輝也が事態を知った時には、もう手遅れだ。礼奈はまた動画をアップした。その動画の中で、彼女はこう語っている——輝也は紗月との関係を修復するため、自分に中絶を強要したのだと。そして、輝也の母が自分に金を渡し、身を引くようにと説得する音声までも公開された。証拠が再び挙げられ、たちまちのうちに輝也の不倫と人への加害行為が炎上された。ほんの短い時間で、トレンドを独占した。輝也が金を使って関連記事を消しても、すぐにまた出てくる。もう阻止できない。オフィスの大きな窓の前で、輝也は苛立ちのあまり二つ目の花瓶を叩き割り、再び礼奈へ電話をかけた。五度目の着信。それでも相手は出なかった。こめかみがズキズキと痛むなか、彼は秘書を呼びつけた。「至急だ。どんな手を使っても構わない、中谷礼奈を見つけ出せ!あのクソ女……殺さないと気が済まない!」輝也は記者の質問に一切答えず、彼らを追い払ってからそのまま駐車場へ向かい、車を飛ばして自宅へ帰った。だが、自宅の前も記者で埋め尽くされていた。何とか家に辿り着いた輝也は、その晩、雅子に連絡し、拓海を預けた。雅子も事態の深刻さを理解しており、すぐに身を隠す準備を整えた。拓海はまだ何が起こっているのか理解できていない。輝也が自分をどこかへ送り届けようとしているのを見て、顔面を蒼白にした。涙と鼻水を滲ませながら、必死に「行かせないで」と懇願する。彼は賢い子だ。状況を読むことを知っている。こんな時でさえ、紗月を引き合いに出すことを忘れない。「僕がいなくなったら、ママは二度と戻って来なくなるよ」と訴えた。だが輝也は、彼の涙の演技に構っている余裕などない。拓海を雅子に託し、自室へと閉じこもる。彼を長く待たせることはなかった。二日後、礼奈の行方が判明した。輝也は情報を受け取ってすぐに、ボディーガードを派遣して捕まえに行かせた。しかし、動きが事前に察知されたのか、ボディーガードが駆けつけた時には、彼女は一足先に車で逃走した。輝也はスマホを握りしめて罵声を吐き、さらに追手を追加。ようやく彼女の車に追いついた。「ぶつけろ、どんな手を使ってでも止めろ!」と、輝也が運転手に命じた。高速道路上で、黒い車が白い車を狂ったように追いかける。黒い車が命を捨てたかのように、猛スピードでぶつかりにいった。
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