All Chapters of 咲き尽くした桔梗に春は訪れず: Chapter 11 - Chapter 12

12 Chapters

第11話

結婚式は挙げずに、私は両親に押し切られ、先に晴樹と婚姻届を提出した。両親はまるで、私が翻意するのを恐れているかのように、急いで私を森田家の戸籍に登録してしまった。私は晴樹には、凌也との恋愛についても正直に話した。話を聞き終えると、晴樹は私の手首の淡い赤い傷跡をそっと撫で、そこに優しくキスを落とした。「防犯カメラの件は俺がなんとかする。心配しなくていい。手首が完全に治ったら、一緒にウェディングドレスを選びに行こうね」私はうなずき、晴樹が私たちの婚約パーティの準備に忙しく動き回る様子を見て、心から嬉しく感じた。これまでの六年間は凌也のそばで振り回されていたが、今は完全に彼との関係を断ち切り、私は心が軽くなったようだった。晴樹が会場を選び、色とりどりの花を注文し、招待状を書き、専門チームに私の結婚式のスタイリングを依頼する姿から、本当に愛されることがどんな感覚かを初めて実感した。愛は双方のものだと、私はようやく理解できた。片方が与え続け、もう一方がただ受け取るだけではない。この六年間、自分が捧げてきた一方通行の愛はもう勘弁だ。今こそ、健康で前向きな恋愛を始める時だ。いや、今では私と晴樹はすでに堅い結婚の絆で結ばれている。数日後、晴樹は防犯カメラの件で、私の名誉は完全に回復されたと教えてくれた。会社中の誰もが、あの一件はすべて遥香の自作自演で、私を追い出すための芝居だったと知った。映像が流出した当日、遥香は名誉毀損で警察に連行され調査を受け、晴樹はすぐに彼女の部長の職を撤回した。もちろん、凌也が私にしたあの平手打ちも、晴樹は見過ごさなかった。婚約者としての名義で、晴樹は凌也に損害賠償を求めた。賠償金額はさほど問題ではなかった。会社全体に私と晴樹の関係を公にし、凌也を苦しめられれば晴樹の目的は達成された。晴樹がその話を私にした時、少しばつが悪そうに私を見つめ、こう尋ねた。「俺のやり方、嫌な気持ちになるか?」私はすぐに口元を上げて答えた。「誰かに守られているって、こんなに素敵なことだって初めて知ったよ」晴樹は笑みを浮かべ、眉をほんの少し上げ、目には喜びが満ちた。
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第12話

手首の傷が完全に治った後、晴樹は私を連れてウェディングドレスを選びに行った。ドレスショップの外で、久しぶりに凌也はまたしも桔梗の花束を手にして現れた。「明里、俺はもう遥香とは結婚しない。この間、自分の気持ちに気づいたんだ。今、好きなのは君だけだ!」私は嫌悪感を抱き、顔をそむけた。凌也を見るたびに、誕生日の日に彼が跪いて遥香にプロポーズした光景が鮮明に頭に浮かぶからだ。しかし今の凌也は、他の女とキスを交わした唇で、私のことが好きだと言った。滑稽にしか思えなかった。私は別に凌也のことを見たくもなかった。その汚くてみっともない格好は、晴樹と比べれば乞食のようだ。晴樹の腕を組み、私は遠回りして歩こうとした。だが、凌也が走ってきて私の手首を掴んだ。彼は病院の診断書を一枚一枚私に差し出しながら言った。「遥香には病気なんてない。彼女は俺たちを騙した。もし最初から彼女が病気でないと分かっていたら、絶対に婚約しなかった!明里、頼むから一度だけでもいい、これを見てくれ!嘘はついていない!」凌也は目が血走り、涙を流して懇願した。その姿を見て、晴樹は私が同情しないようにと、すぐに凌也の手を引き離した。「無礼者。俺の妻に対してふさわしくない考えはやめろ!」それを聞いた私は、凌也が差し出した無意味な書類の束をはたき落とした。遥香の病気が真実か嘘か、それが私に何の関係があるだろうか。私は凌也がしたことを知っている。偽の診断書で全てを帳消しにできるはずもないし、何もなかったかのように振る舞って彼の元に戻ることもできない。今の凌也はまるで夢にふけっているかのようだった。ばらばらと、診断書が地面に散らばった。晴樹の嫉妬らしき表情を見て、私は自然と晴樹に寄り添い、散らばった書類の上をまたぎ、凌也を見もしなかった。かつて凌也が私に辞表や書類を投げつけた時、自分が跪いて涙で私に許しを乞う日が来るとは、思いもしなかっただろう。時は戻らず、私は彼を許すこともない。憎しみに心を奪われるのも無駄だから、最善の方法は凌也を完全に他人として扱うことだ。しかし、凌也はまだ諦めていない。彼は地面から起き上がり、拳を振りかざして晴樹に向かって叫んだ。「全部君のせいだ、明里を奪ったのは君だ!」晴樹は私を守ろうと、手を放し、凌也の衝撃で倒れた。私
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