黒川翔也(くろかわしょうや)と結婚して七年、彼は二十九人の愛人を囲ってきた。バスタオルに身を包み、私たちのベッドに斜めに寝そべる三十人目の若い女を見て、私は彼の方へ顔を向けた。「外でだけでは足りないの?わざわざ家に連れ込む必要がある?」女はわざとバスタオルを引き下げ、白い肌をあらわにした。「早瀬さん、黒川さんはあなたがベッドでは死んだ魚のようだって!男を喜ばせる方法、教えてあげます」その夜、私は無理やり一本の華やかな芝居を鑑賞させられた。だが翔也は忘れている。私たちの結婚は所詮、契約にすぎないということを。契約満了まで、あと一週間。……「早瀬夢(はやせゆめ)、茜に服を取ってきてやれ」翌朝、翔也は上半身裸のままベッドに座り、タバコに火を付けながら私に指示した。床一面に散らばった衣服は、昨夜の激しさを物語っているようだ。私は動かず、彼を一瞥した。布団にくるまった森川茜(もりかわあかね)は、むしろ笑みを浮かべて私を見ている。「黒川さん、それはいくら何でも……奥さんですよ?」彼女の口では「奥さん」と言いながら、その口調に一片の後ろめたさはなく、むしろ得意げで挑発的だ。体を包む布団が動作と共に少し滑り落ち、赤い痕の残る肌がのぞいた。「それに、奥さんのところに私に合う服なんてあるはずないじゃないですか」そう言うと、茜はわざと豊満な胸で翔也の腕を擦った。「だって、彼女は私とは違いますからね。あははっ」私は無表情でドアの方へ向き直る。「早瀬!話しているんだぞ」背後から不快そうな声が響く。私は一瞬足を止めたが、振り向きはしなかった。「服が欲しいなら自分で取ればいいわ。私には用がある」七年間、私は彼に逆らうことはほとんどなかった。明示であれ暗示であれ、彼が私にさせる事は、ほぼ決して拒まなかった。今日、私が初めてその暗黙の了解を破った。「何だって?」私の冷淡な態度に慣れていない翔也は、声を荒げた。「用?お前に何の用がある?每日家にいて、働きもせず金も稼がないくせに。早瀬、忘れるな。俺がお前を妻にしてやらなかったら、お前一人の力で、こんな良い暮らしができると思うのか?」彼の言う通りだ。彼と結婚していなければ、今のような富裕層の夫人としての生活は送れなかった。だが彼は忘
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