なぜ……? どうして……? 真っ暗闇のなか、大粒の雨が降っていた。降りしきる雨は、でも、血を洗ってはくれない。 ──王子の傷を治してはくれない。 「王子! マリク王子!!」 胸を貫いた剣はそのままに、地面にたおれた王子の名前を呼ぶ。 暗闇のような空洞の瞳が私を見つめていた。指も唇も動かず、雨に打たれるまま。赤い水たまりが王子の体の周りに広がっていく。 即死だった。剣で心臓を一突き、驚愕の表情のままに王子はたおれ、そして絶命した。 殺したのは──私だ。 なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ!? 「どうして!?」 思い返しても、はっきりとは思い出せなかった。ただ、ぼんやりとした意識の中で私は剣を取り、振り向きざまに王子の胸を突き刺していた。 体の震えが止まらない。現実に起こったこととはとうてい思えなかった。でも、両手には、雨でも流れ落ちていかない真っ赤な血。 血。呪い。呪われた血。 「やはり私は、王子のそばにいるべきではなかった」 震えた手で剣を握り締めると、私は立ち上がった。 「王子と関わるべきではなかった」 王子の体から一気に刀身を引き抜く。 「私は、とうの昔に死ぬべきだった」 剣の切っ先を自分に向けて、迷うことなく胸を貫く。 「うぁあああああああああああ!!!!!!!!!!」 今まで味わったことのない激痛が体
최신 업데이트 : 2025-10-07 더 보기