Semua Bab 一度王子を殺した秘書官、今度こそ愛を誓います: Bab 11 - Bab 20

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第11話 ティナの作戦

「なぁ、ところで──」  ディンブラ殿は耳に顔を近づけると声を潜ませて聞いてきた。 「どうやって、今回のお忍び視察、王や大臣連中を説得したんだ?」 「ああ、それなら。『万が一にも王子の身に危険が及ぶことがあれば、賊と賊に繋がる全ての者を殺し尽くした後《のち》に私がその首を持って償わせていただきます』、とベルテーン現国王に述べることで、無事に王子の提案した無理難題を解決することができました」  前のときと同じ手法だ。  本当は王子の視察自体を阻止したかったのだが、王子はあれでもなかなかの頑固者。フリーダと相談して、前回同様視察を行うことにしてフリーダと力を合わせて王子を守ることを決めた。  ……前の記憶通りなら、このあと王子は賊に襲われる。ただの賊ではなく、もっと恐ろしい怪物《フォボラ》に。  フォボラが出現するのはほぼ間違いない。だから私たちの作戦は、王子に危害が加えられないように身を挺して守ること。私の剣とフリーダの魔法、そしてディンブラ殿の<重槍の紋章>があればフォボラを退けるのはたやすい。  王子の命は守られ、この先の展開もおそらく違ったものになるはず……。  私が考えを巡らせていると、ディンブラ殿はぽかんと大口を開けて理解できない、といった顔をしていた。 「……何か?」 「いや。アールグレン秘書官──おっと、ここからはティナだな。ティナのその手腕に感心しただけだ」 「はぁ……」  感心しないでほしい。心の中では今、必死なんだから。フリーダはあんな調子だし、これから起こることを止める算段を考えなきゃいけないし
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第12話 黒い影

「いやいや、久しぶりに王宮の外に出るとすげぇ人手だな。王子なんてさっきから目につくもの食べまくってるぜ」 「王子は味を確かめているのだと思います。王宮で口にするものは、もう一流のシェフによって作られた料理。それも市民が食べないような高級品ばかりです。こうして市民が食べるものを自ら食することで、その質と安全を確かめているのです」  たぶん……フリーダのやつ、王子にあんな近づいて。手渡しで食べ物を…それに「あーん」まで!?  わ、私だって隣にいたら……。あらぬ妄想をしそうになった私の思考をディンブラ殿の言葉が止める。 「ふーん、そんなもんかね。俺はてっきりお固い行進が面倒くさかっただけなような気がするが。おっと、つい王宮や王子の話をしちまう……そうだな。ティナは、確か市民出身だったか? 城下町の説明をお願いしてもいいか? 下手におしゃべりするよりかはその方がいいだろ」 「承知しました」  ディンブラ殿の言うことも最もだった。共通の話題と言えばどうしても王宮か王子の話題になってしまう。それに、フリーダに向いてるこのどす黒い気持ちもごまかせるかもしれない。 「では、まず城下町ですが、主に3つの区画に分かれています。一つは、ここ商業区。市民の台所とも言える場所でありとあらゆる食品とともにその他の品物を取り扱っています。二つは、ギルド区。職人たちのエリアですね。冒険者御用達の場所でもあります」 「王宮で扱う武具や紋章なんかも、ここから仕入れてるって聞くぜ。まあ、俺たちは与えられた武器をただ使うだけだが。……おっと、うまそうなステーキがあるぞ。おっさん、この肉はいくらだ?」  ガハハハハ、と笑いながら牛肉のステーキを購入すると、分厚い肉にフォークを刺してその場で食べ始める。
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第13話 咎人の襲撃

