冷たく怒鳴り、心の手首を掴んで携帯を奪い返した。「夕子がお婆さんを傷つけ、俺を裏切って駆け落ちした。許せるものか。連れ戻して、しっかり問い詰めてやる」心は呆然とし、蓮の言葉を信じられなかった。「蓮さん、お願い、行かないで。あなたがいなくなったら、私はみんなに笑いものにされるのよ」「誰が笑うんだ?しっかり客の接待をしてろ。夕子を見つけたらすぐ戻る」蓮は携帯のアドレスをちらりと見ると、ステージから降りた。彼は焦燥感に駆られていた。夕子が海崎市に行った理由が知りたかった。しかも白野家の縄張りで。白野幸雄(しらの ゆきお)の手下は水に溺れて意識を失った夕子を救い上げ、その夜のうちに海崎市へ連れ帰った。数日間の静養で、彼女の体調は回復した。ある日、別荘の使用人が夕子をある部屋へ案内した。部屋には4歳の女の子が座っており、その顔は亡くなった娘と瓜二つで、真剣に積み木を組み立てていた。夕子の目頭が熱くなり、心拍が早まった。緊張のあまり目をこすり、少女がまだそこにいるのを確認すると、震えながら涙がこぼれた。「あの子は君の娘だ。死んではいない」背後でドアが開き、幸雄が姿を現した。長い脚とすらりとした体格で、麻痺など微塵も感じさせない。上品で穏やかな雰囲気をまとっており、肩に降り注ぐ陽光がまるで仙人のようだった。夕子が振り向くと、一瞬にして彼の美しさに息をのんだ。「幸雄だ。お前の結婚相手だよ」幸雄の目は優しく潤んでいた。夕子は一瞬言葉を失い、深々と頭を下げた。「私を救ってくださり、娘の命も助けてくださって……ありがとうございます」幸雄はそっと彼女を起こすと、口角に上品な笑みを浮かべて切り出した。「お礼なら、その身で償ってくれ。夕子、俺がしたこ
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