All Chapters of 旦那が他の女の妊婦健診に付き添った後: Chapter 11 - Chapter 12

私はしばらく沈黙したまま、ゆっくりと自分の手を引き抜いた。 「優成、私が離れたのは真理を世話していたからじゃない。 何度も何度も、私を無視し、冷たく突き放したからよ。 私と真理の間で、迷うことなく彼女を選んだ……それが、私の心を冷え込ませた原因なのたとえ今、真理が追い出されたとしても、あなたが私に与えた傷は、決して埋めることができない。私はもう新しい生活を歩き始めた。過去に縛られるつもりはない」 冷たいけれど揺るぎない声に、優成の表情は一瞬で絶望に染まった。目の光は砕け散り、全身から力が抜け落ちていく。 彼は震える唇を動かし、まだ何かを言おうとしたが、私は聞く気にはなれなかった。小さくため息をつき、背を向けて歩き出す。 「朱音、待ってくれ！」 必死に呼び止める声。瞳には捨てきれない未練と絶望が滲んでいた。 「せめて……娘に会わせてもらえないか？」 私は足を止め、振り返った。あの無垢な娘の顔が頭をよぎる。彼女から父親の存在を奪うのは、あまりにも酷だと思った。 少しの間考えてから、私は静かに頷いた。 「いいわ。でも、それ以上は望まないで」 ――その日から、優成は数日おきに娘を訪ねてくるようになった。 彼は毎回、たくさんのプレゼントを持ってきて、娘の失われた父の愛情を埋めようとした。最初は警戒して彼を避けていた娘も、次第に優成に心を開きはじめた。お父さんとお母さんは一緒にはいられないけれど、自分への愛情は変わらない――子どもなりにそう理解したのだろう。 二人で楽しそうに遊ぶ姿を見つめながら、私は胸の奥が少しだけ温かくなる。 ……きっと、これが一番穏やかな結末なのだ。 優成は娘を訪ねるたび、必ず私への贈り物も欠かさなかった。 私の好きな花だったり、SNSで私が何気なく「いいね」したバッグやジュエリーだったり。 その気持ち――わからないはずがない。けれど、彼は知らない。私はもう、彼だけを世界のすべてだと思っていた頃の私ではないことを。 数々のことを経て、誰よりも自分を大切にすべきだと理解した。私はすでに新しい生活を手に入れ、新しい目標に向かっている。 優成とのことは、完全に区切りをつけた。もちろん、彼が娘に会うのを止めるつもりはない。彼はあの子の父親なのだから。 だがそれ