「アーダン」 私は、声を抑えてアーダンの顔を見上げた。前回同様異変にすぐに気がついてくれたようで、アーダンの顔から笑顔が消え、武骨な軍人の顔になる。「話は歩きながらといこうぜ。街の人間にもだが、王子に悟られるわけにもいかねぇ」 一つうなずくと、私たちは雑踏に紛れるようにして秘密裏に会話を重ねる。 通常の場合、アーダンの判断は正しい。立ち止まって深刻な会話をしていればそれだけで目立ってしまうし、せっかく街の人々の雰囲気を肌で感じて楽しんでいる王子の邪魔になってしまう。 だけど、私はそう思った過去の失敗を知っている。「それで、敵は賊か? それとも──」「フォヴォラだ」 アーダンは短く舌打ちをした。「最悪だな。ただの賊ならティナと俺がいれば大して手間もかからねぇが、フォヴォラとなると厄介だ。特徴は?」 「黒い影が一体。四本足の獣型だ」 本当はあと二体、つまり計三体が出現することがわかっている。が、現時点ではまだ出現していない。「わかった。じゃあ、二手に分かれるか。ティナは獣型を追ってくれ、俺は王子の側にいる」「了解した。アーダン、フリーダとともに王子の身、なんとしても守ってほしい」「……ああ、任せろ」 腰に剣があるのを確認すると、私はローブのフードを被り、王子とは反対の方向へ人の流れに身を任せるように進んでいった。 ある程度距離を離したのちに、後ろを振り返る。王子に甘えていたはずのフリーダが真剣な顔をしてこちらを見つめていた。 昨日の夜。フリーダとはこのあと起こることを全て話し、綿密に打ち合わせしていた。私たちは目と目を合わせて合図をすると、互いに行動を開始する。 私はフォヴォラの後を追いつつ、怪物を生み出した人物を探す。私の大嫌いな【咎人】を。「……っ!!」 動こうとした矢先。不意に人々の喧騒が消えた。思い出したのは、自らの剣で王子を突き刺し殺した記憶。「しっかりしろ。ティナ・アールグレン。私はまだ罪を犯していない──」 胸を叩くと私は、前へと踏み出した。私は、今度こそ大切な人を守ることができる。 昼でもジメジメとして暗い人気のない裏通りへと私は走っていった。「やっぱり……ここか」 四本脚に力強く俊敏な動き。フォルムは猫に似ているが、見たことのない大きさだ。この国にはいない動物の種をコピーしたのだろう。 ともかくはま
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第14話 咎人の男

 フォヴォラもこちらに気が付いたのか、壁や屋根をつたってこちらに向き直ると獲物を狩るように猛スピードで突進してきた。  やはり速い。そして、滑らかに動く四足の筋肉は強靭だ。おそらく体当たりされただけでも、吹き飛んでしまうだろう。  倒すためにはやることは一つ。相手よりも早く斬ることだけ。  私は、剣を地面の上へ滑らせるとそのままの勢いで疾速《しっそく》していく。フォヴォラと衝突する寸前。敵よりも早く剣を振り上げれば──。  フォヴォラの咆哮が聞こえる。前髪が掻き上げられ、柄に力を込める。……今っ!!  開いた大口に飛び込むと剣を水平に保って、勢いのままに振りぬく。顔から首、そして胴体へと刃が進み、私は一気にフォヴォラの体を切り裂いた。  二つに分かたれた体が地面に着地するとともに、フォヴォラの体から黒いモヤが現れて、形を成さずに消えていく。  前世の記憶でも思ったが、やはりフォヴォラは生き物ではない。咎人によって作られた人形のようなものだ。  剣を収めると表通りから悲鳴が上がった。残りのフォヴォラが出現したのだろう。だけど、私にはまだやるべきことが残っている。  壁伝いに屋根に上ると、2体のフォボラが目に飛び込んできた。1体は鳥型のフォヴォラでアーダンが対峙している。もう1体は──やはりいろんな動物を掛け合わせたような怪物。 そいつは、屋根ほどの背の高さを持つ。近衛兵が王子を囲む形で守りながら、フリーダが遠くから火球を放っている。  私は王子を見つめる。民を守るため、フォヴォラを倒すため、声を張り上げ指示を出している王子は、私の存在に気がつくことはない。 「でも、王子少し待っていてください。今、駆け付けます」 
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第15話 ティナの正体

