静乃は律真の言葉から、すべての経緯を理解した。あれは二人が付き合ってちょうど二年目の、静乃の誕生日のことだった。律真は渋滞に巻き込まれて到着が数分遅れ、個室では集まった友人たちが静乃をからかっていた。「あんなにかっこいい彼氏と寝るって、どんな感じ?もうかなり長く付き合ってるんでしょ?」「そんな……そういう関係じゃないわ」静乃は少し恥ずかしそうに視線を落とし、「私は魂が惹かれ合う関係だけが好きなの。肉体関係は望んでない」と答えた。ちょうどその言葉を、部屋の入口まで来ていた律真が聞いていた。「……それだけの理由で?」静乃は信じられない思いで律真を見つめた。律真が黙って頷くのを見て、静乃はふっと笑い出した。笑いはだんだん大きくなり、ついには涙がこぼれそうになった。ただその場をやり過ごすための一言を、律真は本気にしてしまった。それから四年間、二人は情のない夫婦として暮らし――律真はその言葉をきっかけに、魂の共鳴ばかりを追い求めるようになった。だからこそ、静乃が自分を愛している証を求め続けた。それで終わりのない悪循環に陥ったのだ。「律真、何を取り繕ってるの?」「本当にそんなに深く想っているなら、昨夜どうして私に薬を盛ったの?」「薬?」律真は目を見開いた。頭の中で必死に状況を整理し、あらゆる可能性を探ったが、静乃がすでに部屋を出ていったことには気づかなかった。律真が屋敷に戻ると、まず最初に命じたのは、昨夜バーで誰が薬を仕込んだのか調べることだった。調査を進めるうちに、その犯行が詩織の仕業だと判明した。やがて、両手両足を縛られた詩織が律真の前に突き出された。律真の顔には陰湿な憎悪が浮かび、瞳には剣のような光が宿っていた。彼は腰を落とし、詩織の顎をつかんだ。「言え。なぜ薬なんか盛った?」「律真、あなたは本当に静乃に惑わされてるのよ!私がこうしなきゃ、どうやってあの女の本性を暴けるの?それに、どうすればずっとそばにいる私の存在を思い出せるっていうの!」詩織はほとんど叫ぶように言った。彼女の計画は本来完璧なはずだった。だが、そこに蓮司が割り込んだ。静乃は連れ去られることもなく、肝心のスクープ写真も一枚も撮られなかった。そのうえ、律真に証拠まで握られる羽目になった。「認めるんだな?」律真はわずかに
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