その後の三か月、直哉は一度も姿を見せなかった。大晦日の日に、私のもとに一通の匿名メッセージが届く。ただ短い一言。【よいお年を】直哉からだと私はわかった。けれど、返信はしなかった。忙しさを抜けて、ひとりの年越しを楽しもうと家へ戻ったところで、白都の友人から電話が入る。直哉に何かあったという。凪ヶ浦から戻って以降、直哉は毎日のように沈み込み、酒で気持ちを紛らわせていたらしい。会社の資金繰りが悪化しても、彼は取引先を回ることもせず、そのまま倒産の処分を受けた。奈央は何度も彼のもとを訪ねたが、そのたびに怒鳴られて追い返されていた。そして大晦日、彼女はワインを二本ぶら下げ、もうすぐ白都を離れるからと、礼を言いに再び彼の家の前に現れた。一人で年を越すのがあまりにも寂しかったのだろう。直哉は、彼女を中へ通した。二人はほとんど言葉を交わさないまま、二本のワインを空けた。直哉は、虚ろな目でスマホを見つめ、ぽつりとつぶやく。「やっぱり、本当にもう俺のことなんて気にもしてないんだな」すると、奈央が勢いよく彼にしがみつき、必死に言う。「私がいるじゃない!直哉、私は五年間ずっとあなたを想ってきたの。どうして彼女に勝てないの?」彼女は狂ったように彼の頬へ口づけを重ねる。けれど、直哉は荒々しく彼女を突き放す。「出ていけ!お前なんか、一生、いや、来世でも、彼女と比べものにならない」その一言が奈央の心を深くえぐった。彼女は叫び声を上げて立ち上がり、そして、不意にリビングの写真に視線が吸い寄せられる。そこには、直哉が凪ヶ浦で盗み撮った私の写真が飾られている。彼は夜ごとその写真を抱きしめ、後悔と恋しさを呟いていたのだ。嫉妬に駆られ、奈央はそれを床に叩きつける。「あなたはもう彼女に捨てられたのよ!裏切ったくせに、今さら愛してるふりなんてして、何の意味があるの?」その一言で直哉が逆上した。彼は立ち上がり、奈央の頬を激しく打ちつける。「黙れ!出ていけ!」奈央はさらに錯乱したように叫ぶ。「あんたみたいなクズには、私がぴったりじゃない!千紗はもうあんたを憎んでるのよ!」直哉の理性は、そこで完全に崩れ落ちた。酒瓶を握る彼の手が、そのまま奈央に向かって振り下ろす。一度、また一度――止まらない。砕けたガラスの破片
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