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消えゆく月光は掴めない

消えゆく月光は掴めない

By:  小さいトラ猫Kumpleto
Language: Japanese
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結婚式当日、私は偶然、柏木佑(かしわぎ ゆう)のLINEにボイスメッセージが一つ、お気に入り登録されているのを見つけた。 再生すると、甘ったるい声が響いた。「佑、会いたいよ」 私が問い詰めると、佑は冷静に答えた。 「下心があったのは認める。でも、これはただ彼女が王様ゲームで負けた罰ゲームなだけで、他には何もない」 二人のチャット履歴も、その言葉を裏付けていた。 ごく日常的で、普通で、決して一線を越えるような内容はなかった。 なのに私は、それを見ながら涙が止まらず、ウェディングドレスを濡らしてしまった。 「佑、彼女をブロックして。そうすれば、式を続けられるわ」 七年にも及ぶ長い恋。ゴールは目前だったのに。 つい最近、妊娠していることも分かったばかり。まさに二重の喜びとなるはずだった。 しかしその時、清掃員の格好をした女の子が突然、血を一口吐き、涙目で走り去った。 それが誰か分かった途端、佑は考える間もなくあの女の子を追いかけた。 私は彼の腕を掴む。「行くなら、一生私と結婚できるなんて思わないで。よく考えて......」 佑は私の指を一本一本こじ開け、硬直したまま去っていった。その後ろ姿が、私の目に焼き付いた。

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Kabanata 1

第1話

結婚式当日、私は偶然、柏木佑(かしわぎ ゆう)のLINEで、お気に入り登録されているボイスメッセージが一つあるのを見つけてしまった。

再生すると、甘ったるい声が響いた。「佑、会いたいよ」

問い詰める私に対し、佑は冷静だった。

「下心があったのは認める。だが、これはただ彼女が王様ゲームで負けた罰ゲームなだけで、他には何もない」

二人のチャット履歴も、その言葉を裏付けていた。

ごく日常的で、普通で、決して一線を越えるような内容はなかった。

なのに私は、それを見ながら涙が止まらず、ウェディングドレスを濡らしてしまった。

「佑、彼女を削除して。そうすれば、式を続けられるわ」

七年にも及ぶ長い恋。ゴールは目前だったのに。

つい最近、妊娠していることも分かったばかり。まさに二重の喜びとなるはずだった。

しかしその時、清掃員の格好をした女の子が突然、少量の血を吐き、涙目のまま走り去った。

それが誰か分かった途端、佑は考える間もなくあの女の子を追いかけた。

私は彼の腕を掴む。「行くなら、もう私と結婚する資格はないと思って。よく考えて......」

返ってきたのは、佑が私の指を一本一本こじ開け、硬直したまま去っていく後ろ姿だった。

私はよろめき、足首に激痛が走った。

ウェディングドレスの裾は、私がこだわって選んだトレーンで、あまりに大きい。

初めて試着した時、佑は目を輝かせ、私を抱きしめて「やっと君と結婚できるんだ」と声を詰まらせた。

でも今、彼が娶るはずの花嫁が後ろで転んでも、彼は一度も振り返らなかった。

あの女の子が血を吐いたから、そんなに焦っているの?

こんなにも大切な瞬間に、私を、彼の両親を、そして全ての親族やゲストを置き去りにしてまで。

ほんの五分前まで、佑は私に約束してくれていたのに。

「結月、君を裏切るつもりなんてない。君が気にするなら、彼女との連絡は完全に断つよ」

「インターンが終わったら、桜田さんを事務所から異動させるから」

佑は南都市で最も優秀な訴訟弁護士であり、大手法律事務所のパートナーでもある。

彼は常に責任感が強く、信頼できる男だったから、嘘をつくはずがない。

だから、私は一度だけ賭けてみようと思った。

結果は明白だった。私は賭けに負けた。それも、惨めに。

ドレスの裾の下で、足の皮が擦りむけている。隣の鏡には、泣き崩れた私の顔が映っていた。

スマホがブーンと震える。

「美甘子の様子がおかしい。命に関わるかもしれない。まず彼女を落ち着かせてから、結婚式に戻る。待っててくれ」

佑からの言い訳だった。

でも、もう聞きたくなかった。

七年間付き合って、彼は私がこの日をどれほど待ち望んでいたかを知っているはずなのに。

法律事務所の仕事は多忙で、佑はいつも私を待たせた。

デートで映画を観る約束も、何度も何度も延期された。

一緒に夕食を食べる約束をしても、彼が帰ってくるのはいつも深夜だった。

私の誕生日でさえ、彼の案件処理が終わるのを待たなければならなかった。

私は一度も文句を言わなかった。佑が、未来のために頑張っていると言っていたから。

彼は私に家庭を、私たちの家を築くと誓ってくれた。

新居は私の好きなウッドテイストで、ベランダにはたくさんの観葉植物を置いた。可愛い子供も生まれる予定で、両親の家もマンションから徒歩十分の距離にある。

全てが、完璧に計画されていたはずだった。

手の届く未来はすぐそこにあった。ただまっすぐ歩けば、幸せなゴールを迎えられたのに。

どうして彼は突然私の手を放し、他の女の元へ向かったのだろう。

私は佑に返信せず、気持ちを落ち着かせ、涙の跡を拭った。

そして、平静を装って外に出て、結婚式の中止を宣言した。

会場は途端にざわつき、佑の母が焦り出した。

「結月ちゃん、今なんて言ったの?そんなわがままは許されないわよ。せっかくの結婚式を中止だなんて。こんなにたくさんのお客さんが見ているのよ?私たちの顔に泥を塗る気?」

母だけが、私の崩れたメイクに真っ先に気づいた。

「どうしたの?佑くんと喧嘩でもしたの?」

私の目頭が熱くなり、悲しみが込み上げてきた。

母は私の手を握り、「何かあっても、お互い話し合えば解決するから。カッとなって意地を張らないで」と慰めてくれた。

「佑くんは?彼はいつも分別があるのに、どうしてあなたを止めなかったの」

心臓に、鈍い痛みが突き刺さった。

皆の目には、佑は非の打ち所がない良い男として映っている。大人しくて、落ち着きがあり、頼りになる、と。

でも、そんな男が、こんな常軌を逸したことをしたのだ。

「彼、逃げたのよ。花嫁を捨てて」

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