「なぁ、ところで──」 ディンブラ殿は耳に顔を近づけると声を潜ませて聞いてきた。 「どうやって、今回のお忍び視察、王や大臣連中を説得したんだ?」 「ああ、それなら。『万が一にも王子の身に危険が及ぶことがあれば、賊と賊に繋がる全ての者を殺し尽くした後《のち》に私がその首を持って償わせていただきます』、とベルテーン現国王に述べることで、無事に王子の提案した無理難題を解決することができました」 前のときと同じ手法だ。 本当は王子の視察自体を阻止したかったのだが、王子はあれでもなかなかの頑固者。フリーダと相談して、前回同様視察を行うことにしてフリーダと力を合わせて王子を守ることを決めた。 ……前の記憶通りなら、このあと王子は賊に襲われる。ただの賊ではなく、もっと恐ろしい怪物《フォボラ》に。 フォボラが出現するのはほぼ間違いない。だから私たちの作戦は、王子に危害が加えられないように身を挺して守ること。私の剣とフリーダの魔法、そしてディンブラ殿の<重槍の紋章>があればフォボラを退けるのはたやすい。 王子の命は守られ、この先の展開もおそらく違ったものになるはず……。 私が考えを巡らせていると、ディンブラ殿はぽかんと大口を開けて理解できない、といった顔をしていた。 「……何か?」 「いや。アールグレン秘書官──おっと、ここからはティナだな。ティナのその手腕に感心しただけだ」 「はぁ……」 感心しないでほしい。心の中では今、必死なんだから。フリーダはあんな調子だし、これから起こることを止める算段を考えなきゃいけないし
Last Updated : 2026-01-29 Read more