 私は勢いよく剣を振るった。 「私には咎人の血など流れていない! 私は王子の秘書官だ!!」  男は口端を吊り上げる。 「王子の秘書官か、ご丁寧に自己紹介痛み入る。だが、自分の流れる血を否定するということは、お前の母親を否定することにつながるぞ」  母親の笑顔が頭に浮かぶ。いつも台所に立ち、料理をしている姿が。 「いい女だった。お前とよく似た銀髪で、顔立ちもそっくりだな。目だけは人間の父親譲りだが。あいつは突然、俺たちを裏切って逃げ出した。そして、のうのうと貧しいが幸せな家庭を築いてやった」  息が苦しくなる。胸が痛む。 「残念だが、お前は普通の人間じゃない。半分、神に……この世界に背いた咎人の血が流れている。紋章が使えないのはそのせいだ。あれは、神の力が元になっているからな」 「うるさいっ!! 紋章など使えなくても、私は剣一本でここまでやってきた!!」  男はなおも笑う。なにがおかしいのかお腹を抱えて笑い出す。 「なんだ……なにがおかしい!」 「剣一本だと? 紋章の強大な力も、咎人のフォヴォラの力も使えないお前は、中途半端な存在だ。……王子に気に入られたのはなぜだ? 顔か? それとも体で男どもを篭絡したか?」 「貴様っ!!」  気がついたら私は飛び出していた。不安定な屋根の上など考慮もせず、男に斬りかかる。  男は球状の複数の黒い影を出現させると、そいつに刃を喰い込ませて攻撃をかわす。 「すぐ頭に血が上るところは、お前の父親そっくりだな」&nb
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第16話 3人がかりで

 地面へと降り立つと同時に、フリーダが穴の中から這い上がってくる。 「あっぶな! 危ないわ! さすがにダメかと思ったもう、本当に……あっ」  怯えた表情をしているところにバッチリと目が合ってしまった。 「な、なによ! デカいって聞いてたけど、ここまでとは思わないじゃない! 私はあんたみたいにぴょんぴょん飛び回れるような近距離タイプじゃないの! おしとやかに魔法をバーンと放ってパーンって攻撃する遠距離タイプなんだから!」  喚いている間にもフリーダの小さな体が大きな影に包まれる。フォヴォラが拳を振り上げてもう一撃を食らわそうとしていた。気づいたフリーダは、わわわっと口を大きく開いたものの動けないでいた。 「ヤバい! ティナ、あんた! 助けなさい!!」  フォヴォラが大きな足で踏みつぶそうとする直前に、フリーダの体を抱える。  私はそのまま転がりながら黒い影から遠ざかった。 「……大丈夫か?」 「あ、ありがとう……」  子どもみたいなフリーダの体を地面に降ろす。怪物を挟んで向こう側にいる王子を見ると、王子と目が合った。  王子は、こんな状況にも関わらずしっかりと微笑んでくれる。 「えっ……マリク王子、やばっ! カッコいい!」 「本当に、カッコい……」 「え?」 「い、いや、王子はいつでも冷静なんだ。その姿勢がカッコいい……素晴らしいということだ」  本音を誤魔化すために咳払いをすると、巨大なフォヴォラを見上げた。  猛禽類のような鋭い視線は、こちらを──というより
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第17話 決着

