「──ミモレヴィーテ様、お待たせ致しました。朝食をお持ち致しましたので、お召し上がりくださいませ」マルタがお料理や飲み物を載せたワゴンを押してくる。侯爵家では、家族揃っての食事は晩餐のみに限られていて、あとは自室に運ばれる食事を一人で頂いているのだが──今朝に限って、お料理やカップが多い事に私は首を傾げた。「マルタ、いつもよりとても多いわ。今日は何かあったかしら?」「ありましたとも! ミモレヴィーテ様が精霊様とご契約を結ばれたお祝いですわ。厨房の者に、精霊様の分もお願いしましたのよ」頬を薔薇色にしているマルタは、まるで我がことのように喜んでくれているのが、はっきりと見てとれる。マルタの心遣いに、私も精霊達も自ずと笑顔になった。「マルタ、本当にありがとう……こんなにたくさん、重かったでしょうに」「私達からもお礼を言うわ、マルタ。ミモレヴィーテ様に良くしてくれて、ありがとう。私達の事も大事に思ってくれて嬉しいわ」私の言葉に続けて、アイリーンが精霊達を代表して告げる。マルタは恐縮しながら「ミモレヴィーテ様は私の大切な主ですから当然ですわ、それに精霊様もミモレヴィーテ様の特別な方々ですのよ。これからは毎食ご用意致しましょうね」と、配膳しながらはにかんだ。正直なところ、侯爵家で揃っての食事は今でも緊張するし、心が萎縮する。お母さんの為にも自分を叱咤して卑屈にならないように振る舞っているけれど、気を張りつめているので、せっかくの豪華なお料理も心から味わえた事は一度としてなかった。その点、自室で頂く食事は気心の知れた精霊達と、あとは給仕してくれるマルタだけなので気軽だった。今朝の朝食は、小麦の香りとバターの芳醇な風味がきいた香ばしく柔らかいパンに、ふわふわとしながらもとろみを残した焼き加減の玉子料理、お肉の旨味とスパイスが絶妙に調和した腸詰め、そしてカットされた色鮮やかなフルーツとお腹に優しそうなハーブティーだった。精霊達と頂く食事は賑やかで楽しく、はしゃぐ精霊達の姿はお料理の美味しさを増して感じさせてくれた。私はありがたく味わいながら、お母さんもこんな風に食事を楽しめたら、どれだけ喜ばしいだろうと思わずにはいられなかった。母娘で暮らしていた頃、貧しい食卓でも二人で共にする喜びがあった。それを懐かしむ思いは捨てきれない。「──ご馳走でした。マルタ、と
Last Updated : 2025-10-11 Read more