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All Chapters of 君の魂は金色に輝く: Chapter 11 - Chapter 13

13 Chapters

思いきって提案してみる

「──あの、簡単なものなら作れるので、朝食だけでも僕に用意させてもらえますか?」 「朝はコーヒー以外口にしないが……」 「それじゃ健康に良くないです。一日の始まりには体に優しい食事が必要です。せめて、これくらいはさせて下さい」 「……勇人がそう言うなら、断る程の理由もないから構わないが。ただし、疲れてる時は絶対に無理するなよ?」 「分かってます」 頷いてもらえて、少しほっとする。 ──晩酌するなら、朝は体をリセット出来るもので始めないと。 勇人は気を取り直して、父親と暮らしていた頃の経験から献立を考え始めた。 簡単に作れて、口にしてもらいたい物なら、いくつか思い当たる。 ──これで優和さんが喜ぶかは分からないけど。 心は知らないが、肝臓になら喜ばれるはずだ。 「そうしたら、必要な物の買い出しですね。あ、今夜の夕飯は僕に作らせて下さい。作りたい物があるので」 「いやに意欲的だな。──近くにショッピングモールがある。そこで間に合うか?」 ──モールで良かった、庶民に甘くないタイプのデパートじゃない。 「はい、大抵は揃います」 「なら、俺が車を出す」 「ありがたいです」 その買い出しも、契約書の通りなら優和が財布を出す事になるのが気にかかるものの、いつまでもくよくよしていては、当の優和が不快になってしまう事なら予想出来る。 ──ここは割り切ろう。 勇人はそう考える事にした。 そして買い出しに出る前に冷蔵庫を確認すると、見事に並べられたビールと簡単なツマミしかなかった。 ──食事を一緒にしたのは二回だけだけど、もの慣れた雰囲気だったし……多分食事は外食がほとんどなんだろうな。いや、それでもこれはあんまり。 「……何で所狭しと瓶ビールが並んでるんですか……」 「ビールは缶より瓶の方が美味いだろ」 「美味しさの問題じゃありません、冷蔵庫の中身の問題です」 「言っておくが、食事では好き嫌いなんてしてないからな?野菜も全く美味く感じないが、出されれば残さない」 「その分自宅で不摂生ならマイナスです」 「風呂上がりの冷えたビールは譲らないぞ」 「……晩酌の他にも呑んでるって事ですね?」 「ビールは酒じゃない、炭酸麦茶だ」 「酒呑みの言い分は聞いてたらキリがありません
last updateLast Updated : 2025-08-08
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何もかもが特別なもので

 * * * もしかしたら、一瞬だけ寝てしまったかもしれない。そんな空白の時間から、夕食の支度だと身を起こす。 幸い、時刻は支度にちょうどいい。 キッチンでエプロンを着け、手を洗って料理を始めた。 まず、細かく刻んだネギは水に晒して余計な辛味を取っておく。代わりに大根おろしは大根の下の方を使う。 あとは花かつおで旨みと風味を足した。わさびは好みに合わせて使ってもらえばいい。 蕎麦は乾麺なので茹で時間が長いが、茹で蕎麦よりも弾力があり喉越しも良い。茹で時間をきっちり守って、流水で洗う。 それらを丁寧に盛り付けて、テーブルに並べた。 ──さて、優和さんを呼びに行かないと。 あらかじめ教わっていた部屋に行き、そこで思わず立ちすくむ。 ──何だろう、ドアをノックするだけなのに、どきどきする。 優和が部屋で何をしているか、ドア越しでは何も分からない。もし仕事に集中していたら邪魔にならないか?これが躊躇わせる。 かと言って、もたもたしていたら用意した蕎麦が不味くなる。せっかく家で食べる食事なのだから、美味しく食べて欲しい。 思いきって軽く三回ノックすると、ドアの向こうから優和の声が返ってきた。「勇人か?」「はい。──優和さん、今大丈夫ですか?夕飯の支度が出来ましたけど……」「ああ、今行く。企画書には目を通したところだ」 どうやら仕事を邪魔せずに済んだようだ。勇人はほっと胸を撫でおろして優和を待った。「待たせたな。──それにしても、家で飯なんて一人暮らしを始めてから一度でもあったか、記憶にない」「でしたら、今日は記念日ですね」「記念日、な。まあ勇人と二人になる記念日としても残せるといいな」「う……残してみせますからね」 口ごもりながら反駁すると、優和がいたずらめいた笑みで応えた。「楽しみだ」 ──どこまで本気なのか分からないんだよなあ。 それも、いつかは読めるようになるのだろうか? そこまで親しくなる未来──まだ思い描けないが、未来はいつだって未知数だ。 冷やし蕎麦を並べたテーブルに二人で着いて、勇人が簡単に説明した。「薬味には、ネギと大根おろしと花かつおを用意しました。つゆが市販品なので、優和さんの口に合うか分かりませんが……」「いや、市販品でも気にはしない。美味くなるようにリニューアルが繰り返されてるしな。薬味はどこ
last updateLast Updated : 2025-08-19
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初めてすごす休日の二人きり

 * * * 翌朝、平日と同じ時間に目を覚ました勇人は、隣で眠る優和の寝顔を間近に見る事となり、彫刻みたいな美貌の威力と、それが近すぎる威力で飛び起きそうになった。 ──堪えろ、駄目だ、優和さんを起こさないように静かに抜け出すんだ。 どくどくと激しく脈打つ心臓を押さえながら、寝起きでも何とか理性をフル稼働させる。 物音を立てないように、刺激しないようにとベッドから出て立ち上がり、忍び足で振り返りながら寝室を出た。 ──任務達成。 はあ、と長く息をつく。よくこんなに出せる程の空気が肺にあったものだ。 ──ええと、洗顔、歯磨き、着替え、それから朝食作り! 美人は三日で飽きるとか嘘だと思い出しながら、手早く支度してキッチンへ向かった。 献立なら決めてあるし、難しい料理でもないので、手際よく用意出来た。 ──ご飯はタイマーにしておいたから美味しい状態で出せる。それにしても、高そうな炊飯器なのに新品みたいに傷がなかった……。 ともかく優和の起床を待っていると、いつの間に身支度を整えたのか、きっちりした姿で優和が現れた。「勇人、おはよう。早いんだな、日曜だろ?」「おはようございます。優和さんこそ、日曜なのにお仕事があるでしょう。──あの、朝ご飯、出来てますよ」 彼の反応が気になるし、緊張して言いにくかったものの、かろうじて普通に言えた。 テーブルに着いた優和に、ほんのりと湯気を立てる朝食を差し出す。「朝早く起きて、大変だったろ。──梅茶漬けと、何かの味噌汁か?」「とろろ昆布のお味噌汁です。朝はお味噌汁が良いんですよ、代謝も免疫力も上がりますし、脳の働きも良くなるのでお仕事も効率よく始められます。とろろ昆布なのは、優和さんがお酒を呑むので……昆布は体内の水の巡りを良くしますから、血流を良くするお味噌汁との相性も良いですし、それに、野菜の青臭さとかが苦手な人には特にお勧めです。旨みがあるので」「……その説明、女子力高すぎないか?」 優和が驚いているのか呆れているのか分からない面持ちになっている。確かに、一般的な男子高校生が披露する蘊蓄ではないかもしれない。 だけど、これにはれっきとした理由がある。「あの、これは父が母を亡くした後、しばらくお酒が増えていたからなんですよ?やっぱり息子としては心配になるじゃないですか?」「それで酒呑みの体に
last updateLast Updated : 2025-09-03
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