 剣を構える。動き出すのは次の攻撃の直後。 後ろ手でフリーダを逃がす。と、フォヴォラが猛獣のような毛むくじゃらの足を高く上げた。 その瞬間、王子の青い瞳と目が合う。トクンと、胸の音が跳ねる。力強くうなずく王子に対して、私も大きくうなずき返すと、風圧を伴い強烈な一撃が上空から降ってきた。 ──絶対に、王子に傷は負わせない。前回みたいには絶対にさせない。 王子の腕から血が噴き出した過去の記憶を振り払うと、私は、地面を蹴って高く跳び上がり、剣先でわずかに攻撃の矛先をずらした。 待ち構えていたアーダンが、槍に見立てた棒を思い切り振り回し、敵の攻撃をガードする。 二人がかりでなんとか動きを止めたところで、私とアーダンは素早く駆け出して足元を切り刻む。何度も何度も、フリーダの特大の火球が来るまで。 しかし、全く手ごたえの感じない怪物に、アーダンの攻撃が乱れ始めた。 内心焦っているのだろう。時間は、待つ方が数倍長く感じるらしい。だが、戦いにおいてもどこか楽観的で危機感のないフリーダは、逆説的にそんな態度が取れるくらいに実力も経験もあることはもう知っている。 大木のような大きな足が再び持ち上がり、私とアーダンは横へと逃げなければならなかった。身を転がしたその刹那、あのとき──牢での戦いのときに感じた熱さが首筋を襲った。 来た。 後ろを振り返ると、爆発音とともに熱風が巻き起こるほどの火柱が上がっていた。言っていた通りに、フォヴォラの足元が崩れる。「ティナ! いって!!」「了解した!」 私は、空に向かって跳び上がった。そのまま回転しながら剣を振り下ろすと、構うことなくその首を両断した。 フォヴォラは動かなくなり、風にかき消されるように黒い影が消えていき、やがて存在が消滅する。「王子!」 急いで王子の元へ向かう。優しい微笑みで迎えてくれるが、表情が疲れていた。「どこかおケガは! 確認します! 服を脱いでください!」 ポン、と何かが頭に触れる。それがまさかの王子の手だと気がつく前に、王子の輝くような綺麗な瞳が目の前にあった。「あ……」 ち、ちちちちちち近い! 王子の顔が目の前に! 目が! 唇が!「ティナ。問題ないよ。ケガはどこもしてない。私だけでなく、他の者もだ。君の剣で誰かが傷つく前に、まずは、剣を鞘に収めてもらえると助かる」 からかうよう
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第18話 残る手の感触

 王子を守っていた町民に扮した近衛兵が、王子の命令でさっといなくなりそれぞれの任に当たる。「……なに、ボーッとしてるのよ? 王子の手の感触を楽しんでるの?」「はっ! 失礼な! 今、動くところだ!」 頭を手のひらでゴシゴシと触ると、後ろを振り返る。やらなければいけないことは山ほどある。まずは、被害の確認と補償の手配、それから秘書官として報告書の作成となによりも今回の咎人の急襲を調査しなければいけない。「あっ、マリク王子! 私もほめてください! 最後のフォヴォラをたおすきっかけは私が作ったんです! 王子を守るために……」 しらじらしい顔をしてわずかに頭を下げるフリーダ。バカな……王子がそう簡単に頭を撫でると思っているのか。 そう信じていたのに、王子の手がフリーダに、伸びる。「ダッ! ダメ!! マリク……」 あの手は、私のものだけじゃなかったの? ……そう思いつつ手で顔を覆いながら、様子を見ていると、王子は頭を撫でるのではなくフリーダに握手をしていただけだった。「ありがとう。君のような紋章士を求めていた。助かるよ」「王子、も~頭を撫でてくれてもいいのに」 フリーダは顔を赤らめると、笑顔の王子の頬に手を触れようとしていた。 私はフリーダの手を王子から振りほどくと、至近距離でにらみつける。フリーダの顔が引きつった。「な、なぁに? そんな怖い顔をして……」「フリーダ。私たちは王子の家臣。まずは、命令を聞かないといけない」「えっと、うん……だから?」「現場の状況把握! 住民の保護!! 行くぞ」 フリーダの首根っこをつかむと王子から引き離す。こいつはやっぱり、危険人物だ。*「──状況は理解しましたが。これは、|由々《ゆゆ》しき問題ではないですか? アールグレン秘書官」「おっしゃるとおりです。まことに申し訳ありません」 街での襲撃は当然すぐに王の耳にも入ることとなり、私は秘書官として、王子とともに謁見の間へ呼び出されていた。「あなたの謝罪に何の価値があるというのですか?」「……はっ。いかなる処分でも受けいれる所存です」 防衛大臣が責め立てる。当然だ。幸い王子に傷を負わせることはなかったが、結局、危険にさらしたのは変わらない。「処分? あなたは確か先の会議で自身が全て責任を追うから少人数の護衛だけで、と言っていましたが。では、首を斬れ
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第19話 怒りのにじむ口調

