結婚式は挙げずに、私は両親に押し切られ、先に晴樹と婚姻届を提出した。両親はまるで、私が翻意するのを恐れているかのように、急いで私を森田家の戸籍に登録してしまった。私は晴樹には、凌也との恋愛についても正直に話した。話を聞き終えると、晴樹は私の手首の淡い赤い傷跡をそっと撫で、そこに優しくキスを落とした。「防犯カメラの件は俺がなんとかする。心配しなくていい。手首が完全に治ったら、一緒にウェディングドレスを選びに行こうね」私はうなずき、晴樹が私たちの婚約パーティの準備に忙しく動き回る様子を見て、心から嬉しく感じた。これまでの六年間は凌也のそばで振り回されていたが、今は完全に彼との関係を断ち切り、私は心が軽くなったようだった。晴樹が会場を選び、色とりどりの花を注文し、招待状を書き、専門チームに私の結婚式のスタイリングを依頼する姿から、本当に愛されることがどんな感覚かを初めて実感した。愛は双方のものだと、私はようやく理解できた。片方が与え続け、もう一方がただ受け取るだけではない。この六年間、自分が捧げてきた一方通行の愛はもう勘弁だ。今こそ、健康で前向きな恋愛を始める時だ。いや、今では私と晴樹はすでに堅い結婚の絆で結ばれている。数日後、晴樹は防犯カメラの件で、私の名誉は完全に回復されたと教えてくれた。会社中の誰もが、あの一件はすべて遥香の自作自演で、私を追い出すための芝居だったと知った。映像が流出した当日、遥香は名誉毀損で警察に連行され調査を受け、晴樹はすぐに彼女の部長の職を撤回した。もちろん、凌也が私にしたあの平手打ちも、晴樹は見過ごさなかった。婚約者としての名義で、晴樹は凌也に損害賠償を求めた。賠償金額はさほど問題ではなかった。会社全体に私と晴樹の関係を公にし、凌也を苦しめられれば晴樹の目的は達成された。晴樹がその話を私にした時、少しばつが悪そうに私を見つめ、こう尋ねた。「俺のやり方、嫌な気持ちになるか?」私はすぐに口元を上げて答えた。「誰かに守られているって、こんなに素敵なことだって初めて知ったよ」晴樹は笑みを浮かべ、眉をほんの少し上げ、目には喜びが満ちた。
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