十八歳のとき、草場哲弘(くさば てつひろ)は私を、児童売買が行われている福祉施設から救い出してくれた。それ以来、私は彼の別荘に住むことになったが、決して救われた幸運な存在とは言えなかった。彼は私に、別の少女の古い服を着せ、彼女の好むピアノ曲を無理やり覚えさせ、話し方までもまねさせた。そして、私がまったく別の人間になるその日に、彼は一人の女を連れてきた。彼女は美しい白いドレスをまとい、笑うと目が細くなり、眉骨のあたりに小さなほくろがある。私とまったく同じだ。「菊地星那(きくち せな)、こっちに来なさい」「青沢星来(あおざわ せいら)が戻ってきた。もうお前は必要ない。これまで付き合ってくれたことを考えて、草場家でメイドをしてもいい」それ以来、星来という名の女は、哲弘のすべての愛情を受けてきた。彼女が料理の味が薄いと言うと、哲弘は私にひざまずかせ、何度も作り直させた。彼女が不注意でつまずくと、哲弘は「お前が手を抜いた」と責め立て、戒尺で私の全身を打ちつけ、青紫に腫れ上がらせた。私は黙って、すべてを受け入れた。――あの年、彼がそう言ったから。「俺に恩を返したいのか?なら、星来の身代わりとして、百回、俺と寝ろ」私はうつむきながら、残っているコンドームの数を数えた。あと一回だけ。あと一回で、私は身代わりという影から、ついに逃れられる――……水晶のシャンデリアが星来の白いドレスを照らし、彼女は銀のフォークでステーキを軽くいじった。「哲弘、このソース、酸っぱすぎて歯が浮くわ。私、お腹が弱いのに……星那が……?」哲弘の表情が一瞬で冷たくなり、私を鋭く見つめた。「作り直せ」私はエプロンを握りしめた。昔、塩を入れすぎてしまった時のことを思い出した。彼は笑いながら皿を引き寄せて言った。「星那が作ったなら、どんなにしょっぱくても美味しいよ」あの時の眼差しは、どこまでも優しかった。けれど今思えば、全て恋人代わりの私への偽りの愛情に過ぎなかった。星来が戻ってきてから、仕掛けた冤罪は十件を下らない。それでも哲弘は、一度も私を信じようとしなかった。私の説明すら聞こうとしなかったのだ。「待って」星来が哲弘の腕をそっと掴み、声を柔らかく落とした。「哲弘、責めてるわけじゃないの。ただね、彼女が立ってると
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