「大臣。それくらいにしておいてはどうか?」 国王の声に私は、はっとした。しかし、大臣は止まることなく話を続ける。「国王。こういうことはきちんとしておかなければ。王子はこの後、各国を訪問する予定なのですよ? こんなことがあったとわかれば我が国の信用も失墜してしまいます。日取りも検討し直さなければなりませんな。やはり、政《まつりごと》に女を関わらせるなどするべきではなかったということでは?」 大臣はあごを上げると、わざと馬鹿にする視線を私に向けた。だけど、私は耐えるしかない。悪いのは……私なのだから。 私は気づかれぬように拳を握りしめた。「ノルドマン。その発言は、ティナを秘書官に任用した私を責めていると理解していいかな?」 怒りをにじませた発言をすると、王子が私の前に出た。マリク王子──?「そ、そのようなことは。ただ、私は秘書官の任が重過ぎるのではないかと申しているだけでありまして」「ならば『女』などと一般化しない方がいい。あまりにも言葉が過ぎる。下品と感じるほどにね。それに今回のことは元々私が言い出したこと。襲撃も成人の儀の翌日に起こったことから突発的ではなく、事前に計画されていたと見るべきだ。ティナは、厳しい状況の中でも極めて冷静な判断を下し、確かな実力を持ってことにあたった。結果、けが人は一人もおらず、家屋の破損も軽微で済んだ。これと同じことを果たして我が軍の中で誰ができる?」 いつものゆっくりとした口調ではなく、早口で王子はまくし立てる。大臣は動揺を隠せず、後ろへ下がった。「ですが、実際には襲撃は防げず、他国に恥を──」「もういいと言っている。ノルドマン」 国王の一言で場が静まり返った。ちらりと顔を上げれば、いつも微笑みを浮かべている王子の顔は近寄り難いほどに威厳があった。「咎人の襲撃を防ぐことなどできない。これは、歴史が証明していることだ。王子の言う通り、アールグレン秘書官は任に就いたばかりでよくやってくれた。それにその実力は、元々ノルドマン、防衛大臣のお主が一番知っているはずだろう」「はっ……」 大臣は不服そうに私を一瞥すると、席に座る。「さて、ようやく未来の話ができるな。して王子、各国への訪問はいかようにするつもりか聞こう。おっと、アールグレン秘書官、もうひざまずく必要などないぞ」「失礼します」 立ち上がると、集まった
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第20話 王子の仕事

「各国への訪問の日取りはこのままで、と考えています」  場がざわついた。口々に反対意見が述べられる。 「我が国を除く8カ国、そのうち特に隣国〈アヌ〉はすでに準備を進めているはず。我が国が襲撃を理由に日取りを遅らせれば、アヌ国の人々に影響を及ぼす可能性があります。それに、襲撃があったからという理由で揺らいでしまえば、それこそ他国に付け入る隙を与えるようなものです」  みんなの動揺を鎮めるように、王子は落ち着いた穏やかな声で理由を話した。  王はにやりと笑みを浮かべると、あごひげを触り続きを促す。 「ほう。お前がそういうのであれば、構わん。して、護衛はどうする?」 「私の周りで十分です。最近、紋章士の新しい仲間もできたことですし」 「王子! ダメです!」  この選択は誤りだった。護衛が少ないせいで王子は──。 「アールグレン秘書官。構わん。王子の判断だ」  反論しようとしても、王の言葉に止められてしまう。王子は礼を述べると、予定通り1週間後にアヌ国へ向けて出立することが決定してしまった。  緊急会議は終わり、王子と私は謁見の間を出た。私はすぐに王子の前に立つと頭を下げる。 「申し訳ありません、王子」 「ティナ。何か君が謝らなきゃいけないことをしたのかい?」  そうです。私のせいで、王子を危険な目にさらしてしまう。けど、そんなこと言っても「心配性だな」とあしらわれるだけ……。  私は、焦りながらも記憶を紐解くように、前と同じようなセリフを発することしかできなかった。 「&hell
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