その瞬間、時彦ははっと我に返った。自分はいったい何を考えていたのか。夢乃こそ生涯一緒に過ごす女であり、睦美と比べるまでもないのだ。「そんなわけないよ。ただ……睦美にどう切り出すかを考えてただけだ。彼女が戻ってきたら、きちんと話をするよ。そしたら俺たちの結婚式を準備しような」そう言って夢乃の涙を指先で拭い取る。「こら、泣かないでって、何度も言ってただろ?夢乃、俺が愛してるのは君だけだ。他の女なんて、全部遊びのようなものにすぎない」三年もの歳月を待ち続け、ようやく戻ってきた彼女を泣かせるわけにはいかない。その後、時彦と夢乃はほとんど片時も離れず過ごした。抱き合い、口づけを交わし、デートを重ね――まるで時間が巻き戻ったように、日々はかつての輝きを取り戻していく。時彦は毎日、自ら台所に立ち、三食を用意した。離れていた三年の間も、彼女の好みは一つも忘れていなかった。彼女の傷も丁寧に手当てし、階段の上り下りさえも腕に抱いて運ぶ。夢乃を、まるで子どものように甘やかした。くつろいだ夜には、一緒に映画を見ながら語り合う。夢乃は、海外にいた三年の間もずっと彼を想っていたと打ち明ける。彼女にとって時彦は、人生から切り離せない存在だ。海外に渡った時、彼ならきっと待っていてくれると信じていた。だから離れていても、不安を覚えたことなどなかった。時彦は自分一人のものだと、当たり前のように思っていたから。けれど、耳に入ってくる噂は夢乃の心をかき乱した。時彦がある女と三年間も同居していた――そんな話だ。本当に彼が別の女を好きになったのではないか。そう思うたび、底知れない恐怖に胸を締めつけられる。時彦の素性も知らず、図々しく彼を囲ったという女の存在を知ったときは、時彦の気まぐれで見つけた相手だと高をくくっていた。だが、今の彼がスマホを見つめて沈黙するたび、夢乃は息苦しさを覚える。その視線の先に、睦美の影があるのではないかと怯えながら。「ねえ、時彦。明日、一緒にウェディングドレスを選びに行きましょう?一日でも早く式を挙げたいの」首に腕を絡め、唇を重ねる。結婚さえしてしまえば、時彦は永遠に自分のもの。あんなにも自分を愛しているのだから、睦美が入り込む余地などあるはずがないのだ。翌日、二人が訪れたのは、かつて時彦が睦美を連れてきたドレスショ
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