結婚式当日、私は偶然、柏木佑(かしわぎ ゆう)のLINEで、お気に入り登録されているボイスメッセージが一つあるのを見つけてしまった。再生すると、甘ったるい声が響いた。「佑、会いたいよ」問い詰める私に対し、佑は冷静だった。「下心があったのは認める。だが、これはただ彼女が王様ゲームで負けた罰ゲームなだけで、他には何もない」二人のチャット履歴も、その言葉を裏付けていた。ごく日常的で、普通で、決して一線を越えるような内容はなかった。なのに私は、それを見ながら涙が止まらず、ウェディングドレスを濡らしてしまった。「佑、彼女を削除して。そうすれば、式を続けられるわ」七年にも及ぶ長い恋。ゴールは目前だったのに。つい最近、妊娠していることも分かったばかり。まさに二重の喜びとなるはずだった。しかしその時、清掃員の格好をした女の子が突然、少量の血を吐き、涙目のまま走り去った。それが誰か分かった途端、佑は考える間もなくあの女の子を追いかけた。私は彼の腕を掴む。「行くなら、もう私と結婚する資格はないと思って。よく考えて......」返ってきたのは、佑が私の指を一本一本こじ開け、硬直したまま去っていく後ろ姿だった。私はよろめき、足首に激痛が走った。ウェディングドレスの裾は、私がこだわって選んだトレーンで、あまりに大きい。初めて試着した時、佑は目を輝かせ、私を抱きしめて「やっと君と結婚できるんだ」と声を詰まらせた。でも今、彼が娶るはずの花嫁が後ろで転んでも、彼は一度も振り返らなかった。あの女の子が血を吐いたから、そんなに焦っているの?こんなにも大切な瞬間に、私を、彼の両親を、そして全ての親族やゲストを置き去りにしてまで。ほんの五分前まで、佑は私に約束してくれていたのに。「結月、君を裏切るつもりなんてない。君が気にするなら、彼女との連絡は完全に断つよ」「インターンが終わったら、桜田さんを事務所から異動させるから」佑は南都市で最も優秀な訴訟弁護士であり、大手法律事務所のパートナーでもある。彼は常に責任感が強く、信頼できる男だったから、嘘をつくはずがない。だから、私は一度だけ賭けてみようと思った。結果は明白だった。私は賭けに負けた。それも、惨めに。ドレスの裾の下で、足の皮が擦りむけている。隣の鏡